今勤めている会社から転職する場合、退職手続きは欠かせません。しかし、退職願を実際に書く機会は少なく、いざ提出が必要になるとわからないことが多いものです。今回は、退職願の書き方や提出時の注意点、退職届や辞表との違いについて詳しく紹介します。
退職願を出す前に確認すること
勤め先に退職願や退職届、辞表を提出する際に、気をつけるべきポイントを3つ紹介します。
会社の就業規則を確認する
退職願や退職届を書き始める前にチェックしておきたいのが、会社の就業規則です。就業規則には退職に関する項目があり「退職を希望する○ヵ月前までに退職願を提出する」といったような形で、届け出をする期日が設けられている場合が多いでしょう。会社は就業規則というルールに則って動いています。そのため、ルールを確認しないまま「来週で退職します」と一方的に話を進めようとすると、トラブルの原因になってしまいます。
会社を辞める理由を改めて確認する
次の転職先が決定している場合は、迷いなく退職手続きを進められるでしょう。しかし、まだ退職することに迷いがある場合は、退職をする理由を自分の中で再度確認しておくべきです。上司に退職の意思を伝えると、引き止められる可能性があります。その際に迷っている様子を見せると、退職交渉が長引いてしまうかもしれません。また人員が減ると、引き継ぎや人員の補充などで職場に新たな負担がのしかかります。そのため、よく考えた上で退職する覚悟が決まってから会社に話を通しましょう。
退職の意思を直属の上司に伝える
退職をするという意思は、始めに直属の上司へ伝えることが社会人としてのルールです。退職の意向が同僚や上司よりも上の役職者へ先に伝わってしまうと上司からの心証は悪くなり、退職の話がこじれてしまうリスクも考えられます。例え仲の良い同僚であっても、上司を通じて退職の話が確定するまでは口外しないように心掛けましょう。
退職願・退職届・辞表それぞれの違い
退職する際に提出する書類には「退職願」「退職届」「辞表」の3種類があります。それぞれの役割をしっかりと把握しておきましょう。
退職願は退職の意思を伝えるもの
まず「退職願」とは、退職の意思を願い出るという目的で提出する書類です。「退職したい」という考えを上司に伝える際に、退職願を渡すことで明確な意思を示すことができます。転職先への入社日が決まっていて、この日までに退職するという意向を伝える必要がある場合には準備しておくべきでしょう。
退職届は正式な退職日が確定した後に提出するもの
「退職届」は、会社の事務手続き上記録を残すために必要な書類です。退職の意向を上司に伝え、退職日が決まった後に、退職するという事実を会社へ届け出るために使用します。上司に提出して然るべき部署に渡される場合や、自分で人事部などの部署に提出する場合など会社のルールによって提出先は異なります。あらかじめ上司に確認しておきましょう。
辞表は役員や公務員が提出するもの
「辞表」とは、会社役員や公務員がその職を辞する際に提出する書類を指します。会社においては、社長や取締役など、会社との雇用関係がない役職者が使用するものであって、会社員は辞表を提出する必要がありません。
退職願の書き方
退職の準備ができたら、実際に退職願や退職届を記入しましょう。ここでは、順を追って退職願の書き方を解説します。
1:冒頭
便箋の1行目・真ん中の高さに「退職願」または「退職届」と記入します。
2:書き出し
本文の出だしには「私事」もしくは「私儀」と書きましょう。これは「わたくしごとですが」という意味合いになります。
3:退職理由
最も一般的な自己都合退職の場合は、「一身上の都合」と書きましょう。会社都合での退職で退職届の提出を求められている場合は、「早期退職のため」「部門縮小のため」など事実に即した理由を記載します。
4:退職年月日
退職願の場合、退職を希望する日付を記入します。上司へ退職の意向を伝えた上で退職届を提出する場合は、合意した退職日を記載しましょう。
5:提出日
書類を提出する日付を書きましょう。
6:所属と氏名・捺印
宛名よりも下の位置に、正式な所属部署名、氏名を記載します。氏名の下部には捺印もしましょう。
7:宛名
会社名と会社の最高執行責任者にあたる人物の名前を、自分の名前よりも高い位置に記載します。敬称として「様」をつけることも忘れないようにしましょう。
退職願の出し方
書き上げた退職願や退職届は、正しいマナーで提出しましょう。3つのポイントを紹介します。
封筒の表裏に記入する
退職願や退職届は、封筒に入れて提出します。封筒には、表面に「退職願」または「退職届」と大きく記入しましょう。裏面には自分の部署名とフルネームを書きます。
退職願を三つ折りにして入れる
封筒に入れる退職願は、三つ折りにすることが基本です。便箋には折り込む順番もあることをご存知でしょうか。はじめに下部を、文章が内側になるように折り込み、その後上部を同様に折ります。これにより、上司は封を開けた際に書類の上部から順番に目に入るようになります。また、封筒に入れた後は糊付けして、その上に「〆」と書きましょう。
直属の上司に手渡す
退職願は、必ず直属の上司に手渡すようにしましょう。上司に話しづらかったり、上司が不在だったりという理由で、上の役職の人に提出することや上司の机に退職願を置いておくことは非常に失礼です。退職手続きをスムーズに進めるためにも、直属の上司へ手渡しすることは守るようにしましょう。
退職願を提出する際の注意点
最後に、退職願の提出にあたって注意すべき点を解説します。転職活動を円滑に進めるためにも、しっかりと確認しておきましょう。
転職先を教えるとトラブルの原因になる場合も
退職時に次の転職先を教えることは、非常にリスクの高い行為です。退職を申し出ると、高い確率で「次の仕事は決まっているのか」などと聞かれるものです。残念なことではありますが、周りの人間全てがあなたの味方とは限りません。引き止めや嫌がらせなどの目的で、転職先へ転職の妨害に繋がるような連絡を入れられてしまうケースも実在するのです。余計なトラブルの種を作らないためにも、転職先や転職活動について話すことは控えましょう。
会社都合・自己都合を明確にする
本来は会社都合退職に該当するにもかかわらず、自己都合退職となるように上手く言いくるめられるケースも考えられます。会社都合と自己都合の違いは、失業保険の受給や転職活動において大きな差が生まれます。失業保険は会社都合の場合、7日間という短い待期期間を終えるとすぐに受給できます。しかし、自己都合では7日間の待期期間後に3ヵ月の給付制限期間があり、その後でなければ受け取ることができません。
また、転職活動では会社都合の場合「仕方ない」「辞めたくて辞めたわけではないんだ」と印象付けられますが、自己都合だとネガティブなイメージを持たれてしまうかもしれません。退職理由については、会社との間で事前にはっきりとさせておきましょう。
退職願や退職届に正式なフォーマットはない
「退職願や退職届には、正式な様式が存在しない」という事実も覚えておきましょう。会社によっては退職願や退職届のフォーマットを指定して、引き止めのためにその書類を渡さないようなケースも存在します。しかし、法律上その様式には決まりがなく、任意の様式で提出をすることに何の問題もありません。社員の無知を利用して強引に引き止める会社があることも事実なので、正しい知識をつけておくことは大切です。
まとめ
転職活動はキャリアアップや年収の増加などポジティブな要素が多いものですが、そのためには現職を辞めるための手続きも避けては通れません。今回紹介した退職願や退職届に関する情報を身につけて、スムーズかつ円満な退職、そして転職の成功へと繋げましょう。