近年、さまざまな企業・業界がペーパーレス化を進めています。ただペーパーレス化の概要や重要性を、詳しく理解できていない方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ペーパーレス化のメリット・デメリットや導入方法、意識すべきことについて解説します。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、紙で作成・管理していた書類を電子化する動きのことです。書類を電子化することで、資源の節約や作業の効率化、スペースの確保などさまざまな効果が期待できます。
ペーパーレス化は、企業単体での取り組みだと認識している方も多いかもしれません。しかし、電子帳簿保存法やe-文書法が施行されていることからもわかるように、実際は政府がペーパーレス化を強く推し進めているのです。
ペーパーレス化が必要な書類
ペーパーレス化が特に必要なのが、以下の3つの書類です。
- ビジネス文書
- 会議用の資料
- チラシ・パンフレット
上記の書類を電子化することで、業務効率の向上が期待できます。ただし、免許証や許可証といった緊急時に閲覧する必要のある書類はペーパーレス化すべきではありません。
ペーパーレス化の導入方法
ペーパーレス化は、以下の方法による導入が一般的です。
- ペーパーレス化を導入する意味や目的の設定
- ペーパーレス化の対象となる資料を決定
- 現段階で使用されている紙の量を調査
- ペーパーレス化の目的に適したツールの導入
ペーパーレス化の必要性を理解した上で、電子化の対象となる資料やツールを選定していきましょう。
ペーパーレス化が重要視される理由
そもそもなぜペーパーレス化が重要視されるようになったのでしょうか。本章ではその理由を2つ紹介します。
理由1:生産性の向上
紙の書類が中心の業務は、書類の印刷・押印・確認・検索・保管に大量の時間的コストがかかります。しかしペーパーレス化が進めばこれらの作業が簡素化されるため、生産性が向上します。
理由2:環境保全の観点
ペーパーレス化は、資源を削減できる取り組みとして注目されています。ペーパーレス化を促進すれば、紙の使用量が減るため、環境保全にも貢献できるようになります。
このようにペーパーレス化は、環境に対する意識改革を企業全体で行う際の身近な取り組みとして注目されています。
ペーパーレス化の導入事例
ペーパーレス化の主な導入事例は下記の通りです。ペーパーレス化を導入すべきか悩んでいる企業は、各項目の事例を参考にしてみてください。
中小企業の事例 | ・営業担当者にタブレット端末を貸与し、手書きの報告書をデジタル化 ・外出先で作業できる点や簡単な操作性の観点から、ペーパーレス化が浸透 |
地方議会の事例 | ・紙の使用量が多く、印刷代やコピー機のメンテナンス代が予算を圧迫していた ・ITリテラシーの差が出づらいタブレット端末を導入し、ペーパーレス化を徐々に拡大 |
職員会議の事例 | ・クラウドで会議資料を共有することで、紙の削減だけでなく聞き漏らしも防止 |
社内教育の事例 | ・ペーパーレス化の必要性に関する教育を通じ、従業員のペーパーレス化への意識を向上 |
ペーパーレス化のメリット
ここでは、ペーパーレス化による主なメリットを解説します。
スペースを有効活用できる
ペーパーレス化で紙の資料が削減されれば、その分の机やロッカーのスペースをより多く確保できるようになります。また、ペーパーレス化はコピー機やシュレッダーの撤去にもつながります。そのためペーパーレス化が進めばスペースの確保はもちろん、機器に充てていた費用を別の予算に割り振ることもできるのです。
業務効率が向上する
紙ベースでの資料作成・管理には、必要な資料の検索やファイリング、書類を保管している場所への移動といった膨大な手間がかかります。ペーパーレス化することでこのような業務が省略され、従業員一人ひとりの業務効率が向上します。
またペーパーレス化によって、書類へのアクセスや承認が容易になる点も大きな魅力です。書類の郵送にかかる手間やコストも削減できるため、ペーパーレス化は従業員だけでなく経営層にもメリットがある取り組みといえます。
セキュリティ強化につながる
ペーパーレス化で書類にパスワードやアクセス権限をかけることで、情報漏洩や不正アクセス、ファイルの改ざんを防止できるようになります。また電子化により、書類の破損や消失も防止できます。万が一紛失しても、クラウド上にデータが残っていれば簡単に復元できます。
テレワークと相性が良い
紙媒体で共有していた情報を電子化することで、テレワーク推進のネックを解消できます。押印や承認も電子化できるため、テレワークの環境下でも出社時と変わらない業務を遂行できます。新型コロナウイルスの感染拡大で注目されるテレワーク。新しい働き方を積極的に取り入れるためにも、ペーパーレス化は重要です。
ペーパーレス化のデメリット
ペーパーレス化にはメリットだけでなく、デメリットが存在することも事実です。そこで本章では、ペーパーレス化に伴うデメリットを紹介します。
一度に目視できる範囲が狭まる
書類のデータを管理する端末によっては、一画面に表示される範囲が限定されます。このように一度に目視できる範囲が狭まる点はデメリットといえるでしょう。特に書類が複数枚になる場合は、このデメリットが顕著に現れます。この弱点を解消するためには、以下の対策が有効です。
- ディスプレイの大きい端末を利用する
- 必要に応じて紙媒体と併用する
端末の操作に慣れていない場合はメモをとりづらい
電子書類には、会議の内容を直接書き込めないというデメリットがあります。端末の操作に慣れていないとメモを取るのが遅れ、聞き漏れが発生するでしょう。メモを取りづらいことで不便を感じ、ペーパーレス化そのものにデメリットを感じる人もいるかもしれません。
ITリテラシーが求められる
ペーパーレス化は、従業員のITリテラシーが不足しているとなかなか浸透しません。人によっては、端末の操作に抵抗を感じるでしょう。
ITリテラシーによる懸念を解消するためには、できるだけ簡単に操作できる端末やシステムを採用する必要があります。つまり企業全体でのペーパーレス化には、簡略化を念頭においたうえでの導入が必要不可欠です。
ペーパーレス化のために従業員が意識すべきこと
ペーパーレス化は企業だけでなく、従業員にも高い意識が必要です。ここでは、ペーパーレス化において従業員が意識すべきことについて解説します。
なぜペーパーレス化が必要かを理解する
ペーパーレス化が企業にどのようなメリットをもたらすか、従業員それぞれが理解する必要があります。ペーパーレス化の重要性を従業員が理解しないことには、本当の意味での浸透は期待できません。今回紹介した重要性やメリットなどの項目を自社に当てはめ、ペーパーレス化を推進する意味に向き合いましょう。
ペーパーレス化について部分的に考える
経営層に対し、部分的なペーパーレス化を求める姿勢を示すことも大切です。すべての書類を一度にペーパーレス化してしまうと、会社が混乱してしまいます。まずは部署・プロジェクト・業務といった単位で、少しずつペーパーレス化を進めるよう進言しましょう。徐々にペーパーレス化を進めることで、自然な形で浸透が期待できます。
まとめ
ペーパーレス化には、資源の削減やスペースの確保など、さまざまなメリットがあります。ただし、目視できる範囲の限界やITリテラシーの不足など、デメリットがあることも忘れてはいけません。メリット・デメリットを理解し、従業員・経営層の双方が高い意識を持ってペーパーレス化を進めていきましょう。