ビジネスシーンにおいて、階級や階層を示す「ヒエラルキー」という言葉を耳にします。しかし、ヒエラルキーの正確な意味を理解しきれていない方も多いのではないでしょうか。
今回は、ヒエラルキーの意味や使用される場面、類義語や対義語を紹介します。また、ヒエラルキーを使用した用語やそれぞれの意味、ヒエラルキー型組織についても解説します。ビジネスシーンで役立つ知識なので、ぜひ本記事の内容を参考にヒエラルキーへの理解を深めてください。
ヒエラルキーとは
ヒエラルキーとは、階級・階層を示す言葉です。ビジネスにおいては、ピラミッド型の「階級組織構造」を指します。一般社員から社長まで、役職が上がるごとにピラミッドの頂上に近づいていく図式が、ヒエラルキーの一般的な例です。
ヒエラルキー構造と聞くと、専門的な概念のように思えるかもしれません。しかし、実際は企業としての基本構造を図式化した概念です。むしろ複雑化する企業構造を簡略化できるものであるため、ヒエラルキーの概念・構造は覚えておきましょう。
ヒエラルキーが使われる場面
ヒエラルキーは、先ほども触れた「組織図」を示すための構造として多く使用されます。また、デザインにおける重要な要素や、看護におけるリスクマネジメントを示す際にも使用されます。図式化するかしないかだけで、ヒエラルキーが存在しない企業はありません。そのため、ヒエラルキーの概念を覚えておくことで、企業の組織構造を把握しやすくなります。
ヒエラルキーの類義語・対義語
ヒエラルキーと似た言葉に挙げられるのが、カーストです。ヒエラルキーが現状の構造を示すものであるのに対し、インド特有の文化であるカーストには差別的要素が含まれています。日本では子どもたちの学校生活で「スクールカースト」という言葉を耳にします。成績、運動能力、容姿などで個人やグループに優劣を付けるもので、差別的なニュアンスがあります。なおこの言葉は和製英語なので、海外では通じません。
また、ヒエラルキーと反対の意味を持つ言葉の代表例が、ホラクラシーです。ホラクラシーとは、役職・階級のない組織形態を示す言葉です。ヒエラルキーが組織の階級を示すものであることから、両者は真逆の意味を持つことがわかります。
ヒエラルキーを使用した用語の意味を解説
ここでは「ヒエラルキー」が含まれた用語の意味を解説します。
ヒエラルキー構造
ヒエラルキー構造とは、階層構造そのものを示す言葉です。ヒエラルキーを使用した用語の中でもっとも一般的で、ヒエラルキーと同じ意味合いで使われます。
ビジネスヒエラルキー
一般的なヒエラルキーの概念を前提に、経営者や役員、一般社員などの構造を示す言葉がビジネスヒエラルキーです。いわゆる「組織図」と同様のものであり、企業内でのヒエラルキーを示す際に用いられるものをビジネスヒエラルキーと総称します。
ヒエラルキーコントロール
ヒエラルキーコントロールとは、リスクマネジメントを示す表現です。リスク軽減につながる対策を、効果の高い順に設定していくことが一般的です。ヒエラルキーコントロールは、院内感染や薬剤によるリスクのある看護業界などで使用されます。
ビジュアルヒエラルキー
ビジュアルヒエラルキーとは、デザイン業界で主に使用される表現です。情報の位置やフォントの配色、画像によるビジュアルイメージで、創作物の意図をわかりやすくするために使用されます。
ヒエラルキー型組織とは
ピラミッド状の階層を持つ組織のことを、ヒエラルキー型組織といいます。冒頭でも説明した、一般社員から社長までの階級などを示す場合に使用されます。序列が明確になっている組織で使用されることが一般的です。ここでは、ヒエラルキー型組織のメリットやデメリット、選ばれる理由について解説します。
ヒエラルキー型組織のメリット・デメリット
ヒエラルキー型組織はトップダウン式の組織を示すため、責任の所在を把握しやすくなります。いわゆる「年功序列」の企業と相性がよく、組織図を見るだけで役職がわかり、上層部・下層部を簡単に判断できます。また、ヒエラルキー型組織は、階層ごとのチーム意識が強くなり、結束力が高まりやすい点もメリットです。チームが結託して業務を行うことで、階層ごとの成果が上がりやすくなります。ヒエラルキー型組織では役割分担も明確であるため、階層ごとにやるべき業務を把握しやすい点もメリットです。
一方でヒエラルキー型組織には、階層内の仕事に特化しやすいデメリットがあります。他の階層でやるべき仕事に触れることがほとんどないため、企業全体で業務レベルの幅が狭くなってしまいます。また、上層部からの決定が降りにくかったり、階層ごとに中間管理職が必要だったりする点も、ヒエラルキー型組織のデメリットです。
ヒエラルキー型組織が選ばれる理由
ヒエラルキー型組織が選ばれる理由には、役職ごとに役割が明確になっている企業が多いためです。日本企業の多くは、従来の年功序列制度に従ったピラミッド型の組織図を取り入れています。あえてヒエラルキー型組織を選んでいる企業は少なくなっているものの、これまでの風習から自然にヒエラルキー型組織となっている企業がほとんどです。階層ごとの役割が明確になりやすいため、業務や人材の管理が困難な大企業などでヒエラルキー型組織が選ばれています。
ヒエラルキー型組織と対をなす「ホラクラシー型組織」とは
「ホラクラシー型組織」とは、役職や階級を設定しない組織のことです。ピラミッド型の組織構造を設定せず、フラットな組織形態で運営している組織を指します。
ホラクラシー型組織は、従業員がフラットな目線で仕事をします。そのため、自発性が育ちやすく、上下関係のストレスを感じにくいのがメリットです。また意思決定も早く、情報が共有されやすいのもホラクラシー型組織の特徴です。
一方でホラクラシー型組織は「上司」が存在しないため、従業員の管理が困難になります。責任の所在も曖昧になりやすいため、従業員がいかに自発性と責任感を意識するかが重要視されます。また、人によってはフラットな関係性に慣れず、居心地の悪さを感じる可能性も否定できません。
転職先がホラクラシー型組織の特徴に当てはまる場合は、ここで紹介したメリット・デメリットを把握したうえで入社を検討すべきです。
ヒエラルキー型組織は新しい働き方に適した形態なのか?
昨今多くの企業が取り入れているリモートワークやオンラインでの業務と、ヒエラルキー型組織は相性がよくありません。ヒエラルキー型組織は、役職ごとの仕事が定まっており、いわゆる年功序列の形式に近い組織です。従来の形式に近い運営形態であることから、業務の多くが出社を前提としているものがほとんどです。そのため、フラットな目線で自発的に仕事ができるリモートワークとは相性がよくないといえます。
リモートワークやオンライン業務は、どちらかというとホラクラシー型組織に向いている業務形態です。新しい働き方を積極的に取り入れている転職先を決める際にも、ヒエラルキー型組織とホラクラシー型組織の違いを覚えておく必要があります。
まとめ
今回は、ヒエラルキーがもつ意味や使用される場面、類義語や対義語について解説しました。階層や役職を示すヒエラルキーは、従来の年功序列制度を取り入れる企業に多く見られる表現です。新しい働き方への対応が困難なことから、あえて現代でヒエラルキー型組織を選んで転職する人は少ないといえます。とはいえ、ヒエラルキー型組織ならではのメリットも当然存在します。今回紹介した内容が、ホラクラシー型組織との違いもあわせて、ヒエラルキー型組織についての理解を深めるきっかけになれば幸いです。