コンプライアンスは、企業・従業員それぞれが意識しておかなければならない重要な観点です。言葉としての意味は理解していても、働くうえでの重要性までは把握しきれていない人もいるでしょう。
今回は、コンプライアンスを守る重要性について、代表的なコンプライアンスリスクとあわせて紹介します。違反の原因や影響、事例もあわせて紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
コンプライアンスとは
ビジネスにおけるコンプライアンスは、法令に違反することなく、正しく業務を遂行することを指します。
一般的に法令遵守を指すコンプライアンスですが、ビジネスでは「最低限のマナー」といった意味で使用されます。企業内でのマニュアル・ルールを守らない、モラルに欠ける人材は「コンプライアンスを守れていない」と判断されます。
コンプライアンス遵守の重要性
コンプライアンスを遵守しないと、不祥事が起こり社会的信用が下落する可能性が高まります。企業価値や売上が低減すれば、最悪の場合倒産することもあるでしょう。
コンプライアンスは、2000年代に多発した企業不祥事により、近年注目されています。不祥事に関するニュースを目にしたことで、コンプライアンスを守ることの重要性を再認識した企業も多いでしょう。
また最近は、インターネットの普及により、社会が企業に向ける目線が増えています。ネットを利用すれば誰でも企業の情報を入手できるため、コンプライアンス違反への危機感を強く持っている企業も増加しています。
企業が実施すべき取り組み
コンプライアンスに対する意識を高めるためには、以下の4つの対策が有効です。
- コンプライアンスの違反事例などをもとにした研修
- コンプライアンス遵守を目的としたマニュアル・規則の作成
- コンプライアンスに関連する法改正に合わせた体制のアップデート
- eラーニングによる自発的な学習環境の構築
これらの取り組みを積極的に実施することで、コンプライアンスに対する意識を企業規模で高めることができます。
代表的なコンプライアンスリスク
本章では、代表的なコンプライアンスリスクを4つ紹介します。
労働契約
法律に違反している契約内容や、自社が社会的に不利になる条文が含まれることが該当します。労働契約に関するリスクは、企業の損害を生み出すきっかけになり得ます。
人事・労務関連
長時間労働やハラスメント、差別的な扱いなどが該当します。働き方改革が注目されて久しい昨今において、従業員の扱いに対する社会の目線は厳しくなったといえるでしょう。人事・労務関連のリスクが発生すると、企業風土や業務遂行に悪影響が出るため、注意する必要があります。
法令違反
法令違反はコンプライアンスの基本軸であるため、当然意識を向けておかなければなりません。特に以下の法令が問題になりやすい傾向にあります。
- 独占禁止法
- 消費者契約法
- 景品表示法
- 下請法
情報漏洩
企業の機密情報が外部に漏れてしまうと、大きな損害・不利益につながります。情報漏洩に関するコンプライアンスリスクを防止するために、社内規定や就業規則を通じた情報管理を徹底しましょう。また情報漏洩は企業内だけでなく、顧客からの信用度失墜にもつながるため、細心の注意が必要です。
コンプライアンス違反が起こる原因
そもそも、なぜコンプライアンス違反が発生するのでしょうか。本章では、主な3つの原因について解説します。
コンプライアンスに関する認識不足
コンプライアンスに対して、漠然とした知識しか持っていないことは、コンプライアンス違反を引き起こす原因として考えられます。ほとんどの方は、明らかな法令違反や情報漏洩に対しては、コンプライアンス違反だと認識しています。
しかし以下のような細かい事例になると、知らぬ間にコンプライアンスに違反してしまいます。
- 会計に関する知識が不足していて、悪意なく脱税してしまった
- 備品の私物化が横領にあたることを知らなかった
このように知識不足は、コンプライアンス違反につながります。
企業風土
労災隠しやリコール隠しなど、当たり前のように不正がまかり通る企業風土が原因になることもあります。コンプライアンスに対しての意識が希薄な企業では、不正の発生・横行を防止することは困難でしょう。
経営層がコンプライアンス違反に対して危機感を持たなければ、正しい体質ではない企業として注目されてしまうかもしれません。
内部統制が不十分
コンプライアンス違反につながる可能性を、管理・把握できていないことも原因として考えられます。例えば経理では、同じ担当者で業務を遂行する場合が多いため、横領や水増し請求などが起きる可能性があります。
内部統制が不十分なことによるコンプライアンス違反を防止するためには、定期的な配置転換や内部監査の実施が有効です。ただし、少人数で運営している企業はこういった対策の実施も困難であるため、解決に至っていないのが現状です。
コンプライアンス違反によって起こる悪影響
コンプライアンス違反によって起こる悪影響は以下の通りです。
- 行政から罰則・処分を科される
- 従業員や顧客に訴訟を起こされる
- 「コンプライアンスに違反している企業」とレッテルを貼られ、企業の信用度やブランド力が失墜する
コンプライアンスが発覚した際のリスクを考えずに、違反してしまう企業も少なくありません。行政処分・倒産・廃業に追い込まれる可能性もあるため、十分注意する必要があります。
コンプライアンス違反に該当する具体例
コンプライアンス違反は、さまざまな場合に発生します。ここでは、コンプライアンス違反に関する具体例を、いくつかの観点で解説します。
公正な競争の阻害
公正な競争の阻害に該当するコンプライアンス違反は、以下の通りです。
- 取引先制限
- 企業秘密侵害
- 不正割戻
- 入札談合
- 市場分割
- 差別的取扱
- 差別対価
- 贈収賄
- 不当廉売
- 知的財産権侵害
- カルテル
消費者への不利益
消費者への不利益は、悪徳商法や虚偽・誇大広告が原因で発生します。また、有害商品や欠陥商品の販売も、消費者への不利益に該当します。これらのコンプライアンス違反は消費者の不利益だけでなく、社会的信頼の失墜につながるおそれがあります。
投資家への悪影響
以下のコンプライアンスに違反することで、投資家の活動制限や阻害につながる場合があります。
- 利益供与
- 内部者取引
- 作為的市場形成
- 損失補償
- 粉飾決算
- 相場操縦
労使関係の構築
労使関連でも、コンプライアンス違反は存在します。
- セクハラ・パワハラ
- 過労死
- 差別
- 職業病
- 労働災害
- メンタルヘルス障害
- プライバシーの侵害
社会・地域関連
工場災害や環境汚染などで、近隣住民の環境に悪影響を及ぼすこともコンプライアンス違反にあたります。また、自社の業務が近隣の住民に悪影響があると判断された場合は、情報拡散によって社会的信用が失墜するリスクがあります。
政治関連
脱税や報告義務違反など、政治関係者だけではなく有権者として押さえておくべき事例もあります。個人としてはもちろん、企業風土が政治関連のコンプライアンス違反をしていないか、意識しておかなければなりません。
国際的な信用問題
昨今の市場はグローバル化が進んでいるため、国際的な信用問題に対する危機感を持っておくことも大切です。租税回避や産業スパイなどの事例を把握し、国際問題につながるコンプライアンス違反を回避しましょう。
まとめ
法令遵守の意味合いをもつコンプライアンス。企業はもちろん、従業員一人ひとりが意識しておかなければならない重要な観点です。コンプライアンス違反は、知識不足や企業風土、不十分な内部統制が原因で発生します。社会的信用の失墜や企業価値低下のリスクを回避するために、企業全体でコンプライアンスに対して意識を向けましょう。