ダイバーシティとは?推進される背景や取り組む企業の特徴を解説

2022年9月15日

2024年2月29日

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Izul広報チーム

Izul広報チーム

近年、働き方改革の柱のひとつとして推進されている「ダイバーシティ」は、グローバル化に対応しつつ持続的な成長につながるとして注目され、日本企業の多くが導入し始めています。ただし、ダイバーシティとはどのような概念なのか、よく分かっていないという人も多いかもしれません。この記事では、ダイバーシティの概要と日本企業で推進されている背景、取り組んでいる企業の特徴について解説します。

ダイバーシティとは

「ダイバーシティ(Diversity)」とは、多様性という意味の英語で、集団に年代や性別、宗教、人種などさまざまな属性の人が集まった状態を指します。ビジネスシーンでは元来、雇用機会の均等や人権問題などを説明する際に使用されていました。現在では、多様な人材を登用して生産性・競争力を向上させる経営戦略という位置付けとして広く使われています。

ダイバーシティ経営との違い

ダイバーシティ経営とは、さまざまな違いを持つ個々を「多様な人材」として受容し、一人ひとりの能力が最大限に発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し価値創造につなげていく経営のことをいいます。両者に大きな違いはないものの、ダイバーシティは「多様な人材が集まっている状態」、ダイバーシティ経営は「人材を活かすための戦略」として線引きできるでしょう。

ダイバーシティ・インクルージョンとの違い

ダイバーシティ・インクルージョン(Diversity & Inclusion)とは、多種多様な属性を持つ人材がお互いを認め合い、切磋琢磨しながら各々の実力を発揮できる職場の在り方を指します。
「インクルージョン」は、包括や一体性などという意味があり、思想や考え方など個々の特性が、しっかりと活用された企業活動が行われている状態のことです。体面的にダイバーシティが実現していても個々の持ち味を引き出していなければ、多様性を活用できている状態とは呼べません。
したがって、ダイバーシティ・インクルージョンは、ダイバーシティを発展させ人材を十分活用できている状態だといえるでしょう。

ダイバーシティが日本企業で推進される背景

ダイバーシティは多くの日本企業で推進されています。推進されている背景にはいくつかの理由があり、いずれも企業にとって大きな課題となるものです。ここでは、それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

少子高齢化による労働人口の減少

日本は少子高齢化が進んだことで労働人口が減少しており、男性中心・フルタイムという従来の勤務体制・労働条件では人材の確保が難しくなっています。そこで注目されているのが、ダイバーシティです。ダイバーシティが実現できれば、女性や高齢者、外国人、障害者など多種多様な人材を登用できるため、人材の母集団を増やして人手不足の解消につなげることができます。

働き方やキャリアに対する考え方の多様化

現代は働き方やキャリアに対する考え方が多様化しており、やりたい仕事へ雇用形態にこだわらず転職することが一般的です。そのため、従来の採用基準のままでは人材獲得競争で他社に勝てなくなってしまうケースが発生します。採用力を高めるためには多様化する人材のニーズに応えていかなければならず、そのために必要不可欠とされていることがダイバーシティです。

グローバル化への対応

グローバル化の進展によって市場環境の変化スピードは増し、国外企業との競争は激化しています。こうした市場環境の変化に対応するために、柔軟性と迅速さが欠かせません。そのため、従来の日本企業の経営スタイルでは対応が難しくなってきています。今後、日本企業が持続的に成長するためには柔軟性と迅速さ、イノベーションが必須であり、このような背景もあってダイバーシティに注目が集まっています。

ダイバーシティに取り組む企業の特徴

前述の通り、日本企業が持続的に成長していくためにはダイバーシティが欠かせません。ただし、すべての企業が取り組んでいるわけではありません。ここでは、ダイバーシティに対して積極的な企業の特徴についてみていきましょう。

従業員が働きやすい労働環境を整えている

人手不足への対策として取り組まれているのが、従業員が働きやすい労働環境の整備です。出産や育児などのライフイベントへの対応や多様な勤務体系など、柔軟な体制の整備が行われています。代表的な例は次の通りです。

  • 育児休業・介護休業の充実
  • 3歳未満の子どもを持つ労働者が活用できる所定労働時間の短縮措置
  • フレックス制・裁量労働制・リモートワークの導入

また、近年注目を集めているのがリモートワークの導入です。会社に出勤する従来の働き方では、従業員の配偶者に転勤があったり家族の介護が発生したりすると、退職を余儀なくされるケースもありました。リモートワークであれば遠隔地からでも仕事ができるため、企業側は退職による人材の流出を回避できます。

顧客や市場からの評価が高い

多種多様な人材の登用は顧客や市場からの高い評価を得られ、企業の信用向上につながります。企業の信用度を高めることは従業員の意識を向上させ、不正やハラスメントの発生を未然に防ぐことが可能です。また、従業員の満足度向上にもつながるため、離職率の低下も期待できます。

優秀な人材が集まっている

ダイバーシティ経営は採用する人材の幅を広げられるため、必然的に優秀な人材を集めやすくなります。特に、1981〜1995年頃に誕生したミレニアル世代は社会課題への関心が高く、企業の多様性などを重視する傾向にあります。ダイバーシティの実践は、ミレニアル世代を筆頭に若い人材へのアプローチに効果を発揮するでしょう。

扱うビジネスの幅が広い

多様な価値観を持った人材が集まることで、新しい顧客のニーズを捉えやすくなります。また、市場におけるニーズの変化にも迅速に対応できるようになり、ビジネスの幅を広げることができるでしょう。ビジネスの幅が広がればさまざまな角度で事業に取り組めるため、企業の持続的な成長にも大きく寄与します。

変化に対する順応力が高い

前述の通り、グローバル化によって市場の変化スピードは加速しています。企業が持続的に成長するには、日々変化する市場に順応するほかありません。内閣府が行った調査データによれば、性別や国籍などの多様さと業績には相関性があるということが判明しています。ダイバーシティへの取り組みを通じて順応力を高め、市場を先読みできる企業が競争を勝ち抜くと予想されます。

ダイバーシティに取り組む企業の実例

実際にダイバーシティに取り組む企業は、どのような施策を実行しているのでしょうか。大手企業の取り組み事例を見ながら、ダイバーシティ施策の具体例や効果を確認してみましょう。

株式会社リクルートホールディングス

株式会社リクルートホールディングスは、「個の尊重」を意識したダイバーシティの取り組みを実施しています。性別や人種に左右されない働き方を推進し、従業員一人ひとりが多様な働き方を実現できる環境を整えています。
また、グループ全体の約5割が女性を占めるリクルートでは、女性従業員の活躍支援やロールモデル構築にも力を入れています。純粋な採用比率だけではなく、「各役職における女性の管理職比率」の改善にも注力しているのが特徴です。

【具体的な取り組み事例】

■Career Cafe 28
女性向けのキャリア開発やマネジメント研究を行う大規模なイベント。ライフイベントが多い女性従業員のキャリア形成に着目し、自身の市場価値を高めて働けるような考え方やロールモデルを共有しています。2012年から2020年までに累計1,000名以上が参加した実績があります。

■エイジョCafe
2018年度からスタートした営業部門向けのワークショップ。女性管理職のパネルディスカッションを中心とした講座で、女性課長などのロールモデルを共有しています。より身近で具体的な女性の働き方事例を学べるため、キャリア形成に大きく役立っています。

■育児と仕事の両立支援
事業所内保育園「And’s(アンズ)」や、保育専用の相談窓口「保活のミカタ」を設置し、育児と仕事を両立しやすい働き方の構築に努めています。そのほか、子どもが12歳になるまで最大40日間取得できる出産育児休暇や、男性向けの育児セミナーなど、幅広い視点で従業員へのサポートを行っています。

■セクシュアル・マイノリティへの配慮
マイノリティに分類される「LGBTQ」への取り組みも積極的に行っています。全従業員向けeラーニングによる性的指向への理解促進や、同性パートナーを配偶者として福利厚生を適用する制度、専門アドバイザーによる「LGBTはたらく相談窓口」の設置など、数々の施策実績があります。
2006年頃からスタートした数多くのダイバーシティ施策により、管理職全体の女性比率は26.1%(全体の4人に1人)にまで増えています。また、2015年頃からは多様化するワークスタイルの変化にも対応し、リモートワークの推進やオフィスのフリーアドレス化など、時間・場所にとらわれない自由な働き方も可能になっています。

サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社は、「100人いたら100通りの働き方がある」という考えをモットーに、社内に多様性を生み出すさまざまな取り組みを実施しています。人事評価や福利厚生などの制度改善はもちろん、クラウドツールの活用によってリモートワークをはじめとした自由な働き方も実現。多様性への理解を進めるイベントや情報共有も並行して行い、従業員全体への意識改革も行っています。

【具体的な取り組み事例】

■育児・介護休暇制度
最長6年間の期間で育児休暇・介護休暇を取得できる制度です。そのほか、妊娠が判明したタイミングから取得できる「産前休暇」や、育児・介護のために使用できる「短時間勤務制度」など、仕事と生活を両立しやすい休暇制度が用意されています。

■子連れ出勤制度
急なトラブルに見舞われた場合、子どもと一緒に出勤できる制度です。「子どもがイヤイヤ期で保育園に行きたがらない」「子どもの預け先がない」といった状況で緊急的に活用できます。

■働き方宣言制度
ライフステージの変化に合わせて自由に働き方を変えられる制度です。こちらは育児・介護などに限らず使用できるのが特徴で、夢の実現や副業の立ち上げなど、従業員一人ひとりの挑戦をサポートします。出勤日・稼働時間・残業の有無などを決めて宣言することで、自身の生活に合った働き方を実現できます。

■育自分休暇制度
サイボウズを退職後、最長で6年間まで仕事に復帰できる制度。従業員の新しい挑戦を応援しつつ、退職者との良好なコミュニケーションや復帰しやすい職場環境を構築しています。
そのほか、希望すれば他部署の仕事を体験できる「大人の体験入部」や、ダブルワークが可能になる「副(複)業許可」制度など、多様性を意識した数多くの取り組みを実施。取り組みの甲斐もあり、2005年に28%を記録していた離職率は、2021年には3〜5%にまで下がっています。

まとめ

ダイバーシティとは、年代や性別、人種など多種多様な人材を登用して生産性・競争力を向上させる経営戦略のことです。少子高齢化による労働人口の減少やグローバル化などによって、従来の日本企業の経営スタイルでは持続的な成長が難しくなったことから、注目を集めるようになりました。
ただし、単純に多種多様な人材を登用し、表面だけダイバーシティを実現しても多様性を活用できている状態とはいえず、企業力も高められません。従業員がそれぞれの個性を活かせるように、ダイバーシティ経営やダイバーシティ・インクルージョンへと発展させ、企業経営に落とし込むことが大切です。

監修者・座間 智也

座間 智也

原宿で美容師 ⇒ リーフラス株式会社 ⇒ 株式会社スポーツフィールド
サッカー選手になる夢を断念し、美容師からキャリアをスタート、2社目では当時史上最短の入社8ヶ月でリーダー昇格、3年目の25歳で当時社員600名弱の会社で支店長として従事。その後、人材紹介会社へ転職し、入社4年で東日本エリアのマネージャーとして6拠点のマネジメントを経験。現在は個人として4つの事業運営を行いながら、Izul でキャリアアドバイザーとして従事。

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株式会社Izulの広報チームが運用。20代〜30代の若手ハイクラス層から、圧倒的支持を獲得中。働き方や転職のコツなど、キャリアに役立つ情報を発信していきます。

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