中途採用で採用担当者が重要視するのは、面接で語られる前職での「成功体験」です。なぜなら新卒と違って、仕事への向き合い方を評価するポイントになるためです。成功体験に至るまでの業務の進め方や姿勢・価値観は人材評価の基準になり、入社後の働き方をイメージさせるのに効果があります。そのため、面接官に刺さる成功体験をしっかり語れるかどうかが、転職面接の重要なカギとなるでしょう。そこで今回は、効果的で刺さる成功体験の作り方のポイントを例文も交えて紹介します。
成功体験がない場合の対処法も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
企業が転職面接で成功体験を聞く理由
採用担当者が転職面接で成功体験を聞く意図としては、以下の4つが挙げられます。
- どう目標設定するのか(成功の捉え方)を確認したい
- ゴールを達成するために努力できるかを把握したい
- 目標達成するためにどう工夫するのかを確認したい
- 入社後に成功体験に再現性があり、活躍してくれるかを判断したい
上記4つの意図を確認して分かる通り、面接官は成功体験そのものではなく成功を体験するにあたっての候補者の考えや過程を確認しています。
そのため、たとえ周りから褒められるような大きな成功体験を持っていたとしても、成功までの過程を評価してもらえなければ、採用には近づきません。
面接で成功体験を効果的に回答する5つのポイント
本章では成功体験の効果的な回答方法を、5つのポイントに絞って解説します。ポイントを押さえてエピソードを肉付けすることで、面接官から評価される成功体験に近づくでしょう。
具体的にそのプロジェクトに対して「どこに課題を感じ、どう工夫をして、どう行動したのか」を詳しく説明しましょう。
まずは成功体験の結論を述べる
冒頭では成功体験の結論を述べます。結論から話さなければ、面接官は何の話題か分からないまま話を聞くことになるため、理解しづらくストレスを抱えてしまいます。「私の成功体験は、前職での〇〇です。」といった形で、まずは結論を最初に伝えましょう。
自己PRと一貫性を持たせる
成功体験と同様に、面接で聞かれやすいのが自己PRです。成功体験で伝える自身の強みと、自己PRで伝える強みが全く異なるものであれば「本当はどちらが候補者の魅力なのだろうか?」と面接官の中で疑問が生じることになります。
もちろんどちらの強みも魅力となる場合もありますが、面接官を混乱させないよう自己PRとの一貫性を持たせるのがベストです。自己PRで話した強みを成功体験で補完できれば、より説得力のある強みになります。
成功までのプロセスを述べる
前章で述べた通り面接官は成功体験そのものよりも、成功するまでの思考や過程を重視します。そのため、成功までのプロセスは詳細に述べる必要があるでしょう。
具体的にそのプロジェクトに対して「どこに課題を感じ、どう工夫をして、どう行動したのか」を詳しく説明しましょう。
数字を盛り込んで具体的に説明する
成功体験を説明する際は、数字を盛り込むことでより内容が伝わりやすくなります。
- 複数の部署が協力して挑んだプロジェクト型営業の契約件数30件のノルマを達成した
- 販売促進のために立ち上げたSNSで3ヵ月間という期間で9,000人までフォロワーを伸ばした
- DX環境を整備する担当として業務の効率化を30%達成し、年間3,000万円の増収を果たした
- 大型コンペに参加するため営業・企画・マーケティング・デザインのプロジェクトチームのリーダーとしてフロント業務を行い、最終的に5,000万円の案件を獲得した
- クライアントの悩みを解決する技術開発に力を入れたことで、新たに5社から新規でオファーを受けた
上記のように数字を盛り込むことで、どれだけ事業に貢献したのかが明確になります。
成功体験から得た学びや今後の活かし方を伝える
成功体験の結論と成功までのプロセスを説明した後は、成功体験から得た学びや今後の活かし方を伝えましょう。前章で紹介したように、成功体験は入社後に活躍してくれるかどうかを判断する意図で聞かれます。
ただ成功体験やエピソードを話すだけでは、入社後も同じような成功体験を収めてくれるか判断できません。そのため、再現性があることをアピールする必要があります。具体的には以下の通りです。
チームビルディングの成功体験から私が学んだのは、アイデアや情報を気兼ねなく提案できる環境づくりの大切さです。自分の意見が尊重されるという実感は、プロジェクトを円滑に進めるにあたって非常に重要だと再認識しました。貴社に入社できた折は、プロジェクト案件によるチーム結成や人材育成において、この経験を活かせると考えております。 |
成功体験から得た学びを入社後の業界と関連させながら説明し、入社後でも活躍できることをアピールしましょう。
Izulの転職支援では、志望動機の作成から書類添削、面接対策、企業側との交渉まで徹底的にサポートします。成功体験の作り方のアドバイスも行っているので、内容に悩んでいる方はぜひご相談ください。
成功体験の回答例文を紹介
本章では、先ほど説明した5つのポイントを押さえた成功体験の回答例をいくつか紹介します。以下に挙げる例文を参考にしてください。
営業職の成功体験
私にとって成功体験といえるのは、入社3年目に30件以上の売上を獲得し、社内売上トップになったことです。入社当初は営業の成績が良かったわけではなく、むしろ同期の中では悪い方でした。 そこで私は営業成績を上げるために社内商品やサービスの理解からはじめ、必要なタスクを決めて管理を徹底しました。また、目標達成のために必要な資格を取得し、専門家としてクライアントの問題を解決できるスキルを身につけました。 その結果、入社して3年目にノルマとして設定されていた30件以上の受注に成功し、全社トップの成績を達成できたのです。 このことで学んだのは、クライアントとの信頼関係の結び方です。専門家として相談を受けるだけでなく、要望を超える製品やサービスを提供できたとき、クライアントとの信頼が強固なものになる経験をしました。これこそが営業職として必要なスキルだと考えております。 |
技術職の成功体験
私の成功体験は、社内のDX担当として業務効率化に成功し、年間3,000万円の増収が見込めたことです。大きな問題となっていたのは、データ更新の煩雑さによって起きるタスク漏れでした。そのため納期遅延などが起きてしまい、クライアントとのトラブルにつながりかねない状況だったため、早急な対応が求められていました。 そこで社内システムの大幅な変更と再構築を担当し、誰もが優先度の高いタスクをピックアップできる共有ツールを導入することで解決しました。私はシステム開発の指揮から管理までを担当しました。 数名で担当したため大変な作業量でしたが、結果的に増収につなげられたことで社内からも評価されました。業務の大幅な時間短縮も可能になり、トラブルが軽減される効果もありました。これらの体験から、チームワークの大切さやタスクマネジメントの重要性を学びました。 |
マーケティング職の成功体験
私の成功体験は、企業のオウンドメディアのPV数を6ヵ月間で200%伸ばしたことです。私が手掛けたメディアには一つの重要な欠陥があり、それがユーザーニーズに全く刺さらない記事を量産していた点です。 そこで私は真のユーザーニーズを探るべく、自身が設定したメディアのペルソナにマッチしたユーザー5人にインタビューを実施しました。その結果、やはりユーザーが求めているものと、記事で発信していた内容には乖離がありました。 前任の担当者に事情を聞いてみると、ユーザーニーズは想像していたもののそれが本当に読者が求めているかどうかは分からない、といった状況でした。 その後、真のユーザーニーズに刺さる記事にリライトしていくと順調にメディアは伸び、6ヵ月間でPV数は200%アップしました。 ここから私はユーザーを惹きつけるためには、顧客が求めているものが何かを追求し続けることが重要だと実感しました。御社で最初に任される業務は広告運用とのことですので、この業務でも数字に囚われすぎることなくユーザーファーストで施策を講じたいと考えています。 |
成功体験がない場合の対処法
「面接で話せるような成功体験がない」と、悩んでいる方もいるでしょう。
たとえ成功体験がなかったとしても、仕事に取り組む姿勢や失敗から学んだこと、小さな目標を達成したことなどを探せば問題ありません。詳細は以下で解説します。
小さな成功体験を探す
面接官は成功体験そのものの大きさを求めているのではなく、成功までのプロセスや考え方を聞き出したいと考えています。そのため、たとえ小さな成功体験であったとしてもプロセスや考え方を伝え、入社後に活躍できそうだと面接官から判断されれば内定に近づきます。
- プロジェクト進行中もクライアントが進捗を確認できるよう工程管理やスケジュールを共有したり、週に何度も報告を入れるなど、安心できる環境づくりによって感謝された
- トラブルの際にいち早く現場に駆けつけて対応したことで、クライアントから「あなたのおかげでトラブルが最小限に抑えられた」と評価された
上記のような一見小さな成功体験であったとしても、プロセスや考え方、入社後の活かし方を伝えられれば評価されるでしょう。
仕事に取り組む姿勢をアピールする
仕事に取り組む姿勢をアピールできれば、面接官は入社後に活躍している姿をイメージできるため効果的です。
- 目標達成のために自社商品の特徴とサービス内容をすべて分析し、必要な情報を収集した上で日々のタスク管理を決定した
- クライアントがかかわる業界の知識を獲得し、クライアントが必要とする製品のスペシャリストになるべく資格の勉強をした
前職での仕事を振り返ってみると、どんな目標を立てたか、仕事で意識していたポイントなどがいくつか浮かんでくるはずです。面接官が面接で知りたいのは、仕事に対する対応力と思考するプロセスです。
仕事における姿勢も「どこに課題を感じ、どう工夫をして、どう行動したのか」を踏まえて回答することで、成功体験としてアピールできるでしょう。
失敗から学んだことを伝える
失敗から得た学びを伝えるのも有効な手段です。たとえ成果が出なかったとしても、失敗要因や失敗の活かし方をアピールできれば、面接官に入社後に活躍する姿をイメージさせることができます。具体的には以下の通りです。
「おそらくユーザーはこういったことを求めているのだろう」と、単なる予測でコンテンツを作っていたが、SNSが全く伸びなかった。SNSを成長させるには、ユーザーの意見に耳を傾けてニーズのあるコンテンツを作らなければいけないと気づいた。(以降、失敗の活かし方を詳しく紹介) |
また失敗体験は素直さもアピールできるため、面接では効果的です。
成功体験を回答する際の注意点
成功体験を回答する際、本章で紹介する2つの注意点を守らなければ面接官にマイナスな印象を与えてしまうでしょう。詳細は以降で解説します。
嘘をつかない
これまで何百人、何千人もの候補者と面接をしてきている担当者であれば、エピソードが嘘か本当かは察知できるようです。
すぐには嘘であることがバレなかったとしても、そのエピソードを深掘りされた場合嘘をついていると、回答の矛盾が生じ見破られることもあります。嘘がバレると信頼感が一気に揺らぐため、内定からは遠ざかるでしょう。
結果ばかりアピールしない
本記事前半で紹介したように、企業は成功体験そのものではなく、成功までのプロセスを求めています。そのため結果のアピールは最低限に留めておき、プロセスの説明に重点を置くようにしましょう。
結果だけをアピールしていると、やや自慢げな印象を抱かれることもあるため注意が必要です。
直近の成功体験エピソードを盛り込む
成功体験を語る際、できるだけ直近のエピソードを盛り込みましょう。遠い過去の話では、市場環境も変化していたり、当時の考え方から変わっていたりして、再現性が担保できません。また、面接官から「最近の成功体験がないのでは」と受け取られる可能性もあります。成功体験エピソードは、新鮮であることも重要なポイントです。
成功体験が思い浮かばないときは転職エージェントに相談しよう
転職の面接で語れる成功体験が思い浮かばない場合、自分一人で対策せず、転職エージェントに相談すると解決の糸口が早く見つけられます。転職エージェントではプロのコンサルタントが対応してくれるため、模擬面接の実施や面接のアドバイスを受けられます。面接を予定している企業情報を持つ転職エージェントであれば、さらに具体的な対策も講じてくれるでしょう。自信を持って面接を受けたい方は、転職エージェントに登録するのもおすすめです。
まとめ
企業は成功体験そのものよりも、成功までの過程や考え方を求めています。そのため成功体験を回答する際は「どこに課題を感じ、どう工夫して、どう行動したのか」を詳しく説明しましょう。また結論を先に提示する他、自己PRとの一貫性を持たせる点も重要です。
なお成功体験がない方は、仕事に取り組む姿勢や失敗から学んだ点を伝えることで、うまく切り抜けられるので本記事をぜひ参考にしてみてください。