退職後、再就職が早期に決まると、再就職手当を受け取れる場合があります。転職活動中の無収入期間の経済的な負担を補えるため、受給条件や受給金額について確認しておくことが大切です。今回は、再就職手当の受給条件や受給金額、手続きの流れ、よくある疑問などについて詳しく解説します。
再就職手当とは
再就職手当とは、雇用保険の受給資格を持つ人が早期に再就職が決まった際に受け取れる手当です。ハローワークで手続きする必要があることから「ハローワーク就職祝い金」とも呼ばれています。
再就職手当の目的
再就職手当の目的は、離職者の再就職を促すことです。早期に再就職をすれば祝い金を受け取れると離職者に伝えることで、再就職に向けて早期に行動を始めるようになります。
再就職手当のメリット
再就職手当のメリットは、非課税であることです。所得として計上されないため、所得税や住民税が上がりません。また、再就職に伴う引っ越しや無職期間の経済的な負担を補えることで、新しい環境での労働に意欲的になれる可能性もあります。
再就職手当の受給条件
再就職手当を受給するには、次の条件をすべて満たす必要があります。
- 受給手続きから7日以降の再就職である
- 失業手当の支給残日数が3分の1以上残っている
- 再就職先と前職との間に密接な関わりがない(紹介での再就職、子会社への出向など)
- ハローワークか人材紹介会社経由で決定した再就職先である(※待期期間終了後1ヵ月以内の再就職で、なおかつ自己都合退職の場合にのみ適用)
- 再就職先で1年以上の雇用が見込まれる(契約更新の見込みがある場合は派遣契約にも適用)
- 雇用保険に加入していること
- 過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当を受給していない
- 受給資格決定よりも前に再就職先に内定していない
- 再就職手当の支給決定日までに離職していない
再就職手当の受給金額
再就職手当の受給金額は、以下の計算式で算出します。
基本手当日額×支給残日数×給付率
基本手当日額は「離職前の6ヵ月間の給与合計額÷180(日)×給付率」で計算します。
支給残日数は、失業手当を受け取れる期間のことです。
給付率は、再就職が決まった時点における基本手当の支給残日数で異なります。
- 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上→給付率70%
- 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上→給付率60%
再就職手当の手続き
再就職手当は、次の流れで手続きします。
- 雇用保険受給資格者証、失業認定報告書、再就職先から受け取った採用証明書をハローワークに提出する
- 再就職手当支給申請書をハローワークで受け取る
- 再就職手当支給申請書を再就職先に提出する
- 必要事項を記入してもらった再就職手当支給申請書と雇用保険受給資格証をハローワークに提出する(前職と再就職先が関係ないことを示す証明書、タイムカードの写しなども提出)
再就職手当の申請期限
再就職手当の提出期限は、再就職した日の翌日から1ヵ月以内です。ただし、申請期限が過ぎても、再就職した日の翌日から2年以内であれば申請できます。
再就職手当を受け取れないケース
再就職手当は、条件をすべて満たした場合にのみ受け取れます。ここでは、再就職手当を受け取れないケースについて詳しく見ていきましょう。
再就職手当申請後すぐに退職した場合
再就職先に雇用されて3ヵ月未満で退職した場合は、再就職手当を受給できません。再就職手当の申請から3ヵ月後に、現在も雇用を続けているかどうか再就職先に確認が入ります。その時点で退職している場合は、いかなる事由があったとしても再就職手当は受給できません。
支給残日数が不足している場合
支給残日数は再就職する日の前日までの日数のことで、失業手当を受け取れる残りの期間を指します。所定給付日数から再就職の前日までの日数を差し引いて算出します。支給残日数が所定給付日数の3分の1未満の場合は、再就職手当を受給できません。例えば、所定給付日数が90日の場合は、支給残日数が29日以下だと受給できません。
雇用形態や期間が支給条件を満たしていない場合
再就職手当は、再就職先で1年以上の雇用を見込めることが受給条件です。そのため、日雇い契約や1年以内の退職見込みのアルバイト、派遣契約などでは再就職手当を受け取れません。ただし、派遣契約においては1年契約だとしても契約更新が前提である場合は、再就職手当の受給条件を満たしたことになります。
また、3ヵ月以内に退職したり短期限定のアルバイトで働いたりした場合は、申告することで失業保険を受給できます。
再就職手当に関する疑問点
ここでは、再就職手当に関するよくある疑問点を解消していきます。
アルバイトやパートに再就職手当はある?
1年以上の雇用が見込まれるのであれば、アルバイト・パートでも再就職手当を受給できます。なお、契約期間が1年未満のアルバイト・パートで雇用されたときは、就業手当を受給できる可能性があります。(失業手当の受給資格がある場合に限る)ただし、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上など、特定の条件を満たさなければなりません。
もらい損ねることにペナルティはある?
再就職手当は申請することで受給できる手当です。そのため、申請しなければ受け取ることはできません。申請を忘れていたり、申請書の不備を修正せずに放置したりして再就職手当を受け取らなかったとしてもペナルティはありません。したがって、手続きが面倒であれば受け取らないのもひとつの手段です。
試用期間がある場合はどうなる?
再就職先に試用期間があったとしても、条件さえ満たせば再就職手当を受け取れます。ただし、再就職から3ヵ月後にハローワークから雇用を継続しているか確認が入るので、その時点で退職している場合だと再就職手当は受け取れません。
まとめ
再就職手当を受け取るためには、多くの条件を満たす必要があります。中でも1年以上の雇用見込みがあるかどうかについては判断が難しいケースもあるため、不明点はハローワークに確認しておきましょう。また、再就職手当は受給できなくても失業手当や就業手当を受給できる可能性もあります。国が定める制度は申請しなければ利用できないことが多いため、今回解説した内容を参考に確実に手続きを行いましょう。