営業を成功させるための手法に「クロージング」が挙げられます。クロージングという言葉を耳にしたことはあっても、実際に活用できるレベルまで理解しきれていない方も多いでしょう。クロージングについて理解し、適切に行えるようになれば、営業の成約率を高めることができます。
今回はクロージングについて、主な種類や活用テクニック、成功につなげるためのコツを紹介します。自身の営業成約率をアップさせるための参考にしてください。
クロージングとは
クロージングとは直訳すると「閉める」や「締めくくり」などを意味する言葉ですが、営業活動においては商談を契約へ結びつける締めくくりのフェーズのことを指します。
クロージングは、ヒアリングや提案などのプロセスと同様、営業活動における重要なステップです。たとえヒアリングと提案で顧客の購買意欲を高めることができても、クロージングが不十分で不備があった場合は成約につながりません。また、クロージングへの意識が低いと、成約できないばかりか競合に顧客を奪われる危険性もあります。適切なタイミングでクロージングを実行することで、ヒアリングと提案の内容を活かしつつ成約につなげることが可能です。
クロージングの種類
クロージングには、主に以下の4種類があります。それぞれの特徴を掲載しているので、自身の営業スキル向上にお役立てください。
種類 | 特徴 |
---|---|
沈黙のクロージング | ・沈黙することで顧客に考える時間を与える ・サイレントクロージングとも呼ばれる ・顧客を困惑させてしまう可能性があるので注意 |
引くクロージング | ・あえて購入・成約を勧めないクロージング ・高額な製品、押しに強い顧客を対象に活用 |
想像させるクロージング | ・購入後をイメージさせるクロージング ・できるだけ具体的に想像させる必要がある |
選ばせるクロージング | ・選択肢を掲示するクロージング ・製品やサービスが複数ある場合に活用 |
クロージングの例文
上記で紹介した4つのクロージングを活用する際は、以下に挙げる例文を参考にしてください。
<沈黙のクロージング>
- 「購入についてどのようにお考えでしょうか?」と投げかけた後、沈黙する
相手から言葉を引き出すようにする
<引くクロージング>
- もし決断できないようであれば、今回は縁がなかったということで…
- 無理にとはいいません
顧客から「やっぱり購入します」と引き出すようにする
<想像させるクロージング>
- こちらの製品を購入して〜が実現できたら、今後の生活はどう変化しますか?
- 製品購入後に得られる〜で、何を実現したいですか?
相手に購入後のメリットを具体的にイメージしてもらえるようにする
<選ばせるクロージング>
- 〜の場合に使えるAと、〜の場合に使えるBがあります
選択肢と、それに基づくメリットを伝えるようにする
クロージングの基本テクニック
クロージングを成功させるには、以下に挙げる基本テクニックを実施する必要があります。
- 成約後のイメージを構築
- 選択肢の付与
- テストクロージング
成約後のイメージを構築
クロージングにおいて重要なのは、顧客に成約後をイメージしてもらうことです。提案した商材が課題をどう解決できるのか、購入することでどんな未来が実現できるかを、先ほど紹介した4つのクロージングを使い分けてイメージしてもらう必要があります。実際に購入後をイメージできれば、顧客の購買意欲を掻き立てることが可能です。顧客のニーズを聞き出しながら、適切な言い回しや提案で成約後をイメージさせましょう。
選択肢の付与
多くの顧客は「購入するなら失敗したくない」と思っています。そもそも購入すべきかの判断に迷っている顧客もいれば、AとBどちらを購入するか悩んでいる顧客もいます。いずれの場合も、対象のサービスに関する選択肢を用意し、提案することが大切です。顧客に「考える」時間を与えるのではなく、複数ある選択肢から「選ぶ」方向に持っていくと、クロージングは成功しやすくなります。
テストクロージング
先ほど紹介した4つのクロージング以外にも、商談の途中に購入する意思があるかを確認する「テストクロージング」というものがあります。テストクロージングでは、主に以下のような質問を投げかけてみます。
- ここまで説明してきましたが、いかがでしょうか
- 説明してきた中で疑問点はありますか
- 弊社の商材で貴社の課題は解決できますか
- 紹介した商材の中で貴社に向いている商材はどれでしょうか
テストクロージングの概要や言い回しを覚えておくことで、成約後のイメージ構築や選択肢の付与もしやすくなるでしょう。
クロージングを成功させるためのコツ
クロージングは、あくまでも営業活動における「最後」の行動です。しかし、以下に挙げる内容を理解し、実践しないことには、そもそもクロージングまでつながらない可能性も十分にあります。以下に挙げるコツを理解しておくことが大切です。
自社サービスへの理解を深める
自社サービスの理解を深めることは営業活動の基本です。資料を読み上げて過去の実績を説明するだけでは、顧客の購買意欲は刺激できません。自社サービスを利用するうえでのメリットなどを、具体的な数値を用いて提案することが大切です。サービスに関する内容をもとに、実際の数字を用いたデータを用意しておきましょう。自身の理解度を上げるだけでなく、営業活動に説得力を持たせることにつながります。
自社サービスについて理解し、自信を持って顧客に対して提案できるようになることが、クロージングにつなげるための重要なポイントです。
顧客の予算を把握する
提案前・提案中に顧客の予算を把握することで、予算に応じたプランを提案できます。顧客の予算に応じて適切なプランを提案できるよう、いくつかパターンを用意しておくことが大切です。また、商材の相場を把握し、そのうえで自社製品と比較しながらメリットを説明していくことで、顧客の購買イメージを掻き立てられます。
成約の障害となる原因を排除する
「もっといいものがあるかもしれない」「費用対効果があるのか不安」「営業担当の言うことを信用しきれない」など、成約の障害になる原因はさまざまです。不安要素が解決しないままでは、クロージングにはつながりません。顧客が何に不安を抱いており、その不安をどう解消すべきか考え、説明することで営業活動がクロージングまで至ります。
YES BUT法・YES AND法を活用する
YES BUT法とは、相手の意見に共感しつつ「しかしこのような条件ではどうでしょうか」と提案する手法です。相手を否定せず受け入れたうえで、最適なプランを提案することで相手に安心感を与えられます。しかしBUTを使うことで、どうしても「否定されている」と感じさせやすいのも事実です。
その場合はYES AND法を活用してください。YES AND法とは「そうですね。実はこんなパターンもあります」といった形で、相手を受け入れつつ自然な流れで別の提案をする手法です。否定的な言い回しではないため、YES BUT法よりも聞き入れられやすいといえます。
クロージングにおけるNG例
クロージングを成功させるには、ここで挙げるNG例を避けて進める必要があります。
顧客目線になっていない
提案の内容が自社のアピールポイントのみでは、顧客が安心して成約できません。あくまで製品・サービスを通じて顧客の要望を叶えたり、悩みを解消することができるかを、明確にしたクロージングを意識することが大切です。
テクニックのみを重視している
ここまで紹介したクロージングの手法など、テクニックの実践のみを重視してしまうと、やはり顧客目線でのクロージングにはなりません。そればかりか、テクニックの上澄みだけをすくって、的外れな提案をしてしまう可能性もあります。
まとめ
今回は、営業活動における重要な締めくくりである、クロージングについて紹介しました。クロージングにもいくつか種類があり、それぞれ適した言い回しがあります。また、クロージングを成功させるためのテクニックやコツを覚えておくことも大切です。ただし、テクニックのみを重視し、顧客目線ではないクロージングになることは避けてください。今回紹介したクロージングに関する内容が、営業活動の成功に役立てば幸いです。