ビジネスの現場で必要になるリーダーシップ。「リーダーシップはカリスマ性のある人が持つもの」「リーダーシップは生まれ持った才能で決まる」といった考えを持っている人は多いですが、実はリーダーシップは訓練することで身に付くスキルです。この記事では、代表的な6つのリーダーシップや鍛え方、必要な能力などを解説・紹介します。
リーダーシップとは
リーダーシップとは、個人やチームに対して行動を促したり、目標達成のためのビジョンを示したりすることによって、問題や課題を解消する力のことです。指導力や統率力とも表現されます。リーダーシップを持っている人は、組織の目標達成のために良い影響を及ぼします。
資質や地位ではない
リーダーシップと聞くと、生まれ持った資質や組織での地位が関係すると思われがちですが、決してそうではありません。リーダーシップは組織のリーダーだけでなく、組織に所属するすべての人に必要な能力です。
世界的に有名な経営学者「ピーター・ドラッカー」によると、リーダーシップの要素は『仕事』『責任』『信頼』の3つに分かれるとされています。ドラッカーも述べているとおり、カリスマ性など人を惹きつける要素はリーダーシップではなく、扇動的な要素に過ぎません。
構成要素として有名な「PM理論」
リーダーシップの構成要素として有名なものに「PM理論」が挙げられます。PM理論はリーダーが取るべき行動に着目した行動理論のひとつで、目標達成機能の「Performance function」(パフォーマンスファンクション)・集団維持機能の「Maintenance function」(メンテナンスファンクション)の頭文字を取って名付けられたものです。1966年に社会心理学者の「三隅二不二(みすみじふじ)」によって提唱されました。
PM理論の「P」はパフォーマンスファンクションのことで、目標設定や計画立案を行い、指示・叱咤などで生産性を高める能力を指します。「M」はメンテナンスファンクションのことで、組織の人間関係を良好に保ち、連携力の強化や維持を行う能力です。PM理論には下記の4種類の型があります。
- 【PM型】成果を上げる力も組織をまとめる力も強い、理想的なリーダー像
- 【Pm型】成果を上げる力は強いが組織をまとめる力が弱い
- 【pM型】組織をまとめる力は強いが成果を上げる力が弱い
- 【pm型】成果を上げる力も組織をまとめる力も弱い
「PM理論」は近年国内に留まらず世界各国に広がり、国際的なリーダーシップ理論として定着し始めています。製造メーカー・小売業・サービス業・医療業界・官公庁などを対象に幅広く用いられていて、それぞれ高い評価を得ています。
リーダーシップに必要な3つの能力
ここでは、リーダーシップに必要な能力を3つ紹介します。リーダーシップの向上を目指している方は、自分に身についているかチェックしてみてください。
聞く力
リーダーシップには、メンバーを引っ張っていく力だけでなく、メンバーの話に真摯に耳を傾ける傾聴力も求められます。取引先や顧客、社内の役員、家族、友人などと良好なコミュニケーションを取るためには、傾聴力が欠かせません。傾聴力を高めるには、自分自身の思い込みや先入観を捨てて、相手の話を否定したり遮ったりせず、共感して寄り添う姿勢が大切です。
示す力
リーダーシップに必要な能力として、組織のビジョンや目標、あるべき姿などをメンバーに対して示す力が挙げられます。判断が難しい物事でメンバーや組織が迷ってしまった場面でも、ビジョンや目標、あるべき姿を分かりやすく、明確に示すことがリーダーシップを発揮するのに欠かせない能力です。示す力を高めるためには、日頃のコミュニケーションで目標やビジョン、あるべき姿をメンバーと共有しておくことを心がけましょう。
気付く力
気付く力とは、目標というゴールに対して「進んでいる方向は合っているのか?」「メンバーに異変はないか?」など、さまざまな視点で変化に気付く能力を指します。現代の情報や技術の進化・変化は早く、常に新しい情報をキャッチアップしていく姿勢が必要です。ビジネス環境やチームメンバーの変化に気付くためには、ひとつの考えに固執せずにさまざまな人の意見を受け入れ、多彩な価値観に触れる姿勢を持つようにすると良いでしょう。
代表的な6種類のリーダーシップを紹介
アメリカの心理学者ダニエル・ゴールドマンは、リーダーシップは6つの種類に分けられると提唱しました。ここでは、それぞれの具体的な内容について紹介します。
ビジョン型
ビジョン型のリーダーシップは企業や組織が目指す方向を示し、進むべき方向に導くタイプです。6種類のリーダーシップのうち、最も前向きと言われています。あくまでビジョンを示すだけで、目標達成までの具体的な方法はメンバーの裁量に委ねるため、メンバーの自立心やスキルアップにも期待ができます。
コーチ型
コーチ型のリーダーシップはメンバーと1対1の関係性を重視し、目標達成のために長所を伸ばし、短所をサポートしていくタイプです。メンバーと向き合い話をしながらリーダーシップを発揮していくため、良くも悪くも時間がかかります。そのため、短期的な目標やプロジェクトには不向きです。
関係重視型
関係型重視型のリーダーシップは、メンバー間の関係性や個人の感情を重視するタイプです。人間関係を良好な状態で保てるメリットはあるものの、責任の所在が曖昧になってしまうケースもあります。あくまでも目標達成を第一に意識することが大切です。
民主型
民主型のリーダーシップは、さまざまな人の意見や提案を受け入れて、組織の活動に反映させるタイプです。ワンマンにならず、メンバー全員で新しいアイデアを作り上げられますが、一方で結論までに時間がかかってしまう場合があります。
ペースセッター型
ペースセッター型のリーダーシップは、リーダー自身が具体的な手本を見せてメンバーのパフォーマンスを上げるタイプです。 成功イメージが湧きやすく、ビジョンの共有もしやすいですが、リーダーによってはひとりですべての仕事を背負ってしまうケースもあります。
強制型
強制型のリーダーシップを持つリーダーは、権力や圧力などを使って目標達成を目指します。 リーダーひとりの決断で行動に移すため、緊急時に強いことが特徴です。一方、反感を受けやすかったり、メンバーの自立心が育ちにくかったりといったデメリットがあります。
リーダーシップの鍛え方
リーダーシップは先天性のものではなく、鍛えることでリーダーシップを身に付けることが可能です。 本項目では、リーダーシップの鍛え方を4つ紹介します。
ポジティブ思考
リーダーシップを身につけるには、ポジティブ思考が重要です。ポジティブ思考が身に付くと短所ではなく長所を見ようとする意識が働き、「なぜできないのか?」ではなく、「どうしたらできるのか?」に変わっていきます。リーダーがポジティブ思考であることは、組織の成長を促すためにも大切です。
コミュニケーション
どのような組織でも、コミュニケーションが必要不可欠です。 ビジネスにおけるコミュニケーションとは、楽しく会話をすることだけではなく、意思疎通、価値観を伝えたり互いの気持ちを確認したりする行為を指します。コミュニケーションを積極的に取ると、組織が抱えている問題や課題、変化に気付きやすくなり、メンバーが自由に意見を出しやすい環境を作り出すことにも役立ちます。
問題意識・当事者意識
問題意識、当事者意識を常に持つことも、リーダーシップを鍛えるために役立ちます。 問題意識とは、常識や慣習といった当たり前を疑う姿勢のことで、当事者意識は他責の考えを持たず常に自分ごととして問題や課題を捉える意識です。リーダーとして責任を果たすためにも非常に重要な心構えとなります。
意思決定
リーダーシップの発揮には、迅速で的確な意思決定も必要です。 意思決定のスキルを高めるには、「判断基準を明確に持つ」「意思決定を先延ばしにしない」「安易に妥協をしない」などを心掛けると良いでしょう。 また、臨機応変な対応を求められます。
リーダーシップとマネジメントの関係性
リーダーシップとマネジメントは目指している方向は同じですが、2つの概念は異なります。
リーダーシップとは、メンバーや組織を目的地まで導く行動力や、未来や目標に対してのパワーが当てはまります。一方、マネジメントは目標までのアプローチを具体的にする地図をイメージすると分かりやすいです。
新規事業や部署の立ち上げなど、組織の初期段階ではメンバーを引っ張るリーダーシップが必要です。初期段階が落ち着き、中期から後期に入ると、初期段階で得た成功事例、失敗事例を元にしたマネジメントが必要になります。
また、リーダーシップは「未来」、マネジメントは「現在」という時間軸を持っています。最終的には、個人にとっても組織にとってもリーダーシップとマネジメントの両方が必要です。
まとめ
この記事では、リーダーシップの代表的な6つの種類や鍛える方法などを解説しました。リーダーシップは、リーダーだけが持っていれば良いものではなく、メンバー全員が身につけるべき能力のひとつです。 生まれつきのものではなく、鍛えることで身に付けられるため、記事を参考にしてぜひリーダーシップを習得してください。