サブスクリプションは、近年多くの企業で取り入れられているストック型ビジネスモデルです。動画配信サービスや音楽配信サービスだけでなく、洋服・家電・食品・ビジネスツールなど、さまざまな領域で活用されています。この記事では、サブスクリプションの仕組みや代表的なサービスについて解説します。
サブスクリプションとは
サブスクリプションとは、「利用権」に対して定額料金を支払うことで、商品やサービスを一定期間利用できるストック型ビジネスモデルを指します。一般的なビジネスモデルのように「商品の価格×販売数」で売上が計上されるのではなく、「利用料金×顧客数」によって計算されます。そのため、利益を増加させるには顧客数を増加させるか、顧客あたりの利用料金を増加させることが必要になります。
定額制・月額制との違い
サブスクリプションと定額制・月額制は一見よく似ていますが、ビジネスモデルが異なります。サブスクリプションは、ユーザーのニーズや需要に応えるためのサービスを提供する仕組みであるのに対し、定額制・月額制は商品やサービスの利用そのものに対して金額を支払う仕組みです。サブスクリプションの場合、ユーザーの動向や意見、利用者数の増減に合わせて、金額やサービス内容を常に変化させていくことが求められます。
リカーリングとの違い
サブスクリプションとリカーリングの違いは、支払う金額が契約途中で変化するかどうかにあります。どちらも商品やサービスに対して定額料金が発生する点は同じですが、毎回一定の金額を支払うサブスクリプションに対し、リカーリングは使用した量によって金額が変動します。もともとリカーリングは電話料金や水道光熱費などの支払いモデルとして活用されていた仕組みであり、サービスの利用分だけ支払い義務が発生する点が異なります。
リースとの違い
サブスクリプションとリースの違いは、契約にあります。サブスクリプションは契約後も任意のタイミングで解約できるのに対し、リースは一度契約すると途中解約ができないケースが多く見られます。また、リースの場合は社用車・コピー機・パソコンといったオフィスなどで使用される高額設備が対象になるケースが多く、契約期間が約半年〜10年と比較的長い傾向にあります。
レンタルとの違い
サブスクリプションとレンタルの違いは、利用期間にあります。レンタルとはもともと「有料での貸し出し」という意味を持った言葉で、最短数十分から1週間程度の短期契約で商品やサービスを利用することを指します。一方、長期間繰り返し利用する場合は、一定期間料金を支払い続けるサブスクリプションの方が適しています。
サブスクリプションビジネスの市場規模
サブスクリプションビジネスの市場規模は年々右肩上がりに拡大しており、日本国内の主要市場を調査した結果、2021年度で前年度比10.6%増の9,600億円規模の市場へと成長しています。2024年には、1.2兆円に到達すると予想されています。特に利用者の多い動画配信や音楽配信だけでなく、ファッション・美容・飲食・教育・ソフト・書籍など、さまざまな業界・業種の企業が参入し続けています。各分野で競争が激化している反面、今後も市場規模が伸びていく可能性が高いでしょう。
引用:矢野経済研究所|サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2022年)
サブスクリプションのメリット
サブスクリプションは、企業側・ユーザー側双方にさまざまなメリットをもたらすビジネスモデルです。ここでは、それぞれの視点から具体的なメリットについて解説します。
企業側のメリット
サブスクリプションを利用する企業側のメリットは、継続的な売上が期待できることです。利用料として継続的な収入が発生するため、定期的に安定した利益を得ることができます。また、買い切り型と比べて1回の支払い金額が低いことで購入ハードルが下がり、新規ユーザーが増えやすい点も強みです。その他にも、売上・利益の試算が容易なことや、利用履歴データなどを取得することでサービス改善を行いやすいといったメリットが挙げられます。
ユーザー側のメリット
ユーザー側のメリットは、利用コストや管理コストを抑えられる点です。たとえば音楽配信サービスの場合、曲ごとに料金を支払う必要はなく、月額料金だけで好きな音楽が聴き放題になります。CDのように実際に商品を所有する必要がないため、管理の手間や費用がかかりません。また、お試しの無料期間があるケースが多く、気になるサービスを試しやすい点も嬉しいポイントです。その他にも好きなタイミングで解約できる点や、利用履歴から新たに興味のあるコンテンツを提案してもらいやすいといった魅力が挙げられます。
サブスクリプションのデメリット
サブスクリプションにはさまざまな魅力がありますが、一方でデメリットにも注意する必要があります。ここでは、企業側・ユーザー側それぞれの視点から具体的なデメリットについて解説します。
企業側のデメリット
サブスクリプションにおける企業側のデメリットは、利益が安定するまで時間がかかる点です。サブスクリプションは利用者の人数によって利益が増加するため、サービス開始直後は大きな利益を獲得しにくい傾向にあります。また、ユーザーに継続利用してもらうためには、常にサービスを改善し続けなければいけません。その他にも、ユーザーの購入ハードルが下がることで、ブランドの価値が下がるリスクがあるため注意する必要があります。
ユーザー側のデメリット
サブスクリプションにおけるユーザー側のデメリットは、多くのサービスを契約すると費用がかさんでしまう点です。サブスクリプションは購入ハードルが低い分、気軽に契約しやすいですが、合計すると想像以上に高額になるケースも少なくありません。また、サービスを利用していなくても料金が発生してしまう点や、サブスクリプションを解約すると商品やサービスを使えなくなる点にも要注意です。
代表的なサブスクリプションサービス
現在、サブスクリプションは業種・業界の壁を超えて、さまざまな企業で導入されています。ここでは、各業界ごとに代表的なサブスクリプションサービスをご紹介します。
エンタメ業界
音楽・動画・書籍といったエンタメはサブスクリプションと相性がよく、他の業界と比べていち早く導入が進められました。代表的なサービスとして、音楽では「Spotify」「Apple Music」、動画では「Netflix」「Amazonプライムビデオ」、書籍では「Kindle Unlimited」「dマガジン」などが挙げられます。また、ゲームの分野においてもサブスクリプションが注目されており、SONYの「PlayStation Now」や任天堂の「Nintendo Switch Online」などのサービスが展開されています。
食品・サプリ業界
食品業界では、「always LUNCH」や「coffee mafia」のように、定額料金を支払うことでコーヒーが飲み放題になったり、毎日の朝食・昼食をお得に食べられるサブスクリプションサービスが展開されています。また、「FUJIMI」や「サプスク」のように、悩みに合わせて自由に配合を変更できるサプリメントのサブスクリプションも多くの人気を集めています。
ファッション業界
ファッション業界では、特にアパレルに関するサブスクリプションサービスが人気を集めています。好きな洋服や自分に似合う洋服を定額で借りられる「エアークローゼット」や「MECHAKARI」などが代表的です。また、洋服の宅配クリーニングが利用できる「リネット」、コスメボックスが毎月届く「BLOOM BOX」などの特徴的なサービスも注目されています。
ソフトウェア業界
ソフトウェア業界でも、ソフトの買い切りだけでなくサブスクリプションの導入が進められています。なかでも先陣を切ったのはAdobe社で、2012年には「Photoshop」や「Illustrator」などのアプリを定額で利用できる「Creative Cloud」をスタートさせました。その他にも、ソフトのアップデートやサポートなどのサービスも一緒に受けられる点といった魅力があります。
まとめ
この記事では、サブスクリプションについて解説しました。サブスクリプションは年々さまざまな企業で導入が進んでおり、これからも拡大していくことが考えられます。サブスクリプションをうまく活用するには、メリット・デメリットをしっかり踏まえた上で、自分に合ったサービスを選ぶことが大切です。