転職活動中は、複数の企業に応募することもあります。選考の進捗や状況によっては、「第一希望の企業の選考結果を聞いてから内定の返事をしたい」と考えることもあるでしょう。しかし、そもそも内定の返事を保留にしてもいいのか疑問を持つ方も多いと思います。
この記事では、転職において内定保留を伝えるポイントや注意点について解説します。企業に対して失礼にあたらない態度・対応を身に付けるためにも、ぜひ参考にしてください。
転職で内定保留はできるのか
結論から言うと、新卒採用時と同様に、転職においても内定保留をすることは可能です。企業から入社意思を確認する1週間程度の「回答期限」が設けられるため、その期間内での保留は問題ありません。
応募する企業の選考や面接のタイミングによっては、ほかの選考結果を待ったほうがいい状況も発生します。入社後に後悔することがないように、内定保留を有効に活用しましょう。
内定保留の回答期限までに返答できない場合、回答期限を延期してもらう方法もあります。しかし、回答期限を延期してもらえるかどうかは応募先の企業によって異なるため、確認が必要です。企業側も求職者が複数の選考に参加することはある程度予測しているので、伝え方を間違えなければ大きな問題に発展することは少ないでしょう。ただし、企業側も入社準備や新たな人材確保が必要になるため、なるべく早く回答するように心がけましょう。
転職で内定保留する代表的な理由
内定保留をするのには、さまざまな理由が考えられます。回答期限までに意思決定ができず、延長を企業側に申し出る際は、明確で不快感を与えない理由を伝えましょう。
内定保留の代表的な理由として5つ挙げられます。
- 併願している他社の選考を待っている
- 入社にあたって懸念がある
- 現職にとどまるか迷っている
- 退職交渉が難航している
- 家族からの納得を得られない
企業側は複数の応募先があることは理解している場合が多いので、他の企業に応募していることは隠さず伝えましょう。他に結果を待つ応募先がなく、入社にあたっての疑問や不安がある場合や現職にとどまるか迷う場合は、どこに懸念があるかを早めに伝えることが重要です。回答期限ギリギリで申し出ると「このタイミングで?」とマイナスの印象を与える可能性があります。退職交渉が難航している場合も、トラブルを抱えている印象を持たれるので伝え方に注意が必要です。「家族の納得」については企業側も重要と捉えるため、正直に相談してみましょう。
内定保留ができる期間はどれくらい?
内定留保の期間は、一般的におよそ数日から1週間程度が目安になります。これ以上引き伸ばしてしまうと、企業側の都合から内定を取り消される可能性が高くなります。
入社したいという熱意をアピールしつつ、「家族と相談したい」「迷っている部分がある」など、内定保留の理由をセットで伝えましょう。
いつまでに回答できるかを採用担当者に伝えて、企業側の都合も汲み取ることが大切です。
企業側が内定の回答期限を延長できないケース
- 採用期限があり、選考を進める必要がある
- 入社意欲を重視している
- 回答期限の延長ができない社内ルールがある
企業側が採用期限や採用人数を決めている場合、内定保留中は他の選考が進められないため、延長が難しい場合もあります。また、内定保留の申し出を「入社意欲が低い」と捉えられることも考えられます。企業側から見ると、内定を保留しても辞退されると採用活動に労力が掛かると考えるでしょう。内定保留は、あくまでも応募者側の都合であることを念頭におきましょう。
だからといって「とりあえず承諾」はトラブルの元です。応募前に企業分析をていねいに行い、判断材料をまとめておきましょう。
内定保留を伝える方法
内定保留を伝えるには、以下2つの方法があります。
- メール
- 電話
どちらの方法で伝えるとしても、必ず下記の内容を盛り込むようにしてください。
- 内定のお礼
- 内定保留の理由
- 入社の意思
- いつまでに回答できるか
ここから先は、メール・電話それぞれの伝え方について解説します。
メール
メールで連絡するときには、丁寧な言葉選びを心がけましょう。はじめに「メールでの連絡になり、申し訳ありません」といった、断りの言葉を付け加えることがおすすめです。
内定保留の理由を簡潔に書き、いつまでに回答できるかも必ず記載します。回答が遅れる理由や迷っている内容をできる限りわかりやすく伝えましょう。
メールで連絡する場合、採用担当者がメールを見落としている可能性もあるため、企業側から返信がない場合は再度電話で問い合わせるようにしてください。
電話の際は、内定のお礼と内定保留をしたい旨を再度伝えます。企業側の都合に合わせて回答する日程を決め、その後の指示を仰ぐことが大切です。
メールでのやり取りは、履歴が残るメリットがあります。電話する場合も、事前にメールでアポイントを取りましょう。
電話
電話で内定保留を伝える場合は、内定の連絡がきたタイミングで伝えるのが良いでしょう。
電話では「恐れ入ります」「誠に勝手なお願いだと存じますが、内定保留をお願いすることはできないでしょうか」など、丁寧な言葉遣いから本題を切り出してみてください。
内定保留に至った理由や背景を伝えることは大切ですが、自分の気持ちをだらだらと話すことなく、なるべく簡潔に伝えるのがポイントです。
電話を切るときも「本日はお忙しい中、ありがとうございました」「失礼いたします」など、お礼や挨拶を欠かさずに終えることが大切です。
転職エージェントを利用して転職活動を行えば、内定保留の連絡や予定管理をスムーズに進められます。
内定保留を伝えるときの注意点
転職先の企業に内定保留を伝えるときは、以下の7点に気を付けましょう。内容を的確に伝えることはもちろん、悪い印象を持たれない伝え方を考えることがポイントになります。
- なるべく早く伝える
- 連絡方法は企業側の都合に合わせる
- 納得されやすい保留理由を用意する
- 印象を下げない伝え方を心がける
- 連絡する時間帯に気を付ける
- 嘘をつかない
- こまめに連絡を取る
なるべく早く伝える
内定保留の決心が固まった場合は、早めに採用担当者に伝えることが重要です。即戦力を求める中途採用の転職シーンにおいては、企業側も早く人材を確保したいと考えているケースがあります。
連絡が遅れたばかりに、先方が入社準備を進めていたり、ほかの候補者に不採用通知を送ってしまうケースも考えられます。余計な手間や負担を与えないためにも、極力早いタイミングで伝えることを心がけましょう。
連絡方法は企業側の都合に合わせる
内定保留の連絡方法は、できる限り転職先企業の都合に合わせて行いましょう。大手企業であれば採用専門の担当者がいるかもしれませんが、中小企業の場合は通常業務の中で面接や選考を兼務している方が多いです。
迷惑にならない連絡方法とタイミングを考え、担当者が最も連絡しやすい状況で意志を伝えましょう。電話とメールどちらで回答するほうがいいのか、事前に連絡フローを確認しておくことも大切です。
一般的なマナーとしては、内定通知が電話できた場合には電話、メールで連絡がきた場合はメールで返信すると良いでしょう。
納得されやすい保留理由を用意する
内定保留を伝えるときは、企業側に納得してもらえる理由を考えましょう。代表的な理由としては、下記のような例が挙げられます。
- 家族と相談してから入社を決めたい
- ほかの企業の選考を待っている
- 現職場に引き止められている
曖昧な理由を伝えてしまうと、採用担当者から悪い印象を持たれる可能性があります。実際にほかの企業の選考を待っている状況であれば、正直に理由を伝えたほうが誠実な印象を与えられます。ただし、あくまでも入社の意志があるうえで迷っていることは欠かさずアピールしておきましょう。
悪い印象を与えない伝え方を心がける
内定保留を伝えるときに最も重要なのは、採用担当者の印象を下げないことです。
どのような連絡手段を使うにせよ、まずは内定をもらったことへの感謝を一番に伝えましょう。内定保留の理由を簡潔に伝えたうえで、「〇月〇日まで返事を待っていただくことは可能でしょうか」と、疑問形にして相手に回答を委ねるのがポイントです。
一方的に自分の意見を伝えている印象を与えないために、相談・お願いという形で伝えることが大切です。担当者が納得できる理由がセットになっていれば、安心して期日まで待ってもらえるでしょう。
また、仮に第一志望企業の選考を待っている場合でも、ストレートに伝えることは推奨できません。「優先順位が低いのではないか」と思われる可能性があるので、「他社の選考期間中なので、お返事を待っていただけないでしょうか」と最低限の情報のみを伝えるのが得策です。
連絡をする時間帯に気を付ける
電話で内定保留の連絡を行う場合は、11時頃から14時頃の時間帯がベストです。企業の営業状況を予測して、極力忙しい時間帯を避けて連絡するのがマナーです。特に始業後すぐの時間帯や、営業時間前、担当者が席を外しやすい昼食時の時間帯は避けたほうが良いでしょう。
メールで連絡する場合は、営業時間内で担当者が確認しやすいタイミングに送りましょう。時間帯によってはメールの確認が漏れてしまう場合もあるので、心配な方は電話で伝えたほうが確実です。
嘘をつかない
内定保留の理由に関して、嘘をつくのは絶対に避けましょう。印象を下げたくないからといって嘘をついてしまうと、いざ発覚したときに悪印象を持たれてしまいます。
大きな嘘をついたときほど連絡時の態度や声色に不自然さが出てしまい、担当者から不信感を持たれるケースが少なくありません。正直な理由を伝えたくない場合は、前述した通り最低限の情報のみに留めるなど、伝え方を工夫することが大切です。
こまめに連絡を取る
内定保留の期間は一般的に数日〜1週間程度ですが、稀にそれ以上長い期間で内定保留を承諾してもらえるケースもあります。
内定保留の期間が長い方は、転職先の企業にできる限りこまめな連絡を心がけましょう。内定を保留にする時点で「入社へのモチベーションが低いのではないか」と疑われるリスクがあるので、状況が変わり次第すぐに連絡をすることが大切です。
現在の進捗を一度伝えるだけでも、採用担当者は安心します。連絡をしすぎるのは考えものですが、入社に関して少しでも前向きな情報であればこまめに共有しましょう。
【ケース別】内定保留を伝える際のメール例文
企業側に内定の保留をお願いする際、メールの文面がわかりやすい内容だと良い印象を与え、内定保留の連絡もスムーズにできます。下記の例文をベースにしながら、自身の状況に当てはめて使いましょう。
他社の選考結果を待ってから返答したい場合
たとえ希望する順位の高い企業の選考結果を待っていたとしても、内定保留で「真剣に検討したい」ことを伝えるようにしましょう。
(例文)
この度は内定のご連絡をいただきまして、誠にありがとうございます。本日は、返答期限について相談させていただきたくご連絡いたしました。
現在、他社の選考も進行中であり、その結果が〇月〇日に出る予定です。今回の転職は私にとって重要なキャリアプランの一部であり、慎重に検討したいと考えております。
そのため、内定のお返事を〇月〇日までお待ちいただくことは可能でしょうか。
誠に恐縮ではございますが、何卒ご検討いただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
内定を受けた企業に懸念がある場合
内定を受けた企業に入社するにあたって、疑問点や不安などの懸念がある場合は、それを具体的に伝えることで誠意を伝えましょう。
(例文)
この度は内定のご連絡をいただきまして、誠にありがとうございます。貴社で働きたいという気持ちは強いのですが、実はまだ気にかかっている点があり、決断をしかねております。本日はお尋ねしたいことがあり、ご連絡いたしました。
面接の際に「独自の評価制度が充実している」とお伺いしましたが、具体的な評価方法や基準を教えていただくことは可能でしょうか。
いただいた回答を加味した上で、改めてしっかりと検討したいと考えております。
そこで、〇月〇日まで回答期限を延長いただくことは可能でしょうか。
勝手を申しまして恐縮ですが、ご検討のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
内定保留後の対応が大切な理由
すでに説明した通り、最も重要なのは内定保留を伝えたあとの対応です。
曖昧な理由で内定保留を伝えたり、返事の期限を守らなかったり、連絡がおろそかになったりと対応に不備があれば、採用担当者だけでなく企業との信頼関係が失われてしまいます。
内定保留後の対応に少しでも不審な点があれば採用担当者の印象が悪くなり、無事に入社できたとしても信頼度が低い状態から人間関係を構築しなければなりません。
内定保留には一定のリスクがあることを考慮したうえで、いかに印象を損なわない対応ができるかが一番のポイントになります。
入社後は採用担当者を含め、選考に携わった方が一緒に働く同僚・上司になります。入社後に働きやすい環境を作るためにも、内定保留する場合は常に丁寧で誠意ある対応を意識しましょう。
まとめ
この記事では、転職先の企業に内定保留を伝えるときのポイントや注意点について解説しました。どの企業に入社しようかを熟慮したい場合、内定保留は有効な手段のひとつになります。
内定保留の回答期限は長くても1週間程度に留め、できる限り早めに回答することが大切です。回答期限を何度も変えたり嘘を言うことは企業の印象を悪くするので、絶対に避けましょう。
内定保留は決してできないわけではありませんが、内定保留後の対応も評価されていると考え、丁寧な対応を心がけるようにしてください。
「企業に迷惑をかけてしまうかもしれない」「内定を取り消されたらどうしよう」と、内定保留交渉を一人で進めるには不安もあるでしょう。転職エージェントサービスを活用すれば、キャリアアドバイザーが間に入って交渉を進めてくれます。転職活動をスムーズに進めたい方は、転職エージェントに相談してみましょう。