トライアル雇用とは?詳細や助成金の条件、活用時の注意点を解説

2022年9月7日

2024年2月16日

著者

Izul広報チーム

Izul広報チーム

雇用におけるミスマッチを減らす施策の一環として、2003年4月からトライアル雇用制度がスタートしました。厚生労働省とハローワークが主体となって取り組んでいる制度ですが、一般層への認知はまだ獲得できていないのが実情です。この記事では、トライアル雇用制度の概要や類似制度との違い、活用するメリット、制度利用時の注意点などを解説します。

トライアル雇用とは

トライアル雇用とは、職業経験の不足等の理由で就職が難しい求職者に対して、3ヵ月間のトライアル期間を設けて雇用する制度です。仕事への適性や能力を見極め、正社員雇用に移行することを目的としていますが、合わないと感じた場合は、企業・求職者のどちら側からでも契約を解除できます。トライアル期間中に企業と求職者の双方が相性を見極められるため、ミスマッチを防止できる制度として注目を集めています。なお、特定の条件を満たすことで、「トライアル雇用助成金」が企業に支給されます。

試用期間との違い

試用期間は、トライアル雇用と同じく従業員の適性を確かめるための期間です。トライアル雇用制度との違いは期間の長さで、トライアル雇用は原則3ヵ月、試用期間は終了期限が特に決まっていないのが特徴です。

また、試用期間は正社員雇用が前提となっているので、「経歴を詐称していた」「無断欠勤を繰り返している」などの重大な問題が発生しない限り、そのまま社員として雇用されるのが一般的です。トライアル雇用の場合は、企業・求職者のどちらかがミスマッチと感じていた場合、期間終了後に雇用契約を結ばないケースが多いです。

紹介予定派遣との違い

紹介予定派遣とは、雇用契約を結ぶことを前提に派遣社員として就業する仕組みのことです。最長6ヵ月の就労期間を経たのち、企業と求職者の双方が合意することで、派遣契約から直接雇用に切り替わります。トライアル雇用と同様に、直接雇用が約束されているわけではありません。

トライアル雇用との違いは、就労期間中は企業と派遣会社が契約を結ぶ点です。相性が合えばそのまま正社員・契約社員として働けますし、ミスマッチだと感じた場合は雇用契約を結ばず、派遣社員として最長3年の契約期間で働くことが可能です。

トライアル雇用の種類と適用条件

トライアル雇用制度はいくつかの種類があり、コースによって対象となる求職者の条件や、助成金の金額が異なります。各コースの種類と特徴を見ていきましょう。

一般トライアルコース

一般トライアルコースは、トライアル雇用の中で最もスタンダードなコースです。職業経験の不足や就業ブランクがある人に向けて、最長3ヵ月間のトライアル雇用期間を提供します。ハローワーク等で求職申し込みをしている人が対象です。助成金の条件は、過去の経歴や就労意欲などさまざまな項目を満たす必要があります。

助成金は最長3ヵ月間が支給の対象となり、月額4万円程度が支給されます。(※条件によって増減あり)制度改正によって、2019年4月1日から「ニートやフリーターなど45歳未満まで」に対象者が拡充されました。

障害者トライアルコース

障害者トライアルコースは、身体・精神障害等を理由に就労が困難になってしまった方を支援するコースです。期間は原則3ヵ月間ですが、テレワーク勤務の場合は最長で6ヵ月間まで就労が可能になります。通常コースのほか、短時間の就労からスタートし、体調などを考慮しながら週20時間以上の就労を目指す「障害者短時間トライアルコース」もあります。助成金の条件は、就労意欲や離職の回数に加えて、障害の程度も含まれます。

若年・女性建設労働者トライアルコース

若年・女性建設労働者トライアルコースは、建設業における若年建設労働者および、女性建設労働者の確保を目的としたコースです。主に中小規模の建設事業者に対して、雇用の安定化を図る目的で実施されています。こちらのコースは、一般トライアルコース・障害者トライアルコースいずれかの助成金支給条件を満たしており、なおかつ35歳未満の若年者もしくは女性である必要があります。

助成金は最大4万円程度で、各コースの助成金に加算される形で計算されます。例えば一般トライアルコースの条件を満たしている場合は、「月額最大8万円×3ヵ月」で、最大24万円が支給される計算になります。

雇用側の適用条件

トライアル雇用助成金の対象条件には多くのチェック項目があるので、制度の活用を検討している方は各コースの概要を細かく確認しておきましょう。また、求職者だけでなく企業側の助成金対象条件も設定されています。こちらは項目数が多くないので、以下の条件を満たしているかを確認してみてください。

【企業側の助成金支給条件】

・1週間あたりの所定労働時間が30時間(※日雇労働者・ホームレス・住居喪失不安定就労者の方は20時間)を下回らないこと

・一定期間解雇をしたことがない事業主であること

トライアル雇用の活用メリット

トライアル雇用制度を活用するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。3つのポイントで解説します。

助成金が支給される

対象者の条件を満たすことで、トライアル雇用助成金の受給が可能になります。受給条件はコースによって異なり、多岐にわたる項目を満たす必要があるものの、申請が通れば採用者1人あたり月額4万円以上を受け取れます。積極的に活用すれば毎月一定額の助成金が発生するため、採用コストを抑えたい中小企業にはメリットの多い制度となっています。

雇用のハードルを下げやすい

「特殊な事情で就業経験が少ない人」「長い期間仕事から離れていた人」などは、再び就職活動を始めるハードルが高いものです。そこでトライアル雇用制度を利用すれば、通常の求人と比べて気軽に応募できるようになります。職場や働き方に不満がある場合は契約解除もできるので、不安なく働き始められるでしょう。

企業側からすれば、優秀なスキルを持っているにも関わらず雇用の機会に恵まれなかった人に対して、広くリーチできるメリットがあります。採用コストをかけずに優秀な人材を確保できる可能性がある反面、制度の特性的に即戦力採用は難しいので、バランスを見極める必要があります。

ミスマッチに対処しやすい

トライアル雇用を行う3ヵ月間は、企業・求職者の双方が容易に契約解除できる就労期間です。お互いに仕事への適性や相性をじっくりと判断できるため、雇用のミスマッチが起こりにくいのが特徴です。

トライアル雇用の注意点

トライアル雇用制度を活用する場合は、たとえトライアル期間中でも正社員雇用と同等の給与・待遇を提供する必要があります。手続きも通常の採用とは異なる部分が多いので、導入前にしっかりと注意事項を確認しておきましょう。ここからは、トライアル雇用制度の導入手順や各フローで押さえておきたいポイントを解説します。

手続きと提出書類

制度の活用および助成金の申請をするには、トライアル雇用求人をハローワークに提出する必要があります。その後、ハローワークから紹介される求職者の選考が始まりますが、書類審査を行うことはできず、面接のみでの選考となります。

採用が決定した場合は、2週間以内にハローワークに「トライアル雇用実施計画書」を提出する必要があるので、忘れずに対応しましょう。雇用期間終了後に本採用に進む場合は、改めて無期雇用契約(正社員雇用)を締結することになります。この場合も、2ヵ月以内に「結果報告書兼支給申請書」を労働局に提出する必要があります。

なお、トライアル雇用助成金については、労働局によって要件・必要手順・必要な項目を満たしているかを審査されたのち、支給額が一括で振り込まれます。

社会保険の確認

トライアル期間中は、原則として社会保険への加入が義務付けられています。フルタイム勤務であれば、労災保険・雇用保険・社会保険は自動的に加入条件を満たすので、通常の採用フローと同様に労務手続きを行う必要があります。

障害者短時間トライアルコースは、週の所定労働時間が20時間を超えないケースも考えられるため、雇用保険・健康保険・厚生年金への加入が免除される可能性があります。

給料面の確認

トライアル期間中は、通常の雇用契約と同様に給与が発生します。前職での経験やスキルに応じて、給与額を設定しましょう。給与は最低賃金を下回る額に設定することはできません。また、時間外労働が発生した場合は、割増賃金(残業代)の支払い義務が生じます。

早期退職を防ぐ教育体制の確立

トライアル雇用では業界未経験の方だけでなく、社会人経験がほとんどなかったり、長期間のブランクがあったりと、さまざまな事情を抱えた求職者が集まります。入社後は新入社員と同様に一から指導する必要があるため、教育体制が整っていない状況で受け入れてしまうと、職場環境が一時的に悪化するリスクもあります。

適切な教育・サポートを受けられないと求職者がミスマッチを感じやすくなるので、強固な研修体制を構築してから受け入れを行いましょう。短期・中期・長期の教育体制を整えたうえで実施すれば、職場定着率が改善され、採用に一定の効果が見込めるようになります。

解雇・雇用期間の条件取り決め

トライアル期間終了後の手続きをスムーズに進めるためにも、事前に雇用条件のすり合わせや確認をすることが大切です。採用・不採用の基準は企業によって異なるため、あらかじめ求職者に説明しておくと誤解を避けられます。

また、トライアル期間中にミスマッチを感じた部分があるときは、評価のポイントを求職者にフィードバックし、修正する機会を作ってあげるべきでしょう。雇用期間終了後のトラブルを避けるためにも、「どの評価項目を採用・解雇の基準にするか」を、企業と求職者の双方が事前に取り決めておく必要があります。

まとめ

今回はトライアル雇用制度の概要や導入の注意点を解説しました。雇用のミスマッチの解消を目指した制度ですが、まだ認知度が低く、失敗事例を目にすることも少なくありません。雇用開始前の認識確認を徹底し、受け入れ体制を強化することで、双方にとってメリットの多い雇用機会を生み出せるようになります。制度の目的や仕組みを正しく理解して、ぜひ有効に活用してみてください。

監修者・西本 威昭

西本 威昭

・国内大手SIerに新卒入社
 SEやPMとして多くのプロジェクトを経験

・KPMGコンサルティング株式会社に転職
 シニアコンサルタントとしてジョイン
 製造業を中心に複数のSCM案件に参画

・アビームコンサルティング株式会社に転職
 マネージャーとしてジョイン
 製造業を中心にSAP関連プロジェクトに参画

・株式会社Izulに転職
 副業のフリーコンサルタントとして活動する傍ら、
 同社キャリアアドバイザーとして従事

著者プロフィール

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株式会社Izulの広報チームが運用。20代〜30代の若手ハイクラス層から、圧倒的支持を獲得中。働き方や転職のコツなど、キャリアに役立つ情報を発信していきます。

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