近年、クラウドを社内システムに導入する企業が増えています。一方、オンプレミスはクラウドの対になるものとして生まれた言葉です。しかし、実際にどのような意味を持っているのか理解しきれていない方も多いのではないでしょうか。この記事ではオンプレミスの意味やクラウドとの違い、活用するメリットについて解説します。社内システムを担当している方は、ぜひ参考にしてください。
オンプレミスとは
オンプレミスとは、ハードウェアやソフトウェアなどの情報システムを自社で管理・運用することです。オンプレミスの「プレミス(premise)」には英語で「店内」「構内」といった意味があり、「On the premise」で「店内で」という意味になります。オンプレミスは、IT環境の構築に必要なサーバーや通信回線などを社内施設に設置します。もともと「オンプレミス」という言葉は存在していませんでした。しかし、クラウドが世間に広まったことをきっかけに、クラウドと区別するために誕生しました。
オンプレミスはどのくらい利用されている?
オンプレミスの利用状況は、対となるクラウドサービスの利用率を調査することで判断できます。令和3年6月に総務省から発表された「令和2年通信利用動向調査の結果」によると、クラウドサービスを利用している企業は平成30年の時点で58.3%でした。しかし、令和2年には68.5%まで上昇しています。
この結果から、オンプレミスを採用している企業が年々減少していることは明らかです。しかし「クラウドサービスを利用していないし、今後利用する予定もない」と回答している企業も一定数存在するため、企業からオンプレミスが消滅することはないと考えられます。
オンプレミスのメリット・デメリット
ここでは、オンプレミスのメリットとデメリットについて解説します。オンプレミスの採用を検討している方は、ぜひチェックしてください。
オンプレミスのメリット
オンプレミスのメリットは、必要な機器やシステムの構築・運用をすべて自社で行うため、自由にカスタマイズできる点です。すでに使用している社内システムと連携・統合しやすく、自社に合った環境を構築できます。また、自社のネットワーク内で完結するため、セキュリティに優れている点もオンプレミスの強みです。
オンプレミスのデメリット
オンプレミスのデメリットは、導入までに時間とコストがかかる点です。導入に関する作業をすべて自社で行わなければならず、実際に運用できるようになるまで数ヵ月を要する場合があります。また、サーバーなどの機器は初期費用が高額になりやすく、保守費用や光熱費などのランニングコストが発生し続ける点も注意が必要です。
オンプレミスとクラウドの違いを比較
ここでは、オンプレミスとクラウドの違いを解説します。クラウドは、オンプレミスと対になるサービスです。それぞれの違いを理解することで、オンプレミスを採用するかどうか判断しやすくなるでしょう。
そもそもクラウドとは
クラウドとは、インターネットを通じてオンライン上で提供されているサービスを利用する仕組みです。「クラウド(cloud)」は英語で「雲」という意味で、Google社の元CEOであるエリック・シュミット氏がインターネット上の場所を「cloud」と表現したことが由来とされています。システムを自社で管理する必要がないため導入のハードルが低く、近年多くの企業で普及しています。
初期費用
初期費用の面では、オンプレミスよりもクラウドの方が圧倒的に安価です。オンプレミスではサーバーや通信機器などを自社で用意しなければならず、どうしても初期費用が高額になります。一方、クラウドでは社内にインフラ環境を整える必要がないため、初期費用を10万円以下に抑えることも可能です。
コスト
オンプレミスとクラウドは、費用の種類が異なります。オンプレミスでは機器の保守運用費用や人件費がかかり、クラウドでは月々のサービス利用料がかかります。一般的には、クラウドの方が低コストで導入できます。しかし、同じシステムを長期間使用し続ける場合や大規模なシステムを運用している場合、オンプレミスの方が費用を抑えられるケースもあります。
運用面
既存システムと連携する場合、自社のネットワークを使用しているオンプレミスの方が環境構築は容易です。反対に、クラウドではインターネットを経由してサービスを提供しているため、自社システムとの連携が難しいケースもあります。一方、保存容量や機能を追加する場合は、クラウドの方が容易です。オンプレミスでも拡張はできるものの、サーバーの買い替えに費用や手間がかかります。
カスタマイズ
オンプレミスはカスタマイズ性が高く、自社に合わせてシステムを構築できる点が強みです。一方、クラウドは決まったプランやオプションを利用することになるため、カスタマイズが限定的になります。ただしクラウドはサービスの種類が多いため、自社に適したものを選びやすい特徴があります。
セキュリティ
社内ネットワークのみで構築されるオンプレミスは、外部からのリスクを軽減できるため安全性が高いといわれています。また、自社のセキュリティポリシーに合ったセキュリティ対策を実施できることも強みです。一方クラウドでは、クラウドサービス事業者がデータを保存しており、広域回線を介して自社と通信します。そのため、機密情報の盗難や不正アクセスを懸念する方も少なくありません。しかし、クラウドは年々セキュリティが強化されており、トラブルが起こる可能性も低くなっています。
緊急時の対応
システム障害などが発生した際、オンプレミスの場合は自社で対応する必要があります。軽度な障害ならすみやかに対応できます。しかし、障害の度合いや技術者のレベルによっては、解決までに時間がかかってしまうこともあるでしょう。一方クラウドの場合、緊急時の対応はクラウドサービス事業者が行います。自社で対応する必要がないため、オンプレミスよりも手間がかかりません。
オンプレミスが向いているケースは?
オンプレミスは、システムの運用を自社のネットワーク内で完結できる点や、自由にカスタマイズしやすい点が特徴です。そのため、既存の社内システムと密接に連携したい場合や、機密性の高い情報を管理する場合に適しています。また、インターネットに接続せずにシステムを使用したい場合にもおすすめです。オンプレミスは、現場業務支援システムが導入されている製造業の工場や、顧客の個人情報を管理する企業・官庁などで使用されています。
まとめ
この記事では、オンプレミスについて解説しました。導入・運用の手軽さや社外からもアクセスできる利便性により、クラウドの採用率が年々増加しています。しかし、クラウドの魅力を理解したうえで、あえてオンプレミスを採用している企業も少なくありません。流行りに流されることなく、自社の状況に合わせて適切に選択することが大切です。