退職の意思を伝えたとき、人材不足の問題や待遇の改善を理由に、上司や会社から引き止められて困るケースがあります。すでに転職する企業に内定しているにもかかわらず、退職するタイミングで引き止められてしまい悩む人もいるでしょう。今回は退職を引き止められるパターン別の対策と、スムーズに退職するためのポイントを紹介します。
会社はなぜ退職を引き止めるのか
なぜ上司や会社は退職したい人を引き止めるのでしょうか。引き止める理由には、主に以下で紹介する3つが考えられます。
あなたの将来を案じている
退職したいと伝えた人の年齢やキャリアの長さによっては「もっと経験を積ませたい」「将来が心配」など、親身に考えたことにより引き止めるケースがあります。一時的な感情や不満が理由で退職を決意したようだと上司が感じれば、冷静な判断で退職を考えていないと心配される場合があります。
会社にとって損失がある
退職されることで「人材不足」が生じ、残る社員に大きな負荷がかかることは容易に想像ができます。そのため、できるだけ社員数を減らしたくないという理由で引き止めてくる場合があります。さらに、退職者が出ることが原因で残った社員のモチベーション低下を避けたいといった意図もあるでしょう。新たに人材募集しても応募があるか、人材育成に成功するかは未知数であり、コストも労力もかかります。そのため、経験を積んだ社員を辞めさせないように働きかける傾向にあります。
上司の責任が問われる
自分の部下が退職することは、上司にとってはマネジメント能力に対する評価が低くなることと同義です。退職者が出ることで、上司が率いるメンバーは役割の見直しやチーム編成の変更などを余儀なくされます。また「これまで育ててきたのに、まだ力を発揮してもらえてない」という感情的な思いから、退職を引き止められることもあるでしょう。
代表的な引き止め方法と対処法
ここでは、退職を引き止める方法として挙げられる代表的ものを6つ紹介します。
退職時期を引き伸ばされる
後任者の選定や募集を理由に、退職時期を引き伸ばすようにお願いされるケースがあります。特に人材不足の会社で働いている場合は、残る社員に負荷をかけることを懸念して引き止められることが多いでしょう。しかし退職後の業務負荷や後任者の問題は会社側の責任であるため、退職することとは切り離して考えましょう。
就業規則に沿って退職の意思を伝えた場合、労働者には希望日に退職する権利があります。ただし、退職日までは最大限の努力と誠意を見せ、従業員としての責任を果たしましょう。
異動を持ちかけられる
会社によっては待遇改善の一環として、希望部署への異動を持ちかける形で退職を引き止めようとします。所属する部署の仕事内容や人間関係に不満があり、転職先が決まっていないのであれば、検討の余地があるかもしれません。
しかし「会社を辞めようとした」ことが周知されてしまうと、異動先で居心地の悪い思いをする可能性があります。さらに、問題が根本的に解決されないこともあります。退職したい理由をもう一度整理し、会社に残るべきかを考えましょう。
退職によるデメリットを強調される
「自己都合による退職は失業保険がおりる期間まで長い」「せっかく積み上げてきたスキルがもったいない」など、退職することによるデメリットをあげて、退職しないことにメリットがあると説得してくるケースがあります。退職によるデメリットを把握したうえで退職を希望するのは、現職の会社で環境を改善することは難しいと感じたからではないでしょうか。次の職場でのさらなる成長を期待し、退職する決意をしたことを忘れないようにしましょう。
今よりも良い待遇を提示される
退職を希望した途端、待遇改善を提示してくる場合もあります。しかし、口約束でしかない場合も少なくありません。「年収を今より上げる」「残業時間を減らす」という言葉を信じて会社に残っても、改善されずに転職活動をすることになったというケースもあります。
待遇の改善における意思決定を上司の一存でできるかどうかも、見極める必要があるでしょう。待遇についての条件を書面にしてもらい、退職を再検討するのもいいでしょう。ただし、一般的に大幅な改善は見込めないことが多いようです。
不安を煽られて脅される
会社や上司によっては、脅しとも取れるような発言で説得しようとするケースもあります。「転職すると大幅に年収ダウンする」「実績が足りないから再就職は難しい」などと、不安を煽って退職を思いとどまらせようとしても、聞き入れる必要はないでしょう。どうしても困った場合は経営層に近い上司に相談するか、労働局に相談することも検討しましょう。
感情的に訴えられる
「君がいないと仕事が成り立たない」「チームのみんなが困るから辞めないでくれ」など、感情に訴えて引き止める上司もいます。日頃から仕事や人間関係に誠実な人ほど、深刻に考えてしまうかもしれません。ただし、退職することと、今までお世話になったという気持ちは、別々の問題として切り離して考えましょう。
このようなケースは話し合いの回数を多く設け、大人数で説得してくることがあります。退職する意思が固いのであれば、毅然とした態度を保ちましょう。
スムーズに退職するためのポイント
退職の意思を伝えるだけでも、さまざまな障害があります。しかし、転職先がすでに決まっている場合は、予定通りの日程で退職しなくてはなりません。ここでは、スムーズに退職するうえで必要な、事前準備について解説します。
書面で退職願を提出する
「まずは退職時期を相談してから」と考えるのではなく、真っ先に書面で退職の意思を伝えましょう。退職の意思をしっかり伝えないと、上司や会社は引き止めれば辞めないのではと勘違いしてしまいます。結果、退職時期などを曖昧にしながら、辞めさせないように説得される可能性が生じます。書面は第三者に対しても意思を証明する手段にもなるため、必ず最初に準備しましょう。
退職日を前もって決めておく
自ら設定した退職日から逆算して行動することで、自分のすべきことを整理できます。そのため、退職日まで余裕を持って行動できます。退職したい旨を伝える時期については、就業規則に従ってください。就業規則に退職日に関する項目がない場合でも、1ヶ月以上前に伝えておけば引き継ぎに時間も取れるため、円満退社につながります。
引き止めにくい退職理由を伝える
退職の理由を聞かれたときは、できるだけポジティブな理由を答えることで引き止められづらくなります。「キャリアアップしたい」「転職しないとできない目標がある」など、現職の会社で改善できないことを次の職場では実現できると伝え、円満退職を目指しましょう。
転職先を決めておく
退職を伝える前に転職先を決めておくと、自分自身も退職の意思を強く持つことができるでしょう。入社日がすでに決まっており、予定がずれると内定先の会社にも影響することを伝えれば、会社側は引き止めにくくなります。
繁忙期を避けて退職する
繁忙期に退職されると会社側も困るため、引き止められやすくなります。可能であれば繁忙期を避けて、落ち着いた時期に退職するとよいでしょう。同僚が忙しい時期に退職の引き継ぎをすると負担をかけるばかりか、マイナスの印象を残すことになりかねません。お互いのストレスやトラブルを避けるためにも、退職日の設定に配慮しましょう。
まとめ
退職を引き止められないようにするため、押さえておくべきことは以下の2点です。
- 退職を引き止められても、毅然とした態度を取ること
- 退職するまでの予定をたて、事前準備すること
円満退社を目指して行動することは、社会人としてのマナーです。会社側の事情を考慮しつつ、自分の予定もしっかり守れるよう、計画的に行動しましょう。