転職先を探す際、福利厚生を重視する方も多いでしょう。種類によっては生活費に大きく関わる場合もあるため、妥協したくないという方が大半でしょう。
今回は、福利厚生の対象者や種類などの基本情報を解説しながら、福利厚生の充実した企業に転職するメリットを紹介します。また、福利厚生の内容を重視して転職するうえでのポイントや、福利厚生だけで企業を選ぶことの危険性についても解説します。福利厚生を重視して転職を進めたい方はもちろん、現職の福利厚生に関する不満を抱えている方も、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
福利厚生とは
福利厚生とは、従業員本人やその家族の生活・健康を向上させるための施策・取り組みのことです。従業員が充実した生活を送れるよう、企業側が提供するサービスのようなものといえます。福利厚生は給与や賞与などの「報酬」以外で、企業から従業員に対して与えられるものです。
福利厚生の対象者
福利厚生は正社員のみならず、パートタイマーやアルバイト従業員も対象になります。企業に「所属」していれば、原則として全ての従業員が福利厚生の対象者です。とはいえ、2020年以前は、非正規雇用者は待遇面で正規雇用者との格差がありました。しかし、有期雇用労働法と労働者派遣法の改訂で同一労働同一賃金が実現して、格差は改善されるようになりました。その結果、どのような雇用形態でも、等しく福利厚生の恩恵を受けられるようになったのです。
企業が福利厚生を取り入れる理由
福利厚生を充実させることで、優秀な人材を確保しやすくなります。福利厚生の内容に惹かれ、入社を決める場合もあります。従業員のモチベーションにつながる要素でもあるため、中小企業でも多くの企業が福利厚生を取り入れています。
また、福利厚生が充実している企業と認知されることで、社会的信用度が向上する点も企業側のメリットです。先に触れた人材確保につながるため、福利厚生の充実に目を向けて既存の施策を見直す企業も多くあります。
福利厚生の種類
福利厚生には、法的福利厚生と法定外福利厚生の2種類があります。ここでは、それぞれに分類される主な福利厚生を紹介します。
法定福利厚生
法定福利厚生に該当する福利厚生は、以下の通りです。
- 健康保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 失業保険
- 厚生年金保険
- 労災保険
- 子育て拠出金
上記の福利厚生は、入社した時点で必ず加入するものです。雇用保険や労災保険は労働保険で、それ以外の福利厚生は社会保険に分類されます。
企業特性にかかわらず、法律で定められた制度として最低限設定されているものがほとんどです。反対に、これらが設定されていない企業は違法に経営されている可能性があるため、注意してください。
法定外福利厚生
以下に関連するものが、主な法定外福利厚生です。
- 通勤・住宅(通勤手当、住宅ローン補助)
- 健康・医療(企業内の医務室設置、カウンセリング実施)
- 慶弔・災害(結婚・出産祝い、弔慰金、災害見舞金)
- 育児・介護(育児・介護休暇、短時間勤務制度、社内託児所)
- 自己啓発(資格取得補助、各種セミナー開催)
- 文化・体育・レクリエーション(社員旅行、運動施設の割引、社内サークル活動補助)
- 助産形成(勤労者財産形成促進制度、持ち株制度、年金費用補助)
上記の福利厚生は、企業が「任意」で導入する制度です。法律による規定がないため、企業特性や方向性に応じて自由に項目を設定しています。企業のアピールポイントとして掲示されることも多く、転職先を比較する条件としても機能します。
福利厚生が充実している企業に転職するメリット
福利厚生を充実させることで、企業には人材確保や社会的信用度向上などのメリットがあります。ここでは、福利厚生が充実している企業に転職する、求職者側のメリットを2つ紹介します。
生活費の負担を軽減できる
福利厚生は保険関連だけでなく、住宅や通勤、健康面などをサポートするさまざまなものがあります。例えば、家賃補助を受けられる企業であれば、毎月の家賃の支払いに頭を悩ませることなく、仕事やプライベートを充実させることができます。生活に関わる手当が充実すれば、金銭面に余裕ができてきます。
キャリア形成につながる場合がある
資格取得補助やセミナー開催などを福利厚生として取り入れている企業であれば、自身で負担せずにキャリア形成が可能です。キャリアを積んで従業員自身の自信やモチベーションが向上すれば、仕事上での生産性向上や成果アップが期待できます。自身の理想とするキャリアがあるのであれば、福利厚生を通じて実現できるかで転職先を検討してみてもよいでしょう。
転職活動における福利厚生のチェックポイント
転職活動中に福利厚生を比較する際は、どのような点を意識すればよいのでしょうか。ここでは、福利厚生の内容で事前に確認すべきポイントを紹介します。
現職と同じ福利厚生制度があるか
少なくとも、現職と同じ福利厚生制度が最低限備わっていないと、転職しても待遇面の不満を感じやすくなります。法定福利厚生制度が備わっているかはもちろん、それぞれの保障内容・支給金額なども事前に確認しておくべきです。法定外福利厚生に関しては、現職の福利厚生と大きく変わらないかどうかを重視してください。現職と制度自体は同じでも、実際に受けられる恩恵にどのような違いがあるのか把握しておくことも大切です。
自分にとって必要最低限の福利厚生は何か
現職と同じ福利厚生があるか確認するのと同様、自分にとって最低限必要な制度が何か客観的に分析しておくことも大切です。例えば、将来的に家族を介護する可能性がある場合は、介護休暇が充実しているかを判断基準にします。働きながら資格を取得したいのであれば、資格取得補助がある企業を転職先の候補にします。このように、自分の将来に必要となるであろう福利厚生を把握したうえで、該当する制度がある企業を転職先の候補にするといいでしょう。
福利厚生だけを基準に転職先を決めるのは危険?
福利厚生制度は、充実した生活や働き方を実現するために重要なものです。しかし、福利厚生制度の充実のみを重視し、転職先を決めてしまうことはリスクが高いといえます。
なぜなら、福利厚生制度そのものが、必ずしもずっと同じように継続するとは限らないからです。例えば、現段階で短時間勤務制度が充実していても、企業が制度自体を撤廃する可能性もあります。資格取得補助やセミナー開催を実施していても、経営難などを理由に取りやめてしまうこともあります。
企業の事業内容などはめったに変わることはありませんが、福利厚生は企業の方針や経営状況によって変動する可能性の高いものです。あくまで「転職先を比較する材料のひとつ」として認識しておくべきです。
まとめ
今回は、福利厚生の内容や種類について紹介しました。結論から言うと、転職先を決めるうえで福利厚生は非常に重要なものです。自身や家族の生活を充実させたり、今後のキャリア形成をスムーズにする役割があります。しかし、福利厚生のみを重視して転職先を決めるのは、危険であることも理解しておくべきです。
転職先を決める際、福利厚生を重視したいと考えている方も多いでしょう。主な福利厚生の種類とあわせて、本記事の内容を転職時の参考にしてくだされば幸いです。