求職者の中には、スキルの有無で転職が左右されるのか気になる方もいるでしょう。この記事ではスキルがない場合の転職における注意点と、年代別で見る「スキルがない」と感じたときにやるべきことを紹介します。
スキルがない状態での転職は可能か
スキルがない状態での転職は、求職者の年齢や経験値などによって結果が左右されると考えられます。その理由は、年齢によってはポテンシャルが高く成長が見込めるケースと、ゼロから経験を積む必要があると判断されるケースがあるためです。
厚生労働省が公開した「令和3年雇用動向調査結果の概況」を見ると、25〜39歳の転職では、全体の20%の労働者賃金が1割以上減少していることが分かります。
区分 | 増加 | 1割以上の増加 | 1割未満の増加 | 変わらない | 減少 | 1割未満の減少 | 1割以上の減少 |
19歳以下 | 44.0 | 20.4 | 23.6 | 33.2 | 21.9 | 15.1 | 6.8 |
20~24歳 | 47.1 | 33.3 | 13.8 | 27.0 | 24.6 | 9.1 | 15.5 |
25~29歳 | 42.9 | 33.6 | 9.3 | 25.0 | 30.8 | 10.3 | 20.5 |
30~34歳 | 38.4 | 28.6 | 9.8 | 27.6 | 32.4 | 11.0 | 21.3 |
35~39歳 | 36.8 | 26.7 | 10.0 | 33.0 | 29.2 | 9.0 | 20.2 |
引用:厚生労働省|令和3年雇用動向調査結果の概況
表に目を通すと、転職は可能であるものの、ゼロからのスタートになるために賃金が安くなることが分かります。もしスキルがないまま転職すれば、初心者・未経験者に区分されやすく賃金が減少する可能性が考えられます。
スキルがない状態で転職する際の注意点
スキルがない状態で転職するとき、どのような点に注意すべきなのでしょうか。具体的には以下の4つです。
- 年収が下がりやすい
- 配属先に馴染めないケースがある
- 上司が年下になる場合がある
- 男性・女性で厳しさの種類が変わる
これから転職活動を始める方は、それぞれの詳細を押さえておきましょう。
年収が下がりやすい
厚生労働省が発表した賃金変動状況別割合を見ると、転職によって賃金に1割以上減少が見られたことが分かります。
これは転職によって0からのスタートになるために、賃金が減少してしまうためです。もしスキルがないまま転職すると、低い賃金を条件に採用が決まるか、書類選考で落ちてしまう可能性が考えられます。
スキルがあれば業務に応じて活用しながら仕事に取り組めることから、即戦力につながると判断されます。即戦力につながれば企業にとって有益な人材であると判断されるため、最初の賃金は安くても、後に増加する可能性があります。
このようにスキルがない場合の転職は、マイナススタートとなりうることを視野に入れておきましょう。
配属先に馴染めないケースがある
ほかにも、配属先に馴染めない可能性があります。スキルがないことによって初心者と同じ扱いを受けることから、年齢によっては配属先の従業員と馴染めず、孤立してしまうことがあるのです。
スキルがないために教育に時間を要するため、忙しい部署によっては自分から動いて仕事を見つけなければならない場合もあるでしょう。
上司が年下になる場合がある
理想的な職種を見つけたとしても、上司が年下で合わないと感じることもあります。年齢によっては20代後半から30代後半にかけて転職する人も多く、この場合は転職によって上下関係が複雑化することが懸念されます。
男性・女性で厳しさの種類が変わる
転職先によっては、男性・女性で仕事の厳しさに大きな違いが出ることもあります。企業によって価値観や社風が違うため、実際に入社してみなければわかりません。
働き方の多様化により男性・女性の違いによる働き方の差は少なくなっているものの、子育てやライフステージの変化など、男女の違いが現れやすい視点での厳しさを感じる可能性もあります。
【年代別】転職活動中にスキルがないと感じた際にやるべきことは?
スキルがないと気付いたときは、できることから積極的にチャレンジし、自分をブラッシュアップすることが大切です。
ここでは「20代で転職する場合」「30代で転職する場合」「40代で転職する場合」でやるべきことを解説します。
20代で転職する場合
20代の場合、スキルがなくても応募できる企業が多くあります。まだまだポテンシャルが期待されやすい年齢であるため、できれば早いうちに転職を決めるのが望ましいでしょう。
なお20代は、結婚や育児といったライフスタイルの変化も考えられます。ライフスタイルの変化で一度職場を退き、再度現場に戻ることを想定したスキルを会得することも大切です。
30代で転職する場合
30代でも求人数は豊富です。まだ若く将来性も期待できることから、未経験の職種であっても転職は可能です。
しかし年齢的には、管理職やチームリーダーなどマネジメント経験を求める企業もあります。30代で転職するときは、マネジメント経験など今後に活かせるスキルを身につけた後に転職するか、経験の棚卸しをして、即戦力になりうる働き方をアピールすると良いでしょう。
40代で転職する場合
40代での転職は20代や30代よりも求人数が限られ、ハードルが高くなります。40代は即戦力を最低条件とする企業も多く、スキルがない状態での転職は厳しい道のりです。
もしアピールできるスキルがなく転職先に迷ったときは、これまでの経験や知識を活かせるよう、現職と同業種を選ぶと良いでしょう。
スキルがない状態での転職を成功させるポイント
スキルがない状態でも転職はできる一方で、年齢によってはハードルが上がり、厳しくなるのが現実です。スキルがない状態で転職を成功させるためには、以下3つのポイントを踏まえて検討しましょう。
- 未経験可の求人に応募する
- 転職理由を明確にする
- 転職後にスキルを磨ける職場を見つける
未経験可の求人に応募する
スキルがない状態で転職を成功させるなら、即戦力やスキルを求められることの少ない未経験者歓迎の求人を選びましょう。
教育制度や研修制度など今後につながる制度を導入する企業だと、スキルアップも目指せることから、企業にとって貢献できる人材へと成長できるでしょう。
転職理由を明確にする
スキルがない状態で転職するなら、転職理由を明確にすることも大切です。転職理由を明確にするには、現職で努力したことや乗り越えたこと、納得できなかったことなどを洗い出してみましょう。例えば、自身の考案したオペレーションで部署全体の働き方を円滑にした、難しい成果をチーム全体で達成するうえで貢献したなど、前向きな理由を並べてみることも大切です。納得できなかったことや不満に関しては、なぜ納得できなかったか、結果どのような対策をとったかなども明確にしましょう。
転職後にスキルを磨ける職場を見つける
スキルがない状態に不安を感じるなら、スキルアップ可能な職業を探すのも効果的です。スキルは職業によって求められるものが異なるため、まずは好きなことや興味のあるものなどからスキルアップにつなげられるものを探すと良いでしょう。
身につけやすいスキルを把握しておくことも大切
スキルがない状態での転職に不安を感じる方は、身につけやすいスキルを習得するのがおすすめです。
ここでは特におすすめしたいスキルを8つ紹介します。
名称 | 特徴 |
プログラミング | ・コンピュータに何らかの指示を出し、効率よく動かすための技術 ・資格を取得しておくことで、Webプログラマーやゲーム系プログラマー、アプリケーションプログラマーなどさまざまな分野で活躍可能 |
Excelなどのツール(MOS) | ・Word、Excel、PowerPointなどを含むMicrosoft社の仕様スキルの証明資格 ・Microsoft Office Specialistと呼ばれ、国際資格の一種 ・MOSを取得することで、経理や事務など企業をサポートする職種で活躍可能 |
簿記・会計 | ・簿記は営業取引や経営活動を帳簿にする技術 ・会計は「公認会計士」「税理士」「ファイナンシャル・プランニング技能士」があり、いずれも難易度の高い国家資格 ・いずれも取得すれば多くの企業で活躍できる ・簿記、会計のスキルを活かせば個人事務所を設立することも可能 |
英語(外国語) | ・多様な働き方が求められる企業に有利な資格 ・英検や仏検、中国語検定などがある ・世界各国に支社がある企業に転職を検討するなら取得しておきたい資格の一つ |
ビジネス実務マナー検定 | ・正しいマナーが身についていることを証明する資格 ・就職、転職活動で評価されやすい ・学歴、年齢不問で受けられる |
営業 | ・営業職に転職を希望するなら「情報処理技術者能力認定試験 基本情報技術者」が有効 ・情報処理技術者能力認定試験 基本情報技術者はITを活用した戦略の立案や設計、運用における能力や技能を学べる |
法務 | ・法務の仕事を検討するなら「弁護士」「司法書士」「ビジネス実務法務検定」などがおすすめ ・弁護士は法務関連の資格の中で最も高い国家資格に該当し、法務関連の業務全般に携わることが可能 ・司法書士は国家資格で、取得すると不動産や法人の登記を代理で行えるほか、裁判所や法務局へ提出する書類を作成できる ・ビジネス実務法務検定は、ビジネスシーンには欠かせないコンプライアンスや法令遵守能力の基礎や実践的な法務知識を効率よく身につけられる |
人事・総務 | ・人事部に転職を検討するなら「キャリアコンサルタント」や「メンタルヘルス・マネジメント®検定」がおすすめ ・キャリアコンサルタントは社員の職業選択や職業能力の開発などをサポートする人材 ・メンタルヘルス・マネジメント検定は、職場のメンタルヘルスケアを強化し、社員に正しい知識を身につけられる他、職場にとって相談しやすい人材として活躍できる |
それぞれ難易度が高いものや資格取得までに時間を要するものが多いものの、知識と経験を身につけることで転職のハードルがぐっと下がります。
将来性の高いスキルを身につけておけば即戦力採用にもつながることから、時間や金銭面に余裕がある方はチャレンジしてみると良いでしょう。
まとめ
今回はスキルがない状態での転職について解説しました。スキルがないことは、転職におけるマイナス要因になる場合もあります。しかし、未経験可の求人への応募や転職理由の明確化、転職後にスキルを磨ける職場を探すことで不利にならないこともあるでしょう。
もしスキルがないことに不安を感じるのなら、本記事で紹介した身につけやすいスキルを参考に、自身のスキルアップに挑戦してみてはいかがでしょうか。スキルが身につけば即戦力としてアピールしやすくなるほか、自信にもつながります。