ターンアラウンドとは?意味や実施するメリット、企業の取り組み事例を解説

2023年12月26日

2023年11月26日

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Izul広報チーム

Izul広報チーム

企業が経営危機に陥った際、解決策の一つとして挙げられるのがターンアラウンドです。日本でも多くの企業がこれを実施し、事業再生に成功しています。本記事では、ターンアラウンドの意味、メリット、および取り組み事例について解説します。経営に関する知見を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

ターンアラウンドとは

ビジネスにおいては、ターンアラウンドは「事業再生」「経営改革」といった意味で使用されています。もともとは「方向転換」「転向」などの意味を持つ言葉です。経営不振の企業に対して事業・組織・収益構造などに関する根本的な改革をトップダウンで実施し、中長期的な企業価値の向上を目指します。

ワークアウトとの違い

ワークアウトも経営を立て直すための手法ですが、ターンアラウンドとは収益改善までの期間に違いがあります。ターンアラウンドは中長期的に行われるのに対し、ワークアウトは短期間での収益改善を目指す点が特徴的です。1980年代後半に提唱された手法で、主にリストラや資産売却などを実施します。

企業再生との違い

企業再生とは、経営危機に陥っている原因を解消し、企業を回復させることを指します。赤字から脱却するための戦略として、主に金融機関から融資を受ける・債権者に債務免除を依頼するといった手法が挙げられます。企業再生とターンアラウンドに明確な違いはなく、同義で捉えられるケースが一般的です。

ターンアラウンドが注目される背景

ターンアラウンドが最初に注目されるようになったのは、1990年代のバブル崩壊がきっかけです。多くの企業が倒産や経営破綻に追い込まれたことで、企業再生ファンドや金融機関から出向した経営人材によってターンアラウンドが実施されました。現在では、経済のグローバル化や雇用の多様化、さらにはコロナ禍などによって、企業経営にも柔軟な変化が求められています。その結果、外部から専門家を招いて事業改革を行うケースが増えており、今後も需要は高まっていくと予想されています。

ターンアラウンドを実施するメリット

ターンアラウンドを実施することで、さまざまなメリットが生まれます。ここでは、代表的な4つのメリットについて解説します。

売上不振の脱却につながる

ターンアラウンドの実施による最もわかりやすいメリットは、売上不振を脱却し収益化につなげられる点です。ターンアラウンドでは業績の悪い事業を見直し、根本的な原因に対して施策を実施します。その結果、長期的な成長戦略を打ち立てることが可能になります。

過剰債務を整理できる

企業が経営危機に陥った際、課題の一つとして過剰債務の処理に関する問題が挙げられます。ターンアラウンドではキャッシュフローを改善できるため、過剰債務を整理することが可能です。財務に関して抜本的な改革を行うことで、持続的な企業経営につなげられます。

抜本的な経営改革につながる

ターンアラウンドでは、事業構造・業務プロセス・組織体制など、企業の構造について根本的な再構築を実施します。そのため、事業再生に向けた抜本的な経営改革ができる点がメリットです。長期的な視点で業務の効率化や人事制度の見直しを行うため、経営の健全化が期待できます。

従業員の意識改革が期待できる

企業の経営が悪化する一因として、従業員が従来の企業文化にとらわれ過ぎたり、現状維持ばかりに目が向いたりしていることが挙げられます。しかし、ターンアラウンドでは全従業員が当事者意識を持って改革に取り組むことになるため、これまでの慣習をやめて新しい考え方を持つことが期待できます。

ターンアラウンドマネージャーとは

ターンアラウンドが注目を集めるようになった結果、企業の再生や事業の立て直しを専門に行う「ターンアラウンドマネージャー」という職種が誕生しました。ターンアラウンドは企業再生請負人とも呼ばれ、再生事業計画を立案・実行して企業の健全な収益化を目指します。ターンアラウンドマネージャーは金融機関や企業再生ファンド運営会社から派遣される場合が一般的です。

ターンアラウンドマネージャーになるには

ターンアラウンドマネージャーになるのは、経営に関する深い知識が必要不可欠です。その企業の社長に代わってすべての決断を行うことになるため、総務・経理・労務・法規といった幅広い分野に精通していることが求められます。さらに、経営に関する実務経験も非常に重要とされています。企業再生ファンド運営会社や経営者のもとで働くなど、座学だけでなく現場での業務スキルも身につけておく必要があります。

ターンアラウンドマネージャーに活かせる資格

ターンアラウンドマネージャーの業務に活かせる資格として、同名のターンアラウンドマネージャー(TAM)という資格があります。企業再建・承継コンサルタント協同組合(CRC)による養成講座を受講し、単位を7割以上取得すると受験資格を獲得できます。TAMでは経営や事業再生に関する知識を体系的に学べるため、ターンアラウンドマネージャーとして活躍したい人に適した資格です。

そのほか、中小企業診断士、事業再生アドバイザー(TAA)、認定事業再生士(CTP)などもターンアラウンドマネージャーの業務に密接に関連する資格であり、これらを取得することで仕事の幅が広がります。

日本企業のターンアラウンド事例を紹介

日本の有名企業でも、過去に経営危機を迎えてターンアラウンドを実施した事例が存在しています。ここでは、4つの企業の再生事例について解説します。

日本航空

日本航空は、2008年のリーマンショックの煽りを受けて経営危機に陥りました。事業を再生させるため、当時の国土交通大臣・前原誠司氏と京セラ名誉会長・稲盛和夫氏によってターンアラウンドが実施されました。主体を中型機へ変更・大型機の売却・座席数の適正化・航空路線の見直しといった施策のほかにリストラなどのワークアウトも合わせて行い、2012年には無事黒字回復を果たしています。

日本マクドナルド

日本マクドナルドでは、2014年の消費期限切れチキンナゲット販売問題や2015年の異物混入事件が影響し、2015年12月期には過去最大の赤字を抱えています。これに対し、当時の社長であるサラL・カサノバ氏は全国のお店で顧客の声を聞き、ビジネスリカバリープランを実施しました。品質管理の改善・向上や安全情報提供の強化などに加え、低価格商品を新たに導入したことで、2020年には9年ぶりの最高益を達成しています。

日産自動車

日産自動車では、1991年以降に7回も赤字決算となったことから、1999年にカルロス・ゴーン氏をCOOに迎えてターンアラウンドを実施しました。カルロス・ゴーン氏はコスト削減や収益性の低い事業の売却を行ったほか、商品ラインの再編や新型モデルの投入など今後の経営を見据えた施策に取り組んでいます。その結果、わずか2年で黒字へと転換しました。

カネボウ

カネボウは1960年代後半から多角化経営を行っていたものの赤字が続き、9期連続で粉飾決算を繰り返していました。そのため、2004年に産業再生機構の支援を受け、ターンアラウンドを実施しています。採算の高い化粧品部門や繊維事業を別会社に編入させたほか、経営体制の刷新や人員削減などの施策を行い、無事経営破綻を免れました。現在は商号をクラシエに変更し、ホーユーホールディングスの完全子会社として事業を継続しています。

まとめ

この記事では、ターンアラウンドについて解説しました。経営破綻を起こしていたり債務超過に苦しんでいたりする企業でも、ターンアラウンドを実施することで経営を健全化できる可能性があります。現在企業の経営に悩んでいる方は、ぜひターンアラウンドを検討してみるとよいでしょう。

監修者・西本 威昭

西本 威昭

・国内大手SIerに新卒入社
 SEやPMとして多くのプロジェクトを経験

・KPMGコンサルティング株式会社に転職
 シニアコンサルタントとしてジョイン
 製造業を中心に複数のSCM案件に参画

・アビームコンサルティング株式会社に転職
 マネージャーとしてジョイン
 製造業を中心にSAP関連プロジェクトに参画

・株式会社Izulに転職
 副業のフリーコンサルタントとして活動する傍ら、
 同社キャリアアドバイザーとして従事

著者プロフィール

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株式会社Izulの広報チームが運用。20代〜30代の若手ハイクラス層から、圧倒的支持を獲得中。働き方や転職のコツなど、キャリアに役立つ情報を発信していきます。

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