企業の広告や求人欄などで見かける「創業」や「設立」。どちらも混同して使われることの多い表現ですが、実際は別の用語です。この記事では、創業と設立の違いやそれぞれの定義について解説します。
創業とは
創業とは「新しい事業を始めること」を意味する言葉です。個人・法人を問わないため、起業した場合だけでなく、個人事業主として事業をスタートさせる際にも「創業」が使われます。また、会社の登記前に行った仕入れや不動産取得など、開業準備行為も創業に該当します。
設立とは
設立とは「商業・法人を登記し、会社などの組織を新たに作ること」です。登記するためには、定款の作成・会社財産の形成・取締役の選定・公証人の認証といった多くの段階を経る必要があります。会社だけでなく、学校やNPO法人なども登記を行えば「設立した」とみなされます。
会社設立日の決め方
会社設立日は登記が行われた日になるため、一般的には法務局に申請書類を提出した日が該当します。ただし、書類に不備があるなどして差し戻された場合はこの通りではありません。あくまでも、法務局に書類が受理された日が「会社設立日」です。ただし、法務局が営業していない土日や祝日に申請はできないため注意してください。
創業と設立の違いは?
ここでは、創業と設立の具体的な違いについて解説します。創業と設立が混同しないよう、ぜひ参考にしてください。
初めて事業を開始したかどうか
創業と設立の違いは「その法人または個人が初めて事業を開始したかどうか」です。会社が登記申請を行って受理されていたとしても、まだ事業を開始していなければ「設立」していても「創業した」ことにはなりません。
登記しているかどうか
創業と設立の違いには「登記が行われたかどうか」も挙げられます。会社が事業を開始して大きな利益を上げていたとしても、まだ登記されていなければ「事業を創業」していても「会社を設立した」ことにはなりません。
創業年と設立年に違いが生まれる理由
創業年と設立年に違いが生まれるのは「事業を始めた時期」と「会社として登記された時期」が異なることが原因です。たとえば、副業や個人事業主としてビジネスをスタートし、1年以上経ってから法人化した場合、創業年の方が早くなります。ちなみに会社で周年記念を祝う際は、日付がもっとも古い創業年月日を基準にする場合が一般的です。
実際の企業における例
実際の企業においても、創業年と設立年に違いが生まれることがあります。自動車メーカーとして世界的に有名な本田技研工業は、1946年に本田技術研究所として創業したあと、1948年に株式会社として設立されました。また、外食チェーン店を運営する大戸屋ホールディングスは、1958年に大戸屋食堂として創業し、その後1963年に会社として登記を行っています。
創業・設立と混同しやすい言葉
ここでは、創業・設立以外にも混同しやすい言葉を解説しています。意味をしっかり理解したうえで、それぞれの言葉を適切に使いましょう。
創立
創立は「組織を0から初めて立ち上げること」を指します。会社のほかにも、学校・NPO法人・クラブ活動を作った際に使える言葉です。ただし、あくまでも「組織を作ること」を意味するため、個人で活動を開始した場合は「創立」には当てはまりません。
起業
起業は「新しく事業を起こすこと」を指します。言葉の意味としては「創業」とほぼ同義です。そのため、2つの言葉を入れ替えてもさほど違和感はありません。ただし、創業は「事業をスタートしたあと」を指すのに対し、起業はこれから事業を始める際に使われる傾向にあります。
開業
開業とは「新しい事業を始めること」を意味する言葉で、起業と同じく「創業」とほぼ同義です。ただし、創業は組織を連想させるのに対し、開業は個人で事業を始める際に使われる傾向にあります。また、個人事業主が事業を開始する際は、税務署に「開業届」の提出が必要です。
独立
独立は「他者の束縛や支配を受けない状態になり、自分の力で活動していくこと」を指します。ビジネスの場合、退職して独り立ちする場合などが「独立」に当てはまります。ただし、他の言葉とは異なり「事業を始める」「組織を作る」といった意味合いは持っていません。
まとめ
この記事では、よく混同されがちな「創業」と「設立」の違いについて解説しました。会社が誕生する際に創業と設立が同時に行われるとは限らず、タイミングによっては数年の差が生まれることがあります。それぞれ必要に応じて使い分けることが大切です。