自身の経験を振り返ることで、新たな気づきや変化につなげることをリフレクションといいます。リフレクションを意識して行動すると、具体的にどのような結果になるのか理解しきれていないという方も多いでしょう。この記事では、リフレクションの概要や求められる理由、実施方法について解説します。リフレクションで向上する能力や注意点についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
リフレクションとは
「内省」という意味で活用されるリフレクションは、自身の行動を客観的な目線で振り返ることを指します。自分自身の仕事から一度離れ、一歩引いた目線で仕事の成果や流れ、プロセスなどを振り返ります。振り返りの中で気づいたことを次の仕事に活かすことで、新たな成果につながりやすくなります。
また、リフレクションには、従業員の育成につなげられる企業目線でのメリットもあります。客観的に自分の行動を振り返る機会を設けることで、従業員が新たな視点で自分自身を見つめ直すことができます。
リフレクションが求められる理由
ビジネスシーンにおいてリフレクションが求められる理由は、導入することで企業全体の業務効率が向上するためです。従業員一人ひとりが自分自身を振り返ることで、リフレクション後に行動を変えようとする意識が芽生えます。自分だけで完結する反省では周りに影響を与えることはありませんが、リフレクションを正しく行うことで従業員全体で「自分自身を変えよう」と意識する風潮が生まれます。
従業員全体の意識が徐々に変わっていくことで、結果的に企業全体の業務効率化につながるでしょう。
人材育成とリフレクションの関係
人材育成におけるリフレクションは、企業主導ではなく従業員自身が意識しなければなりません。リフレクションの重要性や効果を説明し、従業員が能動的に行える仕組みを作りましょう。仮に失敗したことがあったとしても悲観せず、失敗の原因や対策を冷静に考えることで成長につながります。
リフレクションを通じて「次の行動に向けた対策」を考案したら、その対策をもとに育成担当者と日々の業務を進めていきましょう。従業員自身の自発性を育むためにも、まずは従業員が自由にリフレクションを行える環境を作ることが大切です。
反省・フィードバックとの違い
内省を意味するリフレクションですが、反省やフィードバックとは意味が異なります。
反省との違いは、振り返りの対象が「失敗」に向けたものであるかどうかです。失敗したことに対して、次回から同じようなことはしないと考えることが反省です。一方でリフレクションは、実際に失敗していなくても自身の行動や価値観を振り返ります。
また、リフレクションと混同しやすい単語であるフィードバックとの違いは、意見をもらう「相手」がいるかどうかです。リフレクションは自分自身の行動や考えを客観的に振り返り、次の行動につなげます。対してフィードバックは、上司や育成担当者から自身の行動や結果に対する「改善点」を伝えられることが特徴です。
リフレクションを実施する方法
リフレクションは、以下の方法による実施が一般的です。
- 体験のピックアップ
- プロセスの分解
- プロセスごとの振り返り
- プロセスの再構築
それぞれのステップについて簡単に解説します。
1:体験のピックアップ
リフレクションを実施する際は、内省の対象となる出来事をひとつに絞ってください。漠然とした内省では、効果的な振り返りが難しくなります。ひとつの出来事に絞ってリフレクションを実施したら、その後に新たな出来事をピックアップするというサイクルの繰り返しがおすすめです。
2:プロセスの分解
内省の対象となる出来事をひとつに絞ったら、次はその結果が起きるまでのプロセスを段階ごとに分解してみましょう。いくつかの段階に出来事を分解しておけば、それぞれの要素ごとに客観的な視点でリフレクションを実施しやすくなります。
3:プロセスごとの振り返り
分解したプロセスごとに客観的な振り返りを実践することで、改善すべき点と伸ばすべき点が明確になります。「ここの部分はよくなかったけど、ここはよくできた」など、結果につながるまでのプロセスを客観的に分析してください。
4:プロセスの再構築
プロセスごとの振り返りを終えたあとは、プロセスを再構築し、実際の行動に移してください。客観的な振り返りを実施することで、今までの自分では気づけなかった新たな行動規範が生まれるかもしれません。
リフレクションで重要な3つの「振り返り」
リフレクションで振り返りを実施する際は、「出来事」「他者(環境)」「自分の行動」の3つに着目することが大切です。
出来事
リフレクションにおいて重要な要素が、出来事の絞り込みです。主観性や感情をできる限り排除し、成功・失敗に関わらず出来事のみを絞り込めるように訓練しましょう。「なぜこうなったのか」と結果を分析し、次回に活かせる内省となるように意識してください。
他者(環境)
自分自身の行動だけでなく、他者や環境による影響も加味して振り返ることが大切です。「あの人がこうしてくれたから、この結果が出た」「設備が十分ではないために結果が出なかった」などの視点から振り返ることも必要です。
自分の行動
リフレクションは、自分自身の行動や思考を振り返ることがメインの施策です。出来事や他者の影響について振り返りながら、「そのうえで自分がどうすべきだったか」を考えましょう。自分自身に対するリフレクションを意識することで、自分以外の原因で不備があった場合にも対処しやすくなります。
リフレクションで向上する能力は?
リフレクションを実施することで、生産性・自立性・リーダーシップの能力が向上します。
生産性
リフレクションにより自身の行動や思考が変化することで、業務全体の改善につながります。ミスや失敗に対する意識も高まるため、成長スピードも向上するでしょう。従業員全体でリフレクションの重要性を理解できれば、企業としての成長や生産性向上につながります。
自立性
自分自身を客観的に振り返ることで、自立性を養う意識が芽生えます。フィードバックとは異なり、上司ではなく自分から動くことがリフレクションの特徴です。「自分自身を変えることで企業を変える」といった意識が芽生えるため、企業全体の成長にもつながるでしょう。
リーダーシップ
リフレクションができる従業員の多くは、客観的な思考力と全体を見渡す視野が備わっています。これらの能力はチームを牽引するために重要であり、リーダーとなる人材に求められています。リフレクションを通じてリーダーシップを養うことで、チーム全体でリフレクションの質を上げることも可能です。
リフレクションにおける注意点
リフレクションは、あくまで他者ではなく自身に目を向けなければなりません。また、ミスばかりに固執せず、良かった点も併せて振り返ることが大切です。
自身に視点を向けて行う
他者や環境における影響は多少あるものの、リフレクションは基本的に自分自身の振り返りであることを覚えておきましょう。仮に失敗の原因が他者や環境にあったとしても「自分だったらこうする」「自分がこうしておけば失敗しなかった」と、自分視点に置き換えて振り返ることが重要です。
ミスばかりに固執しない
ミスに固執してしまうと、リフレクションではなく「反省」になってしまいます。良いこと・悪いことどちらも客観的な視点で振り返り、次回へ活かすことが大切です。あくまでも「内省」であることを忘れてはいけません。
まとめ
自分自身の行動や思考を客観的に振り返ることが、リフレクションです。人材育成の観点から、ビジネスシーンにおいて多くの企業に注目されています。リフレクションを実施することで、従業員の自立性や企業全体の生産性の向上が期待できます。また、リーダーシップが身につくこともメリットです。リフレクションは、体験のピックアップから、プロセスの分解・振り返り・再構築の手順で実施します。振り返りにおけるポイントも理解したうえで、自身に適したリフレクションを実施しましょう。