各市場における商品の増加により、登場当時の価値が低下し、一般化する「コモディティ化」が問題視されています。コモディティ化とは何か、言葉は耳にしたことがあってもその詳細まで理解できていない人もいるでしょう。
今回は、コモディティ化の概要や発生要因、コモディティ化の影響や防止策について解説します。コモディティ化の事例も紹介しているので、自社製品における課題解決にお役立てください。
コモディティ化とは
コモディティ化とは、差別化が困難になった製品・サービスのことです。生産時・発表時には最新かつ画期的だったものが、一般化によりその価値も平均化してしまうことがコモディティ化を指します。
昨今の市場では、商材における品質の高さや利便性は必須項目とされています。そのため、いかに優れた商材でも多くの競合他社が似たような施策を講じているため、コモディティ化が発生しやすいのが現状です。
コモディティ化発生の要因
コモディティ化は主に、商材の一般化が原因で発生します。ここでは、コモディティ化発生の要因を以下の視点で深掘りします。
- 供給過多
- 技術の高度化
- 海外製品の輸入
- モジュール化
- 市場主義
供給過多
品質や機能の類似する商材が市場に出回り、需要よりも供給が上回ることでコモディティ化が発生します。類似商材が出回ると、ユーザーにとっての差別化要素は「価格」になるのが実情です。業界内・企業間で価格競争が激しくなり、売上確保のために無理なプライスダウンを実施することで、さらなるコモディティ化が懸念されます。
技術の高度化
企業ごとの基礎技術が時代を追うごとに進化し、技術レベルでの差別化が難しくなったこともコモディティ化が進行する要因です。IT化など、技術をさらに発展させるためのツールも潤沢になっていることから、基本的な技術レベルの基準そのものが高まっているといえます。結果、技術面での差別化が困難になり、コモディティ化につながります。
海外製品の輸入
海外は日本と比べて人件費などを抑えやすい傾向にあるため、より低コストで品質の高い製品を製造できます。日本製の製品よりも安く、かつクオリティが変わらないのであればユーザーは海外製品に魅力を感じます。海外製品の需要が高まると、競合が日本にいなくても海外の価格に合わせなければならないため、コモディティ化を促進してしまうでしょう。
モジュール化
モジュール化とは、ルールや規格に基づき標準化された部品による製品開発のことです。部品を一から開発するより、モジュール化された部品を使用した製品開発の方が、企業にとってのコストダウンになります。しかし、競合各社がモジュール化した部品で製造を行うと、商材のクオリティが均一化されてしまうため、コモディティ化のリスクがあります。
市場主義
市場主義とは、市場における多数派のニーズに優先して応えることです。ニーズが多いことはマイナス要因ではありませんが、同じターゲットの競合が多いことを示します。多数派のニーズを狙うあまり品質の均一化や価格競争が激化し、商材の独自性が失われてコモディティ化することがあります。
コモディティ化による影響
市場全体における影響力があるコモディティ化について、企業側・消費者側両方の側面から見てみましょう。
企業側の影響
コモディティ化によって企業側が受ける影響は、経営難に陥りやすいことです。価格競争が激化すると、どうしても商材の価格を落とさなければなりません。価格の下落により十分な利益が確保できなくなり、経営に悪影響を与える可能性があります。ただし、コモディティ化が起こることは「商材自体は手に取られやすい」状態ともいえます。そのため、コモディティ化を脱却する方法さえ見つけてしまえば、大きな利益を確保することは可能です。
消費者側の影響
消費者の目線だと、コモディティ化はメリットが多くあります。例えば、コモディティ化によって一般化が進んだことで、各種商材に添付されているマニュアルを読まなくても商材を正しく取り扱えるようになりました。また、価格が軒並み下がったことで、商材を入手しやすくなるのも消費者側のメリットです。
コモディティ化の防止策
ここでは、コモディティ化を防止するための手段として推奨される、以下3つの方法について解説します。
- 競合との差別化
- 消費者特性に応じたターゲット設定
- ブランドの強みを確立する
競合との差別化
コモディティ化を防止するためには、以下の手法を用いて競合との差別化を図るべきです。
- ユーザーの潜在的課題を解決できる商材の展開
- モジュール化が困難な商材を考案
- より高い技術を追求した工程を加える
- モノではなく体験を届けるよう意識する
- 自社特有の付加価値を見出す
すでにある製品がコモディティ化されていない状態であれば、まずは価格面などから差別化を図りましょう。
消費者特性に応じたターゲット設定
コモディティ化を脱却させたい商材には、関与度・判別力・知識の3つが高いユーザーをターゲットに据えるべきです。これらがある程度高いユーザーならば、自社商材の価値を理解し、対価を払ってくれると考えられます。例えば高級志向の飲食店であれば、近年注目されているデリバリーなどの「手軽な」サービスは提供せず、高級志向に沿ったホスピタリティを重視するといった考え方です。
ブランドの強みを確立する
自社ブランドを確立することで、コモディティ化を脱却できます。商材の特徴・価格以外に価値を感じられるブランドを確立できれば、ファン層の獲得と競合との差別化を同時に実現することが可能です。市場の成熟により、商品の特徴や価格以外に価値を求めるユーザーも多いため、自社独自の魅力を追求したブランドの確立は必須といえます。
コモディティ化の事例
実際にコモディティ化を脱却するためには、商材や企業別の事例を把握しておくことで自社の脱コモディティ化に落とし込みやすくなります。自社商材がコモディティ化しているか自覚するうえでも事例について把握することは大切です。ここで紹介する、商材・企業別の事例を参考に、コモディティ化脱却を図りましょう。
コモディティ化しやすい商材の事例
コモディティ化しやすい商材の事例と、コモディティ化しやすい要因をまとめています。
商材 | コモディティ化要因 |
コンビニコーヒー | ローソン・ファミリーマート・セブンイレブンなど、大手コンビニが揃って提供しているため価格が低い |
牛丼 | 価格以外の差別化が難しい |
スマートフォン | 機能・デザイン面での差別化が難しい |
上記はいずれも日々の生活において、利用する人が多いものです。それぞれ提供する企業ごとに味や品質など多少の違いはあるものの、大まかな違いはなくコモディティ化しているといえます。
コモディティ化を防止した企業の事例
自社商材のコモディティ化を課題とし、防止した企業の事例は以下を参考にしてください。
企業名 | コモディティ化防止策 |
無印良品 | ユーザーそれぞれに異なるニーズに対応する「MUJI SUPPORT」と呼ばれるアドバイザーの設置インテリア・収納・家具組み立てなどジャンル別のアドバイザーを設置することでユーザーが常に相談できる環境を実現 |
Apple社 | 自社製品に対する「管理」を重視することで製品・サービスの品質を維持従来の携帯電話から音楽を聴ける携帯電話にコンセプトを変更 |
キットカット | 「きっと勝つ」というメッセージを通じて合格祈願・受験のお守りとしての価値提供 |
スバル | 「あなたとクルマの物語」をテーマにしたコマーシャル「Your story with」の制作車を移動手段ではなく人生の一部として伝える機能・性能ではなく「人」にフォーカスした存在価値の提供 |
まとめ
商材における品質や価格の一般化により、さまざまな業界・企業がコモディティ化を問題視しています。コモディティ化は消費者のニーズこそ高いものの、差別化という視点で企業にとっての課題になっています。市場競争を生き抜くためには、コモディティ化の要因を把握し、そのうえで自社ならではの魅力を見出し、提供することが大切です。他社の事例なども参考に、自社商材におけるコモディティ化の脱却を図りましょう。