期限までに目標を達成するためには、知識やスキルを活用し成果を出すだけでなく、モチベーションの維持も重要です。このモチベーション維持に役立つのが目標管理シートです。本記事では、目標管理シートの内容や活用するメリット、失敗例、業種別の記載例などについて詳しく解説します。
目標管理シートとは
目標管理シートとは、目標や成果などを記録するシートのことです。アメリカの経営学者であるピーター・F・ドラッガーが確立した目標管理制度に基づいて実施します。1990年代後半から日本でも、成果主義の企業を中心に導入が進んでいます。
目標管理シートの項目
目標管理シートの記載項目はシンプルで、特別なテンプレートを使用しなくても容易に作成できます。目標管理シートの項目とそれぞれの役割、ポイントについて詳しく見ていきましょう。
目標
達成したい目標を具体的に記載します。誰にでも同じように伝えるために、数値を用いることがポイントです。例えば、「前年よりも高い売上を達成」といった抽象的な表現よりも「前年比150%目標」の方がわかりやすく、誰もが共通の認識を持つことができます。
達成期日
目標をいつまでに達成したいのかを記載します。長すぎる目標はモチベーションを維持することが難しく、短すぎる目標はチームメンバーに焦りを与えることで業務の質の低下を招きます。目標の内容や種類に応じて、長すぎず短すぎない目標を設定しましょう。
取り組みの内容
具体的に、どのように行動して目標を達成するのかを記載します。「〇日までに100万円の売上を達成する」といった具体的な期限と数値を用いて記述すると効果的です。取り組みの内容が現実的かつ目標に結びつくかどうか入念にチェックしましょう。
目標管理シートを導入するメリット
目標管理シートを作成しなくても業務の遂行自体は可能です。自己のモチベーションを維持し、目標達成に自発的に行動できる人もいます。とはいえ、目標管理シートを作成することには、次のようなメリットがあります。
会社の方向性とのずれが起こりにくくなる
会社が従業員に求める目標が明確になり、従業員と会社の間で目標にずれが起こりにくくなります。迷いがある状況で業務を遂行した場合、本来のスキルを十分に発揮できないこともあるでしょう。従業員のモチベーションアップや能力の発揮を実現するためにも、目標管理シートは作成した方がよいと考えられます。
悩みや疑問などを共有しやすくなる
目標管理シートには備考欄や質問欄を設け、そこに悩みや疑問を記載して上司やメンバーに相談するという手段も取り入れることができます。口頭で伝えるよりも気軽に質問できるうえに、質問された側も時間に余裕をもって回答できます。
上司が部下にアドバイスしやすくなる
目標管理シートには具体的な目標や目標達成の指標が明記されています。上司は部下の目標を素早く把握できるため、より具体的で正確なアドバイスが可能になります。また、部下が抱えている課題についても迅速に理解できるようになります。
目標管理シートの失敗例
目標管理シートを作成したものの、形骸化したり逆効果になったりするケースは少なくありません。ここで紹介する目標管理シートの失敗例を参考に、意味のある目標管理シートを作成しましょう。
目標が高すぎる・多すぎる
達成が困難な目標を設定すると、モチベーションの低下やストレスの増加につながる場合があります。また、目標が多すぎる場合は、どの目標に注力すべきか判断できなくなったりリソースが不足したりするでしょう。
書くことが目的になってしまう
目標管理シートを使用する目的は、目標を達成しやすくすることです。しかし、従業員が目標管理シートを単なる書類作成やルーティン業務として捉えた場合、シートの記入が目的になってしまいます。
目標管理シートの業種別の記載例
目標管理シートに記載する内容は、業種に応じて変えることが大切です。目標管理シートに設定する目標や取り組みの内容について、業種別に記載例を紹介します。
営業職
営業職は、売上目標を月間や四半期、年間などに分けて金額で記載します。また、新規顧客の獲得数やアプローチした数に対する獲得割合も目標としましょう。
例えば、「月間目標は前年比120%(売上金額300万円)」「100人にアプローチして新規顧客を10人獲得する」などと記載します。
サービス職
サービス職は、顧客満足度アンケートの結果を前年よりも良い結果にする、1日や月間、半年などでの売上などを目標とします。例えば、「顧客満足度80%を今年は90%を目標に」「1日に10人接客して客単価5,000円を目指す」と記載します。
事務職
事務職は目標数値を設定することが難しいため、目標管理シートが形骸化しがちです。「発注でミスをゼロにする」「毎月マニュアルを見直してトラブルをゼロにする」など、マイナスの事象を減らすことを目標にしましょう。
マーケティング職
マーケティング職は、企画した商品やサービスの売上や宣伝効果などに着目しましょう。例えば、「企画した商品の初月売上1,000万円達成」「プレスリリース5件配信で問い合わせ10件獲得」と記載します。
クリエイティブ職
クリエイティブ職は、売上目標の設定が難しいため、制作数や作業効率などに主軸を置くとよいでしょう。例えば、「記事を1日3本作成し、それぞれの記事で問い合わせを1件ずつ獲得する」「デザインの修正を1案件につき2回までに抑えて業務効率を30%高める」と記載します。
管理職
管理職は、チームや部署全体の売上や目標達成度などを追い求める職種です。例えば、「チームの売上3,000万円達成」「10名中8名が個人売上目標を達成」など、マネジメントに関わる項目を設定します。
目標管理シートの正しい運用方法
目標管理シートの効果を得るためには、事前準備が必要です。メンバー全員が共通意識を持てるように準備するとともに、目標の適切な設定方法を共有することで、目標管理シートを正しく運用できるようになるでしょう。目標管理シートを正しく運用するためのポイントについて詳しく解説します。
目的や記入方法などを共有する
目標管理シートを導入する目的を明確にしましょう。目標達成の可視化、進捗管理、タスクの整理、チーム間のコミュニケーション促進などの目的をメンバーに共有し、理解と共感を得ることが大切です。
また、目標管理シートの記入方法も共有しましょう。どの項目をどのように記入するのか、更新頻度、必要な情報の詳細などを説明します。また、テンプレートやサンプルを用意するのも効果的です。
目標は3つ程度に絞り込む
目標が多すぎると、目標達成のために行動するための時間やリソースが分散され、どれも達成できずに終わるリスクが高まります。
目標を3つに絞ることで、優先順位をつけたうえで目標達成に向けて効率的に業務を遂行できるようになります。
SMARTの法則に沿って目標を設定する
効果的な目標設定方法として、SMARTの法則を活用しましょう。SMARTの法則は、下記5つのフレームワークを示すものです。
- Specific(具体的である)
- Measurable(計測できる)
- Achievable(現実的に達成できる)
- Relevant(会社の目標やビジョンと一致している)
- Time-bound(期限が定められている)
例えば、「月(T)の売上を前年比120%(S・M)を達成(A・R)」は、SMARTの法則を満たしています。
まとめ
目標管理シートを効果的に運用するためには、目的や記入方法をメンバーに共有して理解を得ることが大切です。高すぎる目標をいくつも設定すると、優先順位やリソースの配分を決められなくなり、どの目標も達成できない恐れがあります。今回、解説した内容を参考に、目標管理シートを適切に運用しましょう。