クリエイティブな仕事に就いている方が転職活動するうえで、これまでに制作した作品や成果物の実績はぜひともアピールしたいポイントです。しかし、履歴書だけで自分の技量を伝えるのは難しいところ。そこで役立つのが「ポートフォリオ」です。今回は、転職で失敗しないためのポートフォリオの作り方や企業側が見るポイント、職種ごとの作成のコツについて詳しく解説します。
転職において重要なポートフォリオとは
ポートフォリオは、自分が今までに作成した作品や成果物をまとめた資料を指します。履歴書や職務経歴書だけでは伝わりきらない技量や実績などを示せるため、クリエイターの転職活動には欠かせない資料といえるでしょう。作品を一覧にしただけの作品集とは異なり、応募先の企業が求める条件を有した人材であることをアピールする視点が重要になります。
履歴書・職務経歴書との違い
ポートフォリオは、履歴書や職務経歴書と同様に、応募書類の一部として紙やPDFで提出します。いずれも自分の情報を応募先の企業に知ってもらうためのものですが、内容には次のような違いがあります。
履歴書・職務経歴書
学歴や職歴、所属部署や関わったプロジェクトを文面で伝える書類
ポートフォリオ
制作した作品や成果物をもとに、スキルや得意分野、業務への取り組み方などを伝える資料
転職活動で使用する場面
転職活動においてポートフォリオを使う場面は、大きく分けて書類選考時と面接時の2つです。クリエイター職の転職活動では、書類選考の段階でポートフォリオの内容を重視します。応募書類の1つとして提出を求める企業も多く存在します。また、最終段階である面接でもポートフォリオを用いるケースがあります。ポートフォリオの内容を元に、制作にかかる時間やスキル、狙いなどを質問されることもあるでしょう。
採用担当者が見ているポイント
ここでは、企業の採用担当者がポートフォリオのどの部分を重視して合否を判断しているのか具体的に解説します。
制作スキル
制作スキルは、単純な技量や腕前のことを指しています。作品そのもののレベルや制作に要した時間、制作環境などをもとに判断します。そのため、応募先の企業が求めるスキルが伝わりやすい作品をチョイスすることも大切です。
課題解決能力
クリエイティブな仕事は、クライアントの課題をいかにして解決するかという力が問われます。そのため、要求される内容を正確に捉え、理想通りに表現する課題解決能力はとても重要です。制作の意図や思考プロセスはもちろん、ポートフォリオそのものの作り方からも企業からの要求に応えようという思いを伝えられるとより良いでしょう。
創作物のジャンル
どのようなジャンルが得意なのかを正確に伝えることは、双方にとって大切です。例えば「デザイン」といっても、グラフィックデザインやWebデザイン、インテリアデザインやファッションデザインなど多岐に渡ります。得意分野を具体的に示すことで、企業にとっても採用後に活躍する姿がイメージしやすくなるでしょう。
ポートフォリオの作り方
ここでは、ポートフォリオを作る際の流れを6つに分けて紹介します。
目次
冒頭に目次を付けるかどうかで、ポートフォリオの印象は大きく変わります。ポートフォリオを手に取る方が、必ず内容に強い興味を抱いているとは限りません。はじめに目次が目に入ることでポートフォリオの全体像を伝え「どのような内容をどのくらい読めばいいのだろう」というストレスを軽減できます。
自己紹介・プロフィール
ポートフォリオに掲載するプロフィールには、次の内容を載せるようにしましょう。
- 氏名
- 生年月日
- 顔写真
- 保有資格
- 使用ツール
- 自己PR
- 連絡先
- SNS
IllustratorやPhotoshopなどの使用可能ツール、InstagramやYouTubeなどの作品掲載用SNSアカウントを記載することで、履歴書や職務経歴書だけでは伝わらない強みをアピールできます。自由な書式である分、他の応募書類と内容が大きく重複しないように注意しましょう。
自身のスキルレベル
自分自身の実力を正しく認識してもらうために、スキルはできるだけ詳しく記載しましょう。デザイナーの場合はIllustrator・Photoshop、プログラマの場合はPHP・Pythonなど、ツールや言語を具体的に述べ、経験年数やスキルレベルを簡潔に説明すると良いでしょう。
将来のビジョン
理想とする将来像やこれから身につけたいと考えているスキルについても記載しておくべきです。将来のビジョンが募集職種と重なる場合、入社後意欲的に取り組む姿が思い浮かび、好印象につながるでしょう。
作品紹介
ポートフォリオにおいて最も重要なのが作品紹介です。どのような職種であっても、ただ代表的な制作物を並べれば良いわけではありません。求人情報や企業のホームページなどに掲載されている情報を元に、企業が求めている内容を的確にアピールできるかどうかで評価は大きく異なるでしょう。作品ごとの掲載判断や掲載する順番によっても印象は変わるため、掲載内容は時間を掛けて検討すべきです。
仕事のスタイルと対応領域
クリエイティブ職において、実力や高いスキルは確かに大切です。しかし一方で、会社組織の一員としてどのように仕事をすすめるか、またどのような領域であれば戦力として対応できるのかといった点も、採用担当者は注視しています。フローチャートなどの図を用いることで、視覚的に伝わりやすいポートフォリオになるでしょう。
転職を成功させるポートフォリオのポイント
ここではポートフォリオ作りにおけるポイントを紹介します。転職活動を成功させるためにも、次の4点を意識してみましょう。
適切なサイズで作成する
ポートフォリオはA4またはA3サイズに統一すべきです。履歴書や職務経歴書と同じ応募書類の1つとして、受け取る相手が取り扱いやすいサイズに揃えることをおすすめします。データで送る場合サイズは関係ないと思いがちですが、企業側が社内の採用担当者間で印刷したものを共有するかもしれません。ビジネスマナーとして相手のことを思いやり、適切なサイズで作成しましょう。
思考プロセスを記載する
作品などの成果物を掲載する場合、作品だけでなく完成までの思考プロセスを併記するよう心がけましょう。どのような意図でその結果に至ったかを解説することで、作品を見ただけでは分からないあなたの深い考えやこだわりをアピールできるようになります。
常にアップデートをする
一度作ったポートフォリオをずっと使い回すことはおすすめできません。新たな成果物や実績が増える度に、ブラッシュアップすべきです。また、企業によって求める人物像はさまざまです。ポートフォリオは応募先に合わせた内容になるように、毎回見直しましょう。
ポートフォリオ作成サービスを利用する
ポートフォリオの作成には、手間や時間がかかるものです。どうしてもポートフォリオを作る時間がない方や、決まった書式がない中で全ての内容を考えるのが苦手な方には、ポートフォリオ作成サービスの利用がおすすめです。必要事項を入力するだけで、無料で簡単にポートフォリオを作れるサービスが数多く公開されています。デザインもさまざまで、作品の雰囲気との相性もチェックすべきです。気になる方はぜひ検討してください。
職種別で見るポートフォリオ作りのコツ
最後に、ポートフォリオ作りのコツを職種ごとに紹介します。仕事内容によって意識すべき点は異なるため、それぞれの職種におけるポイントを確認してみましょう。
Webデザイナー・Webディレクター
Webデザイナーの場合は、実際にデザインしたWebページの事例やそのデザインの意図をアピールしましょう。見やすさや使いやすさは最低限の条件であり、コンセプトを論理的に解説できるような説得力のある説明が理想的です。Webディレクターになると、完成したWebページよりも、Webサイト制作の進行管理能力こそ企業が知りたがる情報です。課題解決力やスケジュール管理、リーダーシップなど、担当した領域とあなたのアピールポイントが伝わりやすい内容を心がけましょう。
Webデザイナーとはどんな仕事?必要なスキルや将来性、適性について解説
Webディレクターとはどんな仕事?適性や将来性、フリーランスとして活躍するためのポイントも解説
エンジニア・プログラマ
エンジニアやプログラマの場合は、スキルのミスマッチを防ぐためにも持っているスキルや担当したプロジェクトをできるだけ細かく記載することが大切です。関わったプロジェクトにおける役割や使用した言語について詳しく述べ、同時にコンセプトやこだわったポイントについても説明できるように準備しておきましょう。
Webライター
文章を作り出すWebライターも、ポートフォリオを用意すべき職種の1つです。成果物を提出する際は、文章だけでなく掲載されたWebページのキャプチャ画像などを挿入することで、視覚的にも伝わりやすいポートフォリオになるでしょう。掲載ページの閲覧数など、分かりやすい実績がある場合は、あわせて記載します。
企画職
商品企画やマーケティングといった分野を担うのが企画職です。これまでに携わったプロジェクトの内容や実績については、数字も交えて具体的な内容を示しましょう。また、企画職だからこそ応募職種に関わる企画書を作成して、自分のスキルや提案力をアピールしてみてもいいかもしれません。
まとめ
クリエイターの転職には欠かせない、ポートフォリオの作り方や要点について解説しました。クリエイティブ職において、例えば「プログラミングができる」という情報だけで企業が採用を判断することは困難です。具体的なスキルはもちろん、仕事に取り組む姿勢や作業期間などさまざまな情報が伝わることで、初めてスタートラインに立てます。転職活動の結果に直結するポートフォリオをしっかり作り込み、理想通りの転職を実現しましょう。