事業者側から労働者に交付が義務付けられている、労働条件通知書。労働契約の期間や具体的な業務内容など、さまざまな項目が記載されており、どこを確認すれば良いかわからないとお悩みの方も多いでしょう。
今回は労働条件通知書に関して、確認すべき項目や雇用契約書との違いも含めて紹介します。本記事の後半では、労働条件通知書がもらえない場合や、記載に乖離がある場合の対処法も紹介しています。労働条件通知書に関するトラブルを防ぐためにぜひご覧ください。
労働条件通知書とは
労働条件通知書とは雇用契約を結ぶ場合に、事業者側から労働者に交付が義務付けられる書類のことです。従来は書面での交付しか認められていませんでした。しかし、2019年4月以降の法改正により、条件を満たした場合はEメールやFAXといった電磁的な方法でも交付が可能となりました。
雇用契約書とは
労働条件通知書とよく定義が混同される書類に雇用契約書があります。そもそも雇用契約書とは賃金や労働時間、休日日数といった労働条件を事業主と労働者で確認し、契約を結ぶための書類です。
両者には、法的に交付する義務があるかどうかに違いがあります。
上述したように、労働条件通知書は法律上交付が義務付けられていますが、雇用契約書は法律上作成する義務はありません。企業によっては「労働条件通知書兼雇用契約書」「内定通知書」「採用通知書」などと題して、交付する会社もあるようです。
労働条件通知書の記載事項について
労働条件通知書の記載事項には、法律上明記が義務付けられている絶対的明示事項と口頭通知が許可されている相対的明示事項の2種類があります。ここでは、絶対的明示事項と相対的明示事項の記載内容について紹介します。
絶対的明示事項:書面での記載が必要不可欠な項目
絶対的明示事項には以下9つの内容が含まれます。
- 労働契約の期間
- 就業場所と具体的な業務内容
- 業務の開始・終了時間
- 所定労働時間を超える労働の有無(残業の有無)
- 休憩時間や所定休日、休暇(年次有給休暇や代替休暇の有無など)
- 基本賃金や諸手当、時間外労働の割増賃金、及びそれらの計算方法
- 賃金の締切日と支払い方法
- 就業時転換に関する内容(交代制勤務を実施している場合)
- 定年制の有無や自己都合退職の手続き方法などの退職に関する内容
なお有期雇用・短時間雇用の場合は、昇給・賞与・退職金・相談窓口の有無といった4項目の記載が必要です。
相対的明示事項:口頭での通知が許可されている項目
相対的明示事項の一例は以下の通りです。
- 退職手当や賞与に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 表彰や制裁に関する事項
- 休職に関する事項
- 安全衛生や災害補償に関する事項
この他にも事項を定めた場合は、労働者に通知する必要があります。
労働条件通知書で確認すべき6つの項目
企業側から労働通知書を受け取った場合は、まず以下の6項目を確認することをおすすめします。ここで紹介する6項目は、どれも企業側と労働者間でトラブルになりやすい事項です。面談時の説明と齟齬がないか確認しておきましょう。
労働契約の期間
正社員のように期間に定めがない場合は、労働契約の期間に関する事項に「期間の定めなし」と記載されているかを確認します。試用期間が設定されている場合は、その期間も確認しましょう。
また、面談時に決めた入社日に齟齬がないか、チェックしておくことをおすすめします。前職の業務引き継ぎにより、記載の入社日では日程が厳しそうな場合は相談しましょう。
正社員に対して非正規の場合は「期間の定めあり」と記載されるため、契約期間が明記されているかを確認します。
勤務場所
勤務場所は仕事の充実度を左右する重要な要素です。面談時や求人情報と記載内容に齟齬がないかを確認しましょう。
また複数の場所で業務を行う場合は、それぞれの就業場所が記載されているかをチェックします。なお転勤がある場合は頻度や期間、転勤場所などについて事前に確認しておくと良いでしょう。
給料
毎月の給料の金額と内訳は、念入りに確認しておきましょう。諸手当や時間外労働の金額、支払い方法や支払い日についても同時にチェックすることをおすすめします。
労働時間・休日
就業時間が固定されている場合は始業時間と終業時間の2点を、毎日の就業時間が固定されていない場合は、具体的な時間が記載されているかをチェックします。
なおフレックスタイム制を導入している企業の場合は、コアタイムやフレキシブルタイム、休憩時間の記載を確認しましょう。労働時間だけでなく、休日日数や有給休暇、代替休暇などの記載も確認すると、後々のトラブルを回避できるでしょう。
退職・解雇条件
退職について確認する際は、まずは定年制かどうかをチェックします。定年制の場合は何歳なのか、継続雇用制度が用意されているのであれば、何歳まで雇用してくれるのかを確認しましょう。
なお解雇に関しては解雇理由を、自主退職に関しては届出の締切日などについても確認すると後々のトラブルを回避できます。
昇給
有期雇用・短時間雇用の場合は、昇給に関する事項が労働条件通知書に記載されています。昇給は働くうえでのモチベーションに繋がりますので、昇給金額、期間などは念入りに確認しておくとよいでしょう。
労働条件通知書をもらうタイミング
労働通知書をもらうタイミングは、企業によって異なります。
一般的に新卒の場合は、正式な内定までに労働条件通知書を交付してもらえることがほとんどです。対して転職の場合は、内定時や最終面接の合格後に交付されることが多い傾向にあります。企業によっては問い合わせれば、事前に交付してくれる場合もありますので、すぐに確認したい場合は連絡しても良いでしょう。
労働条件通知書をもらっていない場合の対処法
入社後、労働条件通知書をもらえない場合、まずは会社に依頼します。上述したように労働条件通知書は交付の義務があるため、問い合わせさえすれば発行してくれるはずです。
しかし、何らかの事情で発行してもらえない場合は、労働基準監督署(以降、労基署)に相談してください。労基署に相談して問題が判明した場合は、会社に対する勧告を行ってくれます。また、弁護士に相談するといった方法も有効です。トラブルに対して丁寧にアドバイス、対処してくれます。
繰り返しにはなりますが、労働条件通知書には交付義務があります。発行されなければ後々トラブルになるため、上記の3つの方法を活用し発行してもらうようにしてください。
労働条件通知書の内容と実際の業務が異なる場合の対処法
実際に働いてみると、業務内容が労働条件通知書の内容と異なっている場合があります。このような場合、まずは企業側に問い合わせましょう。問題が解決しない場合は契約を解除し、すぐに退職することもできるようです。
なお求人票と労働条件通知書の内容が異なる場合もあります。この場合は、企業に問い合わせる他、転職エージェントを利用している方であれば、担当の転職コンサルタントに相談しても良いでしょう。
まとめ
労働条件通知書には、法律上明記が義務付けられている絶対的明示事項と、口頭での通知が許可されている相対的明示事項の2種類の記載内容があります。労働条件通知書の認識に齟齬が発生すると後々トラブルになるケースがあるので、提示時に細かい項目まで確認し、内容に疑問や不明点があれば、すぐに確認することが大切です。なお、労働条件通知書の内容と実際の業務内容が異なる場合や、労働条件通知書をもらっていない場合は、まずは速やかに会社に相談してください。