目標達成に向けた実行プロセスを意味するKPI。従業員のパフォーマンスを計測するための指標としても活用できます。KPIという言葉は耳にしたことがあっても、実践レベルにまで落とし込めていない方も多いでしょう。そこで今回は、KPIの概要や設定方法について紹介します。
KPIを設定することによるメリットについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
KPIとは
Key Performance Indicatorの略語であるKPIは、重要業績評価指数と訳される言葉です。事業における目標達成に必要なプロセスが、適切に実施されているかを数値化し、評価します。
KPIの具体例は、以下の通りです。
- 訪問件数
- 成約数
- 成約率
- 離職率
- 従業員満足度
- Webサイトの回遊率
KPIは上記に挙げたような目標を、期間を定めたうえで計測することが一般的です。目標の規模やスピード感に応じて、日次・週次・月次のいずれかで設定します。設定した期間ごとに達成率を確認し、場合によっては改善策を練り、実行する必要があります。
また目標達成までの動きが定量的に評価できる点も、KPIの特徴です。従業員はもちろん、評価者にとっても利用しやすい指標といえます。
KPIの類義語との違い
KPIには、混在しやすい類義語がいくつか存在します。ここではKPIの類義語として挙げられる、以下の用語について解説します。
- KGI
- KFS
- OKR
KGI
KGI(Key Goal Indicator)とは、重要目標達成指数を表す言葉です。目標達成までのプロセスを示すKPIに対し、KGIは最終目標を表しています。
KPIとKGIは、セットで考えられることがほとんどです。KGI(最終目標)があり、そこに到達するためのKPI(中間指標)を達成する流れが一般的です。KPIが達成できないと、最終目標であるKGIまで到達できません。反対にKGIを明確に定めていないと、中間指標であるKPIが明確にならないでしょう。
このようにKPIとKGIは、それぞれを補足し合うといった重要な関係性で結ばれています。
KFS
KFS(Key Factor for Success)とは、重要成功要因を表す言葉です。CSF(Critical Success Factor)と呼ばれることもあります。KFSは、目標達成に向けた要因のことを表しています。KPIとの違いは、KGIとの関係性にあるでしょう。KPIがKGIを達成するための進捗を示す指標だとすれば、KFSはKGI達成に向けて実施すべきことを示すものです。
OKR
OKR(Objectives and Key Results)もKPIと同様、目標達成に関する指標のことです。KPIとの違いは、「最終目的地はどこであるか(目標:Objectives)」「どこを通っていくか(主要な結果:Key Results)」にフォーカスしているかどうかです。
KPIは、目標達成までの実行プロセスに目を向けた指標のことです。いわば、最終的なゴールに進むためにある、複数のチェックポイントに対する指標を指します。
一方OKRは、最終目標に進むための最適なルートを導き出し、そこに辿り着くための道筋を示す指標のことです。つまりOKRとKPIには、ゴールとチェックポイントという目標達成における視点の違いがあります。
KPIを設定する方法
ここでは、KPIの設定方法を以下4つのステップに分けて解説します。
- KGIの設定
- KGIの細分化
- KFSの洗い出し後にKPIを設定
- KPIツリーの作成
1:KGIの設定
KPIを設定する前に、最終目標であるKGIを設定します。これはKGIが設定されていないと、プロセスを示すKPIが具体化されないためです。KGIを設定する際は、目標を数値化しておくとよいでしょう。より具体化したKGIがあることで、KPIも明確になります。
また、KGIを全従業員に共有することも忘れてはいけません。従業員からの意見も巻き取り、会社全体で一丸となって達成できるKGIを設定しましょう。
2:KGIの細分化
KGIを設定したら、KFSを使って細分化しましょう。KFSは、KGIの達成に必要な要因のことです。例えば、コンテンツマーケティングでPV数を上げることをKGIとした場合、KFSはSEO施策や有名メディアへの出稿、SNSとの連動などが挙げられます。
3:KFSの洗い出し後にKPIを設定
KFSを洗い出したら、KPIを設定します。KFSで洗い出した各要因に応じて、適切なKPIを設定しましょう。先ほどのコンテンツマーケティングを例に、KFSに関連するKPIを見てみましょう。
KFS | KPI |
---|---|
SEO施策 | Web検索からの流入数 |
有名メディアへの出稿 | 他メディアからの流入数 |
SNSとの連動 | 各種SNSからの流入数 |
KFSに応じたKPIを、具体的に数値化することが大切です。
4:KPIツリーの作成
KPIツリーを作成することで、KPIの細分化が可能になります。KPIを達成するまでの行動が、よりわかりやすくなる点も特徴です。また、KPI達成のために必要なことを、一目で把握できるのもKPIツリーを作成するメリットです。KGIやKFSを整理するツールとしても活用できるので、積極的に作成・活用しましょう。
なおKPIツリーは、Coggle(コグル)と呼ばれるツールを利用すると簡単に作成できます。
KPIによるメリット
KPIを設定することで、主に以下のメリットが期待できます。
- 目標を明確にできる
- 改善点を把握しやすい
- 従業員のモチベーションが向上する
- 評価の正当性が高まる
目標を明確にできる
KPIの設定により、目標達成に必要な行動が明らかになります。目標達成に向けて何をすべきかが明確になっていれば、業務効率や行動のしやすさも向上するでしょう。
また、成果が十分に現れなくても、改善策をすぐに立案できることもメリットです。KPIにより具体化した目標があれば、それに対するリアルな目線で改善策を立てられるでしょう。
なおKPIを設定していないと、行動指針が不明確な状態のままになります。何をすべきかわからないと感じる従業員が増え、会社全体での目標達成に対する意識が統一されません。
改善点を把握しやすい
目標達成に向けての中間指標でもあるKPI。中間目標を明確にすることで、現段階で改善すべき点をすぐに把握できるようになります。プロセスごとの改善点をリアルタイムで把握できるため、目標達成に向けた改善がより実現しやすくなるでしょう。
またKPIを設定することで、成功している施策も明確になります。成功している施策を客観的な目線で分析し、改善が必要な目標に向けた施策に落とし込むことも可能です。
従業員のモチベーションが向上する
会社全体にKPIを共有することで、どこに向かって努力していくべきかが明確になります。その結果、漠然と日々の業務をこなすのではなく、自社に貢献するというモチベーションが高まります。
また従業員全体のモチベーションが向上することで、会社全体の生産性が向上することもメリットです。KPIを通じてモチベーションをアップさせるには、従業員に目標を共有するのはもちろん、従業員の意見も積極的に取り入れることが大切です。
評価の正当性が高まる
KPIには、定量的な数値が用いられます。そのため、自社の評価基準を統一することが可能です。
例えば、次回の評価までに売り上げを100万円伸ばすというKPIを立てたとしましょう。この場合、売り上げを100万円以上伸ばせたか否かが評価基準になります。また、売り上げを100万円アップさせるのに従業員がどう努力したかも、評価基準のひとつです。
このように、設定した目標の達成度合いから、正確かつ納得感のある評価を与えられることがKPIのメリットです。
KPI設定におけるポイント
KPIを設定する際は、あくまでも現実的な数値を設定することが大切です。現実味のない目標ではそもそも達成できないどころか、従業員のモチベーションも上がらないでしょう。またKPIの数を増やしすぎないことも大切です。あまりに数が多くなってしまうと、一つひとつの業務に対する集中度が落ちてしまいます。
もしKPIの数が多くなってしまう場合は、KPIごとに担当者を振り分けるとよいでしょう。誰がどのKPIを担当しているか明確にすることで、管理がしやすくなります。
なお、KPIを設定する際は達成までの期限を定めておくことも大切です。達成期限がないまま業務を進めてしまっては、モチベーションも向上しません。「いつまでにこの目標を達成する」と明確にすることで、目標達成への意識が高まります。
まとめ
今回は、目標達成に向けた中間指標を表す、KPIについて紹介しました。
KPIについて理解するためには、KGI・KFS・OKRなど、類義語もあわせて理解しておく必要があります。これらの類義語はKPIの設定にも関わってくるため、必ず押さえておきましょう。
またKPIを設定することで、目標の明確化や改善点の把握、従業員のモチベーションアップが期待できます。評価基準が明確になりやすいという企業目線でのメリットもあるので、企業は積極的に取り入れましょう。
ただし、あくまでも現実的な目標設定を意識することを忘れてはいけません。会社全体で協力し、現実的な目標を設定しましょう。