履歴書や職務経歴書に記載する転職理由・退職理由の適切な書き方について、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。転職理由は企業が応募者を審査する際に必要な項目で、求職者自身にとっても自らの実績や今後の展望を伝えるために重要です。
今回は、転職理由の基本的な書き方や押さえておくべきポイントを紹介します。例文を交えて解説しているので、転職活動を検討している方はぜひ参考にしてください。
履歴書の職歴欄に書く転職(退職)理由は定型文で記載
転職理由は、定型文を使用して記載することが一般的です。できるだけ詳細は記載せず、面接時に質問された場合は答える、といった認識で問題ありません。
また、転職理由は一般的に、履歴書に記載するものであることを覚えておきましょう。職務経歴書には記載せず、指定がない場合は履歴書のみに下記の定型文を記載してください。
一身上の都合により退職(自己都合の場合)
転職理由が自己都合にあたるのは、結婚・引っ越し・病気・家族の介護・現職の待遇・人間関係の不満などです。これらに該当する場合は、履歴書に「一身上の都合により退職」と記載し、詳しい理由を書く必要はありません。会社から特に指定がない場合は、書類上はすべて「一身上の都合」で統一します。
会社都合により退職(経営不振によるリストラ・倒産の場合)
会社都合で退職した場合は、具体的な理由を書くのが一般的です。企業倒産、事業部の廃止、リストラなどが当てはまります。履歴書には「退職奨励に伴い退職」「事業部門縮小により退職」「会社都合により退職」と記載します。
契約期間満了につき退職(契約社員などの場合)
契約社員・派遣社員・期間社員・臨時職員など期間契約で雇用契約を結んでいる場合、契約期間満了に伴う退職は「契約期間満了につき退職」と記載します。契約期間の更新を断った場合も「契約期間満了」に該当します。契約期間よりも前に退職した場合は「自己都合での退職」と記載しましょう。
履歴書の職歴欄に転職(退職)理由を記載する際の記述例
年号は西暦・和暦のどちらでも良いですが、履歴書全体で統一しましょう。職歴欄だけでなく、生年月日や他の項目でバラバラの記載があると、マイナスの印象を与えてしまいます。和暦の場合は、元号をアルファベットで省略せず「令和」「平成」と正式表記で書きましょう。
また、履歴書の記載は「退職」と記載するのが正しく、仕事を終えて帰宅する意味も含まれる「退社」は使わないようにしましょう。
退職理由を具体的に書いたほうが良いケース
履歴書には退職理由を定型文で書くのが一般的ですが、具体的に書いたほうが良いケースもあります。ここでは、3つのケースを紹介します。
前職を短期間で辞めている
親の介護や海外移住など、やむを得ない理由で前職を1年未満で前職を退職している場合は「一身上の都合で退職」という記載だけでは誤解を与える可能性があります。「長く働いてくれないかも」「トラブルがあったのではないか」という印象を与えないためにも、具体的な理由を記載しましょう。
退職後の空白期間が長い
退職後の空白期間が長い場合、基本的にはすべて理由を記載しましょう。例えば「育児(介護)に従事していました」「入院と通院で治療に専念していました」と添えるとわかりやすいでしょう。空白期間については面接時に聞かれる可能性も高いので、期間中の経験や変化などをポジティブに捉えられるように回答を準備しておきましょう。
職歴・キャリアに一貫性がない
職歴やキャリアに一貫性がない場合は、簡潔に理由を書き添えましょう。例えば「販売業経験を活かしIT営業へ転身するため退職」など、前向きな理由を記載します。提出する志望動機と連動しておけば、例え異業種でも一貫性を持たせることは可能です。
なぜ履歴書・職務経歴書に転職(退職)理由を書く必要があるのか
履歴書や職務経歴書へ転職理由を求められるのは、採用者が下記の要素を重視するためです。
- 志望動機との整合性を図るため
- 短期間で退職するリスクがないか判断するため
以下で2つの理由を詳しく解説します。
志望動機との整合性を測るため
前職を退職した理由と志望動機に一貫性がないと、採用側は応募者の思惑を理解できません。
例えば「さらなるキャリアアップ」を理由に退職したにもかかわらず、志望動機に「ワークライフバランスの実現」と書かれていたらどうでしょうか。キャリアアップするには新たな領域へのチャレンジが必要な反面、ワークライフバランスの充実は仕事とプライベートの両立が必須です。結局この人は何を目的に転職し、なぜ自社に入りたいのかと疑問に感じられてしまうでしょう。
転職理由を書く際は、退職の理由と志望動機に整合性があるかどうかを客観的に判断してください。
短期間で退職するリスクがないか判断するため
企業への不満が主な理由で退職している場合、自社でも同様のことが起きるのでは?と企業側は懸念します。仮に短期間で転職した経験がある場合、マイナス要因とならないように事情を説明する必要があります。「なぜ短期間で離職に至ったか」「過去に短期間で転職した経験はあるけれど現在はこうだ」と、自身の中でまとめたうえで転職理由を記載しましょう。
転職理由を職歴欄以外に記載する場合の書き方を紹介
基本的に履歴書に書く転職理由は定型文を活用しますが、志望動機欄や退職理由欄があった際は具体的に書く必要があります。その場合に記載する主な転職理由は、以下5つが挙げられます。
- 給与
- 残業時間
- 人間関係(労働環境)
- スキルアップ
- ライフステージの変化
以下で、それぞれの理由にあった書き方を紹介します。
好印象を与える転職理由の書き方をパターン別に紹介
主な転職理由には、以下4つが挙げられます。
- 給与
- 残業時間
- スキルアップ
- ライフステージの変化
ここでは、好印象につながる転職理由の書き方を、上記の転職理由別に紹介します。
給与
給与が少ないことを理由に前職を退職した場合は、「成果や行動を適切に評価してもらいたい」など、業務へのモチベーションが期待できる書き方をしましょう。
以前はITサービスの法人営業を担当しましたが、グループ案件が多く、新規顧客獲得が評価や報酬に反映されませんでした。営業活動が評価される環境でモチベーションを高めたいと考え、転職を決意しました。御社は新サービスリリースに伴い営業部門を強化中とのことなので、これまでの経験を活かし、サービス拡大とトップシェア獲得に貢献したいと考えております。
単に給与の少なさだけを理由にすることは避けましょう。
残業時間
残業時間を転職理由として書く場合も、単に「残業時間が長かった」と書かないようにしてください。「残業に対する提案が受け入れられなかった」など、自身の行動を重視した書き方を意識しましょう。
残業が月50時間を超え、資格取得の勉強が難しかったため転職を決意しました。従業員の声に応えつつも改善が遅く、残業時間が月50時間を下回るまでには至らなかったため、労働環境を変えることにしました。御社はICT化を進め、労働環境改善に力を入れていることから、自己研鑽を積みながら働けると期待し応募した次第です。
残業だけの理由だと、残業がある仕事はすぐに退職してしまうだろうと判断される場合もあります。
人間関係(労働環境)
人間関係が理由の場合、受け身でネガティブな内容だけでなく、入社後に実現したいことを具体的に書くと良いでしょう。
以前は請求管理や月次決算などの経理業務を担当し、経理責任者が社長の身内である状況で、時には理解しがたい指示にも直面しました。これまでの経験を活かし、将来的には財務体質や経営の改善提案を行い、御社の成長に貢献したいと考えています。即戦力として、早くチームに加わり、御社の目標達成に向けて努力したいと思っています。
積極性を示すためにも、入社後の意欲やビジョンを伝えることが大切です。
スキルアップ
スキルアップを目的に転職する場合は、伸ばしたいスキルや今後身につけたいスキルを明確に記載してください。
以前は人事アシスタントとして面接日程や会議室の手配などを担当しましたが、ベテラン社員の多さにより、スキルアップの機会に恵まれませんでした。御社は人事の裁量が大きく、採用から教育まで幅広く担当する方針を持っており、採用業務の効率化に貢献したいと思っています。
入社後に何を実現したいのかはっきりしている人材と判断され、好印象につながるでしょう。
ライフステージの変化
結婚や出産で転職する場合、新天地で長く勤め続けたいことをアピールしてください。「自身のスキルを活かして長く働きたい」「ワークライフバランスを重視したい」と、前向きな印象につながる言い回しを考えましょう。
私が御社への転職を志望した理由は、ワークライフバランスが実現できるという点です。1年前に子どもを出産した後も社会貢献の意欲は変わらず、復職の意思もありました。そんな中、御社はワークライフバランスの重要性を掲げ、従業員の生活と仕事の調和を大切にする姿勢に感銘を受けました。子育てと仕事を両立しながら社会貢献を果たしたいと考えます。
結婚・出産の理由だけでは、働き方に制限があるのではないか?と捉えられるので注意しましょう。
転職(退職)理由を書く際に押さえたいポイント
ここでは、転職理由を書くうえで重要なポイントを紹介します。企業に好印象を与えるための書き方なので、ぜひ参考にしてください。
転職理由はなるべく短くまとめる
マイナスな理由が多すぎたり文章が長すぎたりすると、「言い訳ばかりする人」「不満をすぐ口にする人」だと評価されてしまうこともあります。できるだけ前向きな印象につながる言い回しを意識したうえで、短く簡潔に記載することがおすすめです。
転職により解決できる課題を理由として挙げる
「将来性を感じなかった」「前職で上司と反りが合わなかった」など、転職で解決できないことは書かないほうがよいでしょう。将来性や上司との相性に関する課題がある企業は、少なくありません。企業に対する不満が多い人材と判断されやすくなるため、あくまで「転職をきっかけに自分がどうなっていきたいか」を主題にしましょう。
ポジティブな動機に紐づけて書く
たとえネガティブな理由で前職を退職していても、転職理由に書く際はポジティブな言葉や理由に変換してください。
残業時間が長い→ワークライフバランスを重視したい
給与が少ない→正当な評価を受けたい
業務内容に不満があった→自身の適性を活かした仕事がしたい
志望動機との整合性も意識しつつ、ポジティブな転職理由として印象付けられるよう記載しましょう。
退職理由欄がない履歴書・職務経歴書を選ぶ
転職理由は、定型文で簡潔に書くのが一般的です。そのため、退職理由欄のない履歴書を選んでも問題ありません。そもそも転職理由の書き方には決まりがなく、理由をしっかり書かないと不利な場合以外は、詳しく書く必要はないでしょう。上述したように、前職を短期間で辞めていたり、退職後の空白期間が長かったりしてマイナスイメージを払拭したい場合であっても、一言添える程度で十分でしょう。
まとめ
転職理由の書き方は、定型文を使うのが基本です。ただし、採用者は転職理由と志望動機の関連性や仕事への姿勢を見ているため、矛盾のない内容を書きましょう。また、面接で転職理由を聞かれたときにポジティブな視点で明確に応えられるよう、しっかり準備しておきましょう。
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