転職時の面接でも、当然のように自己紹介が求められます。基本的には自身のベースとなる情報を言語化すれば問題ないものの、自己紹介を求められる理由やコツなどを理解しておく必要があります。今回は、転職の面接で役立つ知識を紹介します。自己紹介の基本項目をおさらいし、自己紹介が求められる理由や成功のコツ、注意点などに触れていきましょう。記事の最後では自己紹介の例文も紹介しているので、面接時の参考にしてください。
なぜ転職の面接で自己紹介が求められるのか
そもそもなぜ面接で自己紹介が必要なのか、疑問に感じる方もいるでしょう。ここでは、面接で自己紹介が求められる理由について解説します。
自己紹介を通じて求職者の人柄を把握するため
面接官は自己紹介で得た情報をもとに、その後の質問や流れを柔軟に変化させます。自社の業務に応じた質問を織り込んでくる場合が多いため、自己紹介時にはできるだけスキル面に触れた内容を話すことがおすすめです。
求職者の緊張をほぐすため
自分自身について話すことで、緊張感が多少ほぐれます。リラックスした状態で面接を進めることができれば、自身の思いやポテンシャルを十分に伝えられるでしょう。また企業にとっても、求職者の本音を聞き出す空気感を作れるメリットがあります。
コミュニケーション能力を把握するため
自己紹介での話し方や受け答えを通じて、求職者のコミュニケーション能力を判断する企業もあります。緊張を隠しきれないまま自己紹介を進めてしまうと、コミュニケーション能力に乏しいと判断されるかもしれません。本番に対する強さや質問に対する応用力など、働くうえで重要な能力を自己紹介の段階から見られていると意識しておきましょう。
転職の「自己紹介」と「自己PR」の違いは?
転職の面接の際に自己紹介と混同されやすいのは「自己PR」です。自己PRとは、自分の持つスキルや強み、入社への熱意を主体的に伝えることです。一方、自己紹介とは「自分が何者か」を伝えることです。面接時の自己紹介の際はセットで伝えるようなシチュエーションもありますが、目的が違うため混同しないように準備しましょう。
面接の自己紹介で伝えるべき5つのポイント
転職時の面接における自己紹介では、以下に挙げる項目について触れるのが一般的です。
- 氏名
- 志望動機
- 現職(前職)の業務内容・役割
- 現職(前職)での経験・実績
上記は、自己紹介の基本的な流れでもあります。それぞれの内容について、詳しく解説します。
氏名
氏名を伝える際は特に難しいことを考える必要はありません。「○○と申します。」と、シンプルに伝えれば問題ないでしょう。面接のひと言目ということもあり緊張してしまうかもしれませんが、面接官が聞き取りやすいようハキハキと氏名を伝えましょう。
志望動機
志望動機を伝えるうえで意識したいのは「当社でなくてもいいのでは?」と、面接官に思わせないことです。あくまで自己紹介であるため、企業について深掘りした内容を話す必要はありません。しかし「自分にこういう特性があり、その特性を御社の○○という業務で活かしたいと考えたため」など、自分と企業を結びつけるような工夫が必要です。
企業によっては、質問の中で「なぜ当社を志望したのか?」と聞いてくるでしょう。しかし、自己紹介の中で志望動機も含めた内容を求めてくる企業も少なくありません。
現職(前職)の業務内容・役割
現職(前職)での業務内容、勤務期間や役職などを含めてできるだけ詳細に伝えましょう。社名や部署名などはぼかさず、正確な名称で話すことが大切です。もし面接を受ける企業と現職(前職)の業務につながりが見つけられない場合は「自分自身をリセットして新たなノウハウを身につけたい」など、関連性のないことがネガティブな要因にならないよう工夫しましょう。
現職(前職)での経験・実績
現職(前職)の業務で得たスキルや知識、成功体験などを自己紹介に盛り込みましょう。漠然とした結果ではなく、自分が主体で出した仕事の成果があれば積極的に伝えてください。また、その経験をふまえて自分の内面がどのように変化したかを伝えることも大切です。現職(前職)の経験を経て自分がどう変化し、さらにその変化を転職先でどう活かしたいかを、客観視したうえで伝えましょう。
締めくくりの言葉と意気込み
自己紹介の最後は、締めくくりの言葉と入社への意気込みを伝えます。すべて話し終えた後に「よろしくお願いします」と、あいさつの言葉を添えましょう。締めくくりの印象が良く、面接官にはっきりと終わりがわかるようにすると、面接全体に良い印象を与えるでしょう。
転職活動ですぐに使える!面接の自己紹介のテンプレートを紹介
ここからは、自己紹介を作成するうえで押さえたい回答のテンプレートを紹介します。以下のテンプレートに当てはめていけば、簡単に回答文の雛形を作成できます。それをもとにして独自の形にカスタマイズし、練習していくのが得策です。面接本番の際は面接官の質問に合わせて、テンプレートの組み合わせを変えながら回答できるように練習しておきましょう。
<自己紹介の冒頭> |
○○と申します。 本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございます。 私は○○大学を卒業後、株式会社○○で営業アシスタントを2年間担当し、その後株式会社□□で3年間、法人営業に従事しました。2年目で契約数社内1位を獲得した実績があります。 |
最初に名前と現職での仕事内容や所属、資格・スキル・実績などを伝えます。
仕事内容については、具体的な社名や年数も簡潔に入れましょう。
<志望動機の伝え方> |
御社では事業拡大のため〇〇職の人材を募集されており、私の強みである〇〇の知識と経験によって御社の発展に貢献していきたいと考え、志望いたしました。 |
応募する企業の募集内容と、自分の強みの共通点を意識して話せるようにしましょう。
具体的な実績とあわせて伝えられると、即戦力としてアピールできます。
<今後について触れる場合> |
私は今後、営業戦略の精度とマネジメント能力を高め、新たに新規開拓営業の人材を育てることで、貴社の発展に貢献していきたいと考えております。 |
応募する企業の業界動向や将来性、ビジョン、共感しているポイントなどをもとに伝えると良いでしょう。
<締めくくりの言葉> |
さまざまな営業先で培ってきた顧客の潜在ニーズを捉える力を活かして、御社での営業活動に貢献したいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。 |
締めくくりの言葉はできるだけ簡潔にまとめ、最後に終わりであることを伝えるあいさつの言葉を加えましょう。
面接の自己紹介を成功させるコツ
ここでは、面接の自己紹介を成功させるために覚えておきたいコツをいくつか紹介します。
表情・目線・言葉遣いを身につける
できるだけにこやかな表情を意識し、面接官の目を見て話しましょう。緊張してしまうと、どうしても表情や目線まで意識を向けられません。しかし、自己紹介での印象は面接においてのスタート地点となることを意識したうえで、緊張をほぐす工夫をしましょう。
また自己紹介時は、正しい言葉遣いを意識することも大切です。敬語を使うのはもちろんのこと、略語や流行り言葉を使うことも避けましょう。
本番前にシミュレーションを行う
何度か触れているように、自己紹介は自分主導で進めるためどうしても緊張してしまいます。面接前に、自宅や会場付近でシミュレーションしておきましょう。ただ頭の中で進めるのではなく、実際に声を出して実践することがおすすめです。話す内容はもちろん、表情や目線、言葉遣いや話し方なども客観視して修正しておきましょう。
転職面接の自己紹介で不安がある方は、転職エージェントを活用して面接練習をするのがおすすめです。専任のキャリアアドバイザーが客観的なアドバイスを指導してくれるため、自分の弱点がわかります。
模擬面接をすることで想定外の質問にも対応しやすくなり、面接通過率を高められるでしょう。しっかりと準備して、転職活動に臨みましょう。
緊張して言葉に詰まっても慌てない
いざ本番になった途端、緊張しすぎて頭が真っ白になることもあるでしょう。もし言葉に詰まっても、慌てないことが大切です。自己紹介は「暗記した文を伝える場面」ではありません。あくまで面接官と「コミュニケーションを取る場面」と認識しておきましょう。言葉が出てこなくなっても、面接の場を設けてくれたことへの感謝を伝えられれば、それだけで気持ちが落ち着くでしょう。緊張して言葉が出なくても、感謝の気持ちを言葉にできるだけで良い印象を与えられるかもしれません。
面接の自己紹介に使い回せる例文を4つのケースで解説
実際の面接における自己紹介は、さまざまなパターンで質問されます。ここでは、面接時の自己紹介で使い回せる具体的な回答例文をケース別に紹介します。
自己紹介に志望動機を含めるケース
<例> |
〇〇と申します。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。 前職では株式会社〇〇の法人営業を担当しておりましたが、海外支店との取引も多く、取引事情の違う地域との実践を経験しました。 御社は海外への事業展開を進められており、今後東南アジア以外の販路拡大を進められている戦略に魅力を感じています。 私の強みである海外での新規開拓の営業経験と人材育成力で御社の発展に貢献していきたいと考え、志望いたしました。 本日はどうぞよろしくお願いいたします。 |
応募する企業に魅力を感じていることと、自分の強みをどう活かせるかを伝えると良いでしょう。
自己紹介に職務経歴や前職の実績を含めるケース
<例> |
〇〇と申します。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。 私は〇〇大学を卒業後、2社に在籍し合計8年間、法人営業の経験があります。 1社目の株式会社〇〇で大手食品会社の法人営業を5年経験し、営業職約300名中上位1割の成績を残せました。その後株式会社□□では精密機械の中堅企業の法人営業として目標売上高の150%を達成し、社内表彰を受けました。 これらの成果は、顧客ニーズを的確に把握するために密にコミュニケーションを取ることで信頼構築を心がけたことが大きく影響しています。 これまでの大手から中堅企業への営業経験を、御社の法人営業でも活かしていきたいと考えております。 本日はどうぞよろしくお願いいたします。 |
前職の実績だけでなくプロセスの説明を付け加えることで、転職先で活躍するイメージを与えましょう。
自己紹介と自己PRを合わせて説明するケース
<例> |
〇〇と申します。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。 私は1社目で営業職と企画職、2社目でサービス営業職の経験があり、営業戦略から営業、アフターサービスまでの一連の流れを経験してまいりました。2社目において、受注件数125%増を達成し、社長賞をいただきました。 私の強みは営業前のリサーチ力と聞き取り力です。取引先の担当者様の課題やリスクをしっかり聞くことで、潜在的なニーズをつかむことに注力してきました。さらにアフターフォローを徹底したことで信頼をいただき、次の取引につなげてきました。このような取引先に寄り添いながら信頼関係を築く力は、御社のお役に立つと思っています。 本日はどうぞよろしくお願いいたします。 |
企業が求めているものと自分のスキルや強みがマッチしていることや、貢献できることをアピールしましょう。
簡単に自己紹介してくださいと言われたケース
<例> |
〇〇と申します。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。 新卒から6年間、法人営業と新規開拓営業を経験しております。 直近では、他部署と連携しながらコンペで獲得する新規顧客開拓で、10名のチームリーダーとして組織営業を経験してきました。これまで5,000万円規模の大型コンペを勝ち抜いた実績があります。 御社の組織拡大において、これまでのチームマネジメントや人材育成の経験が活かせると考えております。 本日はどうぞよろしくお願いいたします。 |
「簡単に」と言われた場合は、できるだけ手短に要点をまとめて話すことがポイントです。基本情報と合わせて、1分程度で伝えましょう。
面接で自己紹介をする際の注意点
場合によっては、自己紹介で悪い印象を与えてしまうこともあります。ここでは、面接時の自己紹介に関する主な注意点を紹介します。
自分目線での自己紹介はしない
「私は○○ができるので、お役に立てると思います」など、自分主体の語り口は避けましょう。「私の○○という経験が、御社の役に立てると思い志望しました」といった言い方に置き換えてください。あくまで「企業にとって」どのようなメリットがあるのか考えられる話し方を意識しましょう。
企業特有のワードを使用しない
現職(前職)や業界に関連する特有のキーワードや、トレンドの言葉を多用しないようにしましょう。あくまで一般的な言葉や文に置き換えたうえで話すことが大切です。
仕事と関係のない話はしない
自分のことを話す場であるとはいえ、あまりにもパーソナルな部分の話は避けた方が良いでしょう。仕事において活かせる自身の性格や適性について話すことを前提にしてください。
できるだけ簡潔に話す
自己紹介は、面接の最初にすることがほとんどです。最初から長々と話してしまっては、その後の流れが崩れてしまうかもしれません。なるべく簡潔に伝える言い回しを意識しましょう。
話すことがない状態は極力避ける
趣味や実績などが少ないことで、自己紹介に入れ込める話題がないと悩む方もいるでしょう。その場合は、まず自分自身を客観的かつ広い視野で見直してください。一時的でも、没頭したことが何かあるはずです。働くことに結び付く項目を見つけ出し、自己紹介に活かしましょう。ただし、嘘をつくことは厳禁です。
まとめ
今回は、面接時の自己紹介に活かしたいポイントや注意点を紹介しました。自己紹介はコミュニケーション力や要約力を含め、面接で好印象を残すうえで非常に重要です。面接通過率を上げるには、ここまで紹介した回答例文をそのまま伝えるのではなく、過去の経験や応募する企業の情報を活かして、いかに自分の言葉で伝えるかがポイントになります。多くの練習を重ねることで、本番でスムーズに自己紹介できるように準備しましょう。
転職エージェントを活用すれば、臨機応変に対応できない場合のアドバイスなど、客観的に指摘してくれる環境を持てるメリットがあります。面接に不安がある方は、一度相談してみましょう。