一つの企業に長く勤めていると、今後の経営に関わるポジションに興味を持つ方も少なくないのではないでしょうか。企業の経営に関する目標などを考え、実現させるための仕事を「経営企画」といいます。この記事では、経営企画の業務内容ややりがい、向いている人の特徴について解説しています。経営企画の仕事に興味がある方はぜひ参考にしてください。
経営企画とは
経営企画とは、主に中長期的な経営計画の立案・策定を行う仕事です。具体的には、新規事業の企画や経営資源の分配調整、取引先などステークホルダーへの対応を担います。経営者自らが担当する場合もありますが、ある程度規模が大きい企業では、経営企画部門が設立されていることもあります。企業の今後の方向性を定める役割を担っていることから非常に重要視されるポジションであり、キャリアアップのために目指す方も多い職種だといえるでしょう。
事業企画とは何が違う?
「経営企画」と「事業企画」は一見似ていますが、それぞれ別々の仕事です。経営企画では企業全体が成長するための戦略を立案するのに対し、事業企画では、企業が取り組んでいる事業を成功させるための目標設定や課題解決などを実施します。経営戦略をもとに目標やKPI(重要業績評価指標)を設定し、予算や人材を分配します。業務の中で対象としている範囲が異なるため、具体的な仕事の内容も全く違うものです。
経営企画の仕事内容
経営企画の業務は、大きく分けると4種類に分類されます。ここでは、経営企画の主な仕事内容について解説します。
経営管理に関する業務
経営企画の代表的な仕事内容として、経営管理に関する業務が挙げられます。売上やキャッシュフローなどから企業の経営状態を正確に把握し、商品の開発や新規プロジェクトに関する判断を行います。企業の方向性を定める際にも影響するため、常に社内の金銭の流れを意識しておくことが必要です。
事業全体の見直し
定期的な事業全体の見直しも、経営企画の重要な業務の一つです。企業をさらに成長させるためには、ただ既存の事業を伸ばしていくだけでなく、自社の強みを活かして競合に勝てるような新規事業を作り出していく必要があります。また、不良事業がある場合、改善策を見つけて対処するか、思い切って撤退するかの判断も経営企画部門によって行われます。
競合の情報収集・調査
経営企画の業務には、競合他社の情報収集や調査も含まれます。競合他社が成績を伸ばしている事業の情報や経営状態などについて調査を行い、自社の経営戦略に反映させます。競合他社の動きを知ることで、自社の課題や力を入れるべき部分を発見することが可能です。
コーポレート・ガバナンスの対応
コーポレート・ガバナンスとは、企業統治を意味する言葉です。不祥事を防ぐために、社外監査役や社外取締役などによって経営を監視する仕組みを指します。経営企画部門はコーポレート・ガバナンスの責任者になることが多く、社外の管理者へ資料提供が求められることがあります。社内の不正やコンプライアンスの違反などを防ぐためにも、経営企画部の対応は非常に重要です。
経営企画に必要な資格
経営企画の仕事に従事するにあたって、資格は必ずしも必要ありません。しかし、転職する際に以下の資格を持っていると、経営企画職に必要な知識があると評価されやすいでしょう。
MBA(経営学修士) | MBAは経営について実務に直結する領域を勉強する修士学位のことです。事業戦略、マネジメント、マーケティング、財務・会計、ロジカルシンキングなどの経営スキルを身につけられます |
中小企業診断士 | 中小企業の経営状態を分析し、経営強化や課題解決などのコンサルティングを行える資格です。経営企画に必要な経営戦略や組織改善の知識を学べます。 |
公認会計士 | 監査・会計の専門家となるための国家資格です。会計・税務・コンサルティングなどの知識を持つため、企業全体の予算分配や財務管理ができます。 |
経営企画のキャリアパス
経営企画の職務を経験した人のキャリアパスは大きく3つに分かれます。経営企画の実務経験は、企業経営の上流ポジションに就くのに必要なスキルを身につけられるため、キャリアアップを実現しやすいでしょう。
他社の経営企画へ転職 | 経営企画職は、転職市場でも貴重な人材です。経営方針や経営戦略、経営問題の解決などの実務経験を数値化できると高く評価されます。 |
CFO(最高財務責任者)を目指す | 経営戦略や資金調達、管理会計の実務を積めるため、経営層へのキャリアアップが目指せます。特に財務を担当するCFOは経営戦略の立案の経験が活かせる職種です。 |
経営コンサルタントとして起業 | 経営企画の実務経験があれば、経営コンサルタントとして独立することもできるでしょう。経営層とともに経営課題を見つけ、具体的な解決策を提案します。 |
経営企画の平均年収
経営企画職の平均年収は約509万円です。企業の中枢で経営戦略に携わる高いスキルと責任が求められる花形職種のため、日本人の平均年収の中でも高めといえるでしょう。さらに企業規模や担当する業務内容、経験年数によっては年収1,000万円以上、外資系や金融系の上場企業などでは年収2,000万円以上を目指せます。
経営企画の仕事のやりがい
経営企画の業務は責任が大きい分、やりがいを感じる仕事です。ここでは、経営企画の仕事のやりがいについて詳しく解説します。
出世や人脈作りにつながりやすい
経営企画部門は企業の経営に直接携わることから、将来の幹部候補となるような優秀な人材が集められることが多く、花形の出世コースとされています。そのため、企業内でのキャリアアップにつながりやすい職種といえるでしょう。また、経営企画の仕事ではさまざまな部署と関わりを持つことが多く、人脈が広がりやすいといった特徴があります。
リーダーシップが身に付く
経営計画を達成するためには、経営企画部門が中心となって各部署に適切な指示を出し、会社を導いていくことが必要です。社内全体の様子を把握しなければならず、責任も大きい仕事ですが、各部署をまとめていくなかで自然とリーダーシップが身につくようになります。将来、幹部や経営者になった際にも非常に役立つでしょう。
企業全体を巻き込むプロジェクトに関われる
経営企画部門では、企業全体を巻き込むプロジェクトに関わることも大きなやりがいの一つです。プロジェクトの際は、各部署のまとめ役として、部署間の調整やトラブルへの対処を行うことになります。苦労が伴う役割ではあるものの、大勢を巻き込んで仕事を動かしていく面白さを体感することが可能です。プロジェクトが無事成功した時には、大きな喜びや達成感を味わえるでしょう。
経営企画の厳しさやつらいところ
経営企画の仕事はやりがいも多いですが、厳しさやつらさを感じることも少なくありません。ここでは、経営企画の厳しさ・つらいところを挙げていきます。
携わる業務の幅が広い
経営企画では企業の経営全般に関する仕事を担っているため、自然と携わる業務の幅が広くなります。多くの経験を積めますが、その分業務量が膨大になることが一般的です。残業や休日出勤をすることも多く、心身に負担がかかりやすくなってしまいます。
ロールモデルが不足している
経営企画部門は起用される人数が限られていることも多く、ロールモデルとなるような先輩が不足しているケースも少なくありません。模範となる対象がいないことで、成長するための過程や自分の今後のキャリアをイメージしづらく、モチベーション低下につながってしまいます。
現場と経営陣の板挟みになることが多い
現場と経営陣の板挟みになることが多い点も、経営企画部門のつらさの一つです。経営者が考えている経営方針が現場での業務内容とずれている場合、両者の間に入って擦り合わせを行う必要があります。経営企画部門には中立の立場が求められるものの、意見を調整するのは容易ではなく、ストレスを感じてしまうことも少なくありません。
必修スキルが多い反面教えてくれる人が少ない
経営企画の業務を行うためには、予実分析や計画策定などのスキルを身につけなければいけません。しかし、他人から教わることでできるような業務は少なく、実際に働きながら手探りで覚えていくことがほとんどです。必要なスキルは多いものの、教えてもらえる機会が少ない点は経営企画の厳しさといえるでしょう。
経営企画に向いている人の特徴
ここでは、経営企画の業務に向いている人の特徴をご紹介します。
将来経営者を目指している
将来経営者を目指している方にとって、経営企画はぴったりの仕事です。企業を経営していく上で必要な知識やスキルが身につき、今後のキャリアに活かせるようになります。経営陣と関わる機会も多く、経営者視点の考え方を学べる点も自分の強みになるでしょう。
ロジカルシンキングが得意
企業の経営をサポートしていく上で、物事を論理的かつ合理的にとらえる力は必要不可欠です。また、経営陣と現場の間で調整を行う際は、根拠に基づいた客観的な説明が求められます。そのため、ロジカルシンキングが得意な人は経営企画の仕事に向いているといえるでしょう。
先を見据える力がある
経営企画として働くには、先を見据える力を持っていることも重要です。経営計画を立てる際は、企業の現状をしっかり把握したうえで、目標を達成するためにどのように進んでいくべきかを考える必要があります。また、企業の未来を考えることに楽しさを感じられる人は、経営企画の仕事を行う上で強みになります。
経営企画職の転職にまつわるQ&A
経営企画職に転職したいと考えていても、経営企画に関わった経験がないと具体的にイメージできない方もいるでしょう。ここでは、経営企画への転職で、よくある疑問点を3つを紹介します。
経営企画は未経験からでも転職できる?
経営企画は高い専門性が必要な上に責任の大きい仕事のため、未経験から転職するのは容易ではありません。経営企画職の中途採用は一般的に、人事・会計・マーケティング等の分野において高いスキルや実績が条件になります。ポテンシャル採用を期待するのは難しいため、実務経験を積んでスキルを上げてから挑戦することをおすすめします。
ただし、未経験でも経営企画に活かせるキャリアもあるため、転職エージェントに相談してみましょう。
若手である20代でも経営企画に転職できる?
経営企画への転職年齢の平均は35歳ですが、20代後半の求職者は26%というデータがあります。20代でも、市場動向や競合他社のデータ分析や企画立案やマネジメント経験をできるだけ積んでおくと、転職市場で高い評価を得られます。一般的に経営経験やスキル・実績がないと採用されにくいですが、経営者を目指す人にとってはメリットの多い職種といえるため、20代からスキルを磨いておきましょう。
参考:経営企画/事業企画とはどんな職種?仕事内容/給料/転職事情を解説【doda職種図鑑】
前職はどのような仕事が多い?
中途採用で経営企画職に転職する人は以下のような経歴を持つ人が多い傾向にあります。
- 経営企画・事業企画の経験者
- コンサルティングファームの経験者
- 営業企画・商品企画・サービス企画の経験者
- 金融業界の法人営業の経験者
- グローバルなビジネス・海外勤務経験者
中途採用では、経営戦略や企画立案、財務やマーケティングを経験した人が多く採用されています。また、大きなプロジェクトのマネジメント経験も高く評価されます。ただし、大企業の企画部門の場合は全体の一部だけを担う場合もあるため、企業全体の経営課題に向き合った実績と評価されない場合もあり、むしろベンチャー企業の経営企画職が評価される場合もあります。
経営企画に必要な経験・スキルは?
経営企画に必要な経験やスキルは以下のようなものがあります。
- 戦略的な思考力
- データ分析の経験や能力
- 経営に関する知識やビジネススキル
- プレゼンテーション力
- コミュニケーション能力
- プロジェクトマネジメント能力
- 周囲を巻き込んだ仕事や活動をした経験
- 財務・会計の知識
経営企画の仕事は、マーケティングなどのデータや過去の財務状況から経営戦略を立案することです。新しいプロジェクトの創造・管理も担う業務のため、ビジネスの構造を理解した上で具体化し、人を動かすスキルが必要です。そのためには、多くの人をまとめる能力や予算管理など多方面の経験を積み、リーダーシップを発揮できるようにしましょう。
まとめ
この記事では、経営企画の業務内容や向いている人の特徴、やりがいについて紹介しました。企業の方向性を左右するため責任や労力の大きい仕事ですが、その分やりがいも感じられます。経営企画への転職には高いスキルや実績が求められるため、会計や人事などの部門で実務経験を積んでおくことがおすすめです。経営企画を目指す方はぜひ参考にしてください。