燃え尽き症候群は「バーンアウト」とも呼ばれる心の病のひとつで、極度の心身の疲労により行動する意欲を失ってしまう状態を指します。頑張りすぎてしまう人や、真面目な人ほどかかりやすいといわれており、ビジネスシーンにおいても大きな問題になっています。
この記事では、燃え尽き症候群になりやすい職種や職場環境、予防法などを解説します。燃え尽き症候群に対する正しい知識を学び、自身のケアや周囲へのサポートに役立ててみましょう。
燃え尽き症候群(バーンアウト)とは
燃え尽き症候群とは、ひとつの物事に没頭して取り組んでいた人が、心身の疲労によってまるで燃え尽きたかのように意欲を失ってしまう状態を指します。自分の限界を超えて無理に頑張ることで引き起こされる場合が多く、「仕事に対する熱意が急に冷めてしまう」「プロジェクトが終わった途端にすべてのやる気を失った」など、ビジネスシーンにおいても多く発生している事例があります。
うつ病との違い
燃え尽き症候群は、心身の疲労蓄積によって活動への強い不安感を抱くのに対して、うつ病は一貫した気分の落ち込みが長期的に続く症状です。うつ病の主な原因はストレスで、職場に限らずあらゆる要因によって引き起こされます。
一方で燃え尽き症候群は、自分を高く評価してくれる人に対する強い責任感が引き金になるケースが多く、責任あるポジション・業務を任されやすいビジネスシーンにおいてよく見られます。
燃え尽き症候群の原因
燃え尽き症候群になってしまう原因は、「内部要因」と「外部要因」に分けられます。本項目では、それぞれの要因について解説をしていきます。
内部要因
燃え尽き症候群になりやすい要因のひとつに、「完璧主義」「真面目」「ひたむき」といった性格面の特徴が挙げられます。仕事で常に完璧な結果を求める人は、見えないところで心身に相当なストレスを受けているものです。
適度な息抜きや休息を挟めるのであれば大丈夫ですが、仕事を優先して問題を後回しにする癖がある人は要注意です。責任感を強く感じすぎてしまう人は、仕事の種類や労働環境に関係なく燃え尽き症候群になりやすい傾向があります。
外部要因
燃え尽き症候群になるもうひとつの要因は、重いノルマや過重労働、人間関係のストレスなど、外部の労働環境に起因するものです。例えば、ノルマが厳しい営業職や販売職、人手不足で仕事量が多くなりがちな保育士や看護師、宿泊・飲食などのサービス業界に従事する人は注意が必要です。
対人関係を構築して進める仕事では、気配りや思いやりといった「情緒的エネルギー(人間関係の構築に費やす感情の起伏)」の消費が激しく、急激な疲労感と脱力が繰り返されやすい状況になっています。人を相手にする仕事は、特に心身の負担がかかりやすいので注意が必要です。
燃え尽き症候群になりやすい人の特徴
燃え尽き症候群になりやすい人は、どのような特徴を持っているのでしょうか。すでにいくつかの事例を挙げましたが、ここからはさらに深堀りして具体的な特徴に触れてみます。
他人との深い関わりを持っている
他人と深い関わりを保ちながら仕事を熱心に続けている人は、燃え尽き症候群になりやすい傾向があります。特に対人関係の仕事は定量化させて数値に示すことが難しく、どこからどこまで対応をすればよいかの線引きが難しいものです。そのため、責任感が強い人ほど多くの仕事を抱え込んでしまい、ワーカホリックのような状態に陥りやすいといえます。
仕事の目標や理想が高い
仕事の目標や理想を高く持つのは良いことですが、理想と現実のギャップがありすぎる場合も燃え尽き症候群になりやすいでしょう。いくら頑張っても自分が理想とする姿に追いつけず、渇望感からさらに自分に負荷をかける悪循環に陥ります。
そのほか、過酷な環境やノルマで働いているにも関わらず、見合った評価や待遇を得られないことも原因に挙げられます。その結果、掲げた目標を達成した瞬間に心の糸が切れてしまうケースが多いです。
オンオフの切り替えができない
オンとオフを切り替えずに働き続けてしまう人がいますが、仕事とプライベートの区別はしっかりと付けて、心身を休めることも大切です。
休息を取らずに休日にまで自分の仕事を持ち込んでしまう人は、燃え尽き症候群になる可能性が高くなります。特にテレワークの働き方が進んでいる現代では、仕事とプライベートな時間の線引きは意識的に行いましょう。「業務時間が終わったらメール確認をしない」「仕事用の携帯は見ない」などの切り分けが必要です。
燃え尽き症候群になりやすい環境
燃え尽き症候群の原因は、職場環境によって引き起こされているケースが多々あります。代表的な職場環境の特徴や事例についても確認しておきましょう。
対人業務が多い
本記事でも何度か紹介していますが、情緒的エネルギーを消耗しやすい環境下では燃え尽き症候群になる可能性が上がります。その代表例が対人業務であり、ストレスを溜め込むことで、「心身ともに疲れ果てた」「心のゆとりがなくなった」などの感情を抱きやすい特徴があります。
特に強いストレスを感じる場合は、働き方の改善や、転職・キャリアチェンジを視野に入れてみるのも良いでしょう。
過重労働
長時間の拘束やハードな仕事内容なども燃え尽き症候群の原因になります。忙しすぎると自身の限界に気付きにくくなるので、部署の異なる同僚や友人等の労働環境も参考にして、客観的に過重労働かどうかを判断しましょう。疲労感・不眠・集中力の低下といった初期サインが現れるケースが多いので、身体の不調を感じている場合は早めに環境を変える努力をすると良いでしょう。
残業や休日出勤が多い
残業や休日出勤が多い環境も燃え尽き症候群になりやすいといえます。特に注意が必要なのが、残業や休日出勤を繰り返すことで、会社に貢献できていると感じてしまう人です。
「自分の働きは会社にとって必要不可欠だ」「自分がいないと仕事が進まない」といった考えに固執すると、限界を超えて頑張り続けてしまいます。真面目な人・責任感が強い人ほど陥りやすいので注意しましょう。
燃え尽き症候群を予防する方法
燃え尽き症候群は仕事に大きな影響を及ぼし、場合によっては休職や退職に繋がってしまうケースもあるため、事前に対策を考えておくことが重要です。ここからは、燃え尽き症候群を予防する方法について解説します。
適度な休息を意識的に取る
ストレスは定期的に発散させないと蓄積されていく一方になるので、適度な休息を意識的に取りましょう。ストレス発散の方法としては、「仕事のタスクを忘れて別のことをする」「趣味の時間に没頭する」「軽い運動や読書を楽しむ」など、自分が心休まる時間を過ごすことがおすすめです。また、不規則な生活リズムを送っている方は睡眠不足や精神疾患を発症しやすくなります。疲れを残さないためにも、規則正しい生活を心掛けましょう。
労働環境を変えられないか相談する
労働環境を変えられないか会社に相談してみるのも、燃え尽き症候群の予防に効果的です。会社の文化や風土によっては、残業が慢性的に発生したり、休日出勤が多い場合があります。少しでも環境が変われば負荷がかかりにくくなるので、担当変更や働き方の改善、配置換えなど、労働環境を変えることが可能かどうかを相談をしてみましょう。
早めに病院で診察を受ける
身体面や精神面での不調を感じたら、早めに病院で診察を受けて休息を取りましょう。医師に相談をして診断書を作成してもらうと、病気休養を取得することもできます。燃え尽き症候群に当てはまる症状があっても、人によってはまだまだ大丈夫と頑張り続けてしまう人もいます。医師や専門家、周囲の人に相談をすることで、「どれだけ疲れてしまっているか」を客観的に判断するきっかけになります。
思いやりのある職場の雰囲気を作る
燃え尽き症候群は誰もがなる可能性があるので、明らかなサインがある場合は、周囲が本人の疲れや異変を指摘してあげることが大切です。どのような気持ちで働いているかを推察して気遣いをすることで、燃え尽き症候群による異変や初期症状に気付ける可能性が高まります。燃え尽き症候群の予防に限らず、思いやりのある職場の雰囲気を作ることはさまざまなメリットに繋がるため、積極的に実施していきたい行動です。
まとめ
この記事では、燃え尽き症候群(バーンアウト)の概要や、なりやすい人の特徴について解説しました。燃え尽き症候群は、仕事に一途で頑張りすぎてしまう真面目な人ほど陥りやすい症状です。特に対人業務などで情緒的エネルギーを使ってしまう職種ほどなりやすいので注意しましょう。燃え尽き症候群になってしまう前に意識的に休息を取り、ストレスを溜め込まない生活を心掛けるのが一番の対策です。