ビジネスシーンでは目上の方と接する機会が多いため、正しい敬語を使おうと意識するでしょう。しかし、丁寧な言い回しを意識するあまり、敬語が重複する「二重敬語」を使っている人も少なくありません。二重敬語はビジネスマナーとして失礼にあたるものとして認知されていますが、なぜ失礼なのかまでは把握できていない方もいるでしょう。この記事では、二重敬語の概要や失礼と言われる理由、主な二重敬語の事例・修正パターンを紹介します。
二重敬語が失礼にあたらないケースや、覚えておくべき「敬語連結」についても解説しています。ビジネスにおける基本マナーの敬語を正しく使うための参考にしてください。
二重敬語とは
二重敬語とは言葉の通り、ひとつの文に同種類の敬語を重ねて使用することです。「おっしゃられる」など、尊敬語や謙譲語がひとつの文の中で混在している状態を指します。丁寧な言葉遣いを意識するあまり、無意識のうちに二重敬語を使ってしまうことは少なくありません。しかし、二重敬語は一般的にビジネスマナーとしてよくないものと認識されています。なぜ二重敬語が失礼とされるのかは、後述する内容を参考にしてください。
正しい敬語を身につけることで、相手に好印象を与えるだけでなく、ビジネスパーソンとしての自己形成にも役立ちます。二重敬語の視点から、自身が持つ敬語への認識を改めて考えてみましょう。
三重敬語もある?
三重敬語とは、二重敬語にさらに敬語が重なっている状態のことです。二重敬語だけでも良くないビジネスマナーとされているため、同じく三重敬語もマナー違反と判断されます。
「お召し上がりになる」を例にすると、「お召し上がりになられる」が三重敬語に該当します。丁寧さを意識しすぎてかえって遠回りな表現になっていると感じたら、三重敬語の可能性を考えましょう。
なぜ二重敬語が失礼と言われるのか
敬語を重ねて使う二重敬語は、丁寧な言葉遣いを意識するあまり誤った日本語を使っている状態であり、そもそも日本語として誤りです。あまりに丁寧すぎることで、かえって見下されている印象を抱く方も少なくありません。言葉としての不自然さを感じ、マナーがなっていないと認識される場合もあるでしょう。ほかにも、冗長的な日本語であったり、古文表現のように捉えられたりと、二重敬語はビジネスの場において不要な表現になりやすいことを覚えておきましょう。
使われがちな二重敬語と修正パターン
先ほど例に挙げた「おっしゃられる」をはじめ、二重敬語にはさまざまな例があります。何気なく使っているものも多いかもしれません。ここでは、よくある二重敬語とその修正パターンをまとめています。ビジネス上の会話の印象を良くするための参考知識として活用してください。
二重敬語の例 | 修正パターン |
---|---|
おっしゃられる | おっしゃる、言われる |
お飲みになられる | お飲みになる、飲まれる |
お見えになられる | お見えになる、いらっしゃる |
お話になられる | お話になる、話される |
ご覧になられる | ご覧になる、見られる |
ご使用になられる | ご利用になる、使用される |
お出かけになられる | お出かけになる、出かけられる |
お帰りになられる | お帰りになる、帰られる |
頂戴させていただきます | 頂戴します |
拝聴させていただきます | 拝聴します |
失礼にあたらない二重敬語もある?
三重敬語の項目で例に挙げた「お召し上がりになる」は、二重敬語であるため厳密には正しい言い回しではありません。ただし、現在においては広く使われている表現でもあることから、特別失礼な印象を与えることは少ないでしょう。
ほかにも、訪問先に対して使用しがちな「お伺いする」も、二重敬語に分類されます。しかしこちらも一般化している言い回しであることから、マナー違反と認識されることは少ないです。そのほか、会議の場などで使用する「拝見いたします」も二重敬語ですが、こちらも一般化している敬語表現になります。
ここで挙げたように、すべての二重敬語がマナー違反と認識されるわけではありません。しかし、人によってどの表現をマナー違反と感じるかは異なるため、できる限り使用しないように心がけるほうが安全です。
二重敬語とあわせて押さえたい「敬語連結」とは?
二重敬語を理解するには、敬語連結について把握しておくことも大切です。敬語連結とは、ひとつの文で使われている言葉を、接続助詞である「て」でつなぎ合わせた表現のこと。厳密には誤りではないものの、二重敬語と混在させると日本語が破綻しやすくなるため注意が必要です。
ここでは、敬語連結の主な種類や例を紹介しているので、二重敬語も含めた正しい敬語の知識を身につけるうえでの参考にしてください。
敬語連結の主な種類
敬語連結には、尊敬語と謙譲語の分類があります。一般的な敬語の分類と同様であるため、この点自体は難しくありません。尊敬語と謙譲語、それぞれを使用した文に「て」という接続助詞をつけることで、敬語連結ができると認識しておく程度で問題ないでしょう。ただし、敬語連結とあわせて二重敬語も発生している文はくどい印象を与え、かえって失礼と認識される場合があります。
敬語連結の例
敬語連結は、尊敬語と謙譲語でそれぞれ以下のような組み合わせが例に挙げられます。
尊敬語の敬語連結 | 謙譲語の敬語連結 |
召し上がっていらっしゃる ぜひいらしてください | ご案内して差し上げる |
尊敬語のパターンである「召し上がっていらっしゃる」は、「召し上がる」「いる」を「て」でつなぎ合わせて敬語にしたものです。「ぜひいらしてください」は、同様に「いらっしゃる」と「ください」を「て」でつないでいます。
謙譲語のパターンとして挙げた「ご案内して差し上げる」は、「案内する」という文に「て」を使い、謙譲語の「さしあげる」を連結しています。尊敬語・謙譲語いずれの場合も、別の単語を連結させてひとつの敬語にするのが、敬語連結の定義だと認識しておきましょう。
敬語連結は二重敬語と違って、文法的には誤用ではありません。ひとつの動詞に対して、それぞれ尊敬語や謙譲語を使っているだけだからです。ただし、場合によっては冗長表現と感じさせるため、シュチュエーションによって使い分ける必要があります。
まとめ
今回は、ビジネスシーンの会話マナーとして押さえたい二重敬語の定義について解説しました。マナー違反と認識されない二重敬語もありますが、多くはビジネスマナーとして「不適切」と考えられる表現です。今回挙げた例を参考に、普段何気なく使用している二重敬語があれば、正しい言い回しに変えられるように意識してください。
また二重敬語とあわせて、敬語連結についても念の為把握しておきましょう。尊敬語と謙譲語、それぞれの敬語におけるパターンを詳しく知っておくことで、二重敬語の対策になります。
今回紹介した二重敬語の内容が、ビジネスシーンでの会話をレベルアップさせるきっかけになれば幸いです。