企業成長を促すための思考方法の一つに、バックキャスト(バックキャスティング)があります。目標を達成するために必要な手段を徹底的に洗い出し、成功への道筋を立てるという考え方です。本記事では、バックキャストの方法やフォーキャストとの違い、メリットや注意点、成功のポイントなどについて詳しく解説します。
バックキャストとは
バックキャストは、10年や20年先の未来の目標を設定し、目標達成に必要な手段や施策を考案する思考方法です。1ヵ月や1年の目標を立てて、目標達成に必要な手段や施策を考えることは多くの企業で行われています。しかし、バックキャストは10年や20年といった中長期的な目標を立てるため、それだけ多くのアイデアが必要です。バックキャストとフォーキャストの違いや、SDGsにおける活用について詳しく見ていきましょう。
フォーキャストとの違い
フォーキャストは、現在を出発点として未来を予測する思考方法です。例えば、市場の動向を分析し、競合他社の動きを把握して、将来的なビジネス戦略を立てる際に用いられます。
一方、バックキャストは、未来の目標を設定し、その目標に向かって逆算して必要な手段や施策を考える思考方法です。フォーキャストは現在の課題解決に役立ち、バックキャストは将来のビジョンを実現するための道筋を立てる際に有効です。
バックキャストはSDGsで活用されている
SDGs(持続可能な開発目標)はバックキャストの思考を基に作成されました。SDGsは、持続可能な未来を実現するための国際的な目標であり、2030年までに達成されるべき具体的な目標が17個掲げられています。
バックキャストの思考法では、まず将来の目標を定義し、その目標に到達するためには何をすべきかを逆算して考えます。SDGsも同様に、2030年に実現したい持続可能な未来を描き、それを達成するために必要な取り組みを策定しました。つまり、SDGsは「2030年までに持続可能な社会を実現する」という未来の目標を起点に、それを達成するための施策を考えているのです。
バックキャストのメリット
バックキャストの実施により、中長期的な目標達成に必要な手段や施策が明確になります。バックキャストの特徴を踏まえ、メリットについて詳しく見ていきましょう。
画期的なアイデアが生まれやすい
バックキャストは、現状や既存の制約にとらわれることなく、未来の目標やビジョンを起点にして考えるため、画期的なアイデアが生まれやすいとされています。現在の問題や制約を考慮すると、発想が制限されるでしょう。
実現可能かどうかの検証は必要ですが、企業を大きく成長させる画期的なアイデアが生まれることも期待できます。
長期的な視点を持つことができる
バックキャストは、未来の目標を起点に逆算的に考える思考方法のため、長期的な視点を持つことができます。目先の利益にとらわれずに、未来のビジョンや目標を実現するための長期的な施策を考えることに重点を置いています。
企業の戦略策定や長期的な事業計画の立案において、バックキャストは有効な手法です。将来の市場状況や競合状況を考慮しながら、目標達成に向けた戦略や施策を逆算的に立案することで、将来の成長や競争力を高めることができます。
バックキャストの注意点
バックキャストは万能な思考方法ではありません。バックキャストで中長期的な目標を立てて手段や施策を考案する際は、次の注意点を押さえましょう。
実現できないアイデアが生まれることも多い
バックキャストは自由な発想でアイデアが生まれやすいメリットがある一方で、アイデアが現状と乖離してしまう可能性もあります。
到底実現できないアイデアを施策に盛り込むと、結果的に時間の浪費につながるため、計画や施策の実施は慎重に行いましょう。
短期的な目標設定には向いていない
短期的な目標を設定する際は、すでに持っている知識やノウハウ、技術などを駆使し、どのような道筋で目標を達成するかを考えます。バックキャストはこれから身につける知識やノウハウ、技術なども考慮して未来の目標達成に向けての道筋を立てるため、短期的な目標を決める際の思考方法には適していません。
バックキャストの流れ
バックキャストは、先に未来を設定してから、その未来を実現するための手段や施策を考案します。バックキャストの流れについて詳しく見ていきましょう。
1:実現したい未来を明確にする
バックキャストを実践するには、まずは実現したい未来を明確にすることが重要です。未来のビジョンを具体的にイメージし、それを理想像として明確化します。この際には、現実的な制約や課題に縛られず、自由な発想で未来を描くことが重要です。
ただし、あまりにも現実離れしているビジョンだと、実現が困難になる恐れがあります。市場や社会の動向を十分に把握し、現実的な枠組みの中でビジョンを描きましょう。
2:目標達成のためにクリアすべき課題を明確にする
描いたビジョンを達成するために取り除くべき障害や課題を明確にします。目標と現状のギャップを把握することで、具体的な課題を洗い出し、ビジョンを実現するためにどのようなアクションを取るべきかが明確になります。
3:必要な行動を洗い出す
ビジョンと課題が明確になったら、目標達成に向けて取るべきアクションを洗い出します。洗い出したアクションを整理し、システム・価値観・技術などのカテゴリーに分類することで、どの要素が不足しているかがわかりやすくなります。
4:目標達成までの道筋を立てる
洗い出したアクションを時間軸に沿って整理し、目標達成までのロードマップを作成します。時間軸に沿って整理することで、取るべきアクションの順序や期間が明確になります。また、目標達成までにかかる時間の把握やリソースの見積もりが取りやすくなるでしょう。
バックキャストを成功させるコツ
バックキャストを成功させるためには、少しでも多くのアイデアを創出するだけではなく、協業や細かな情報共有などにも注目が必要です。バックキャストを成功させるコツについて詳しく見ていきましょう。
目標達成の可能性を1%でも高める方法を模索する
目標達成の可能性を少しでも高めるために、現在利用可能なリソースを最大限に活かすことが大切です。また、新しいアイデアや手法に積極的に挑戦し、失敗を恐れずに試すことで、新たな成果を生み出す可能性が広がります。
協業も検討する
バックキャストを成功させるためには、他の企業や行政機関、専門職との協業を検討することも重要です。協業によって、目標達成に必要な資金や技術、人材などを共有できます。
また、受け入れ型のアウトソーシングを利用すれば、他企業や専門職の技術やノウハウを習得できるため、目標達成の可能性が高まります。
定量的な指標を全メンバーに共有する
バックキャストの考え方においては、具体的な数値目標を全メンバーに共有し、同じ目線で取り組むことが前提です。数値目標は、目標の達成度を評価するための基準となります。例えば、売上目標、利益目標、品質向上の数値目標など、明確な数値を示すことで、目標に向かって進捗を把握しやすくなるでしょう。また、チーム全体が目標に向かって一体となって取り組めるようになります。
まとめ
バックキャストは、先に設定した未来を実現するための手段や施策を考える思考方法です。画期的なアイデアを創出できる一方で、非現実的なアイデアを実践しようとすると余計なコストがかかってしまうというデメリットもあります。今回、解説した内容を参考に、バックキャストを経営に取り入れてみましょう。