「本当にやりたい仕事をしたい」「他の業界で働きたい」などでキャリアチェンジを考える人が増加しています。しかし、現職と同じポジションでの転職と違い、まったく新しい業界や職種へ未経験での転職になるため、入念な準備としっかりとした対策が必要です。そこでこの記事では、キャリアチェンジでの転職を成功に導くポイントやメリット・デメリット、キャリアチェンジに適したタイミングについて詳しく解説します。
キャリアチェンジとは
キャリアチェンジとは、今まで経験した職種・業界から、まったく経験のない職種・業界に変わることを指します。キャリアチェンジをするためには、今の企業を退職して別業界の新しい企業へ転職することが一般的です。このほかに、同じ業界で別職種に転職するケースや同じ職種で別業界に転職するケースもキャリアチェンジに分類されます。
キャリアアップとの違い
キャリアアップとは、特定の分野において専門知識やスキルを身につけることによって、昇進・昇給したり仕事の幅を広げたりすることです。未経験の業界や職種に挑戦するキャリアチェンジに対し、キャリアアップは現在携わる業界や勤務する企業において経歴を高めることを指します。
キャリアパスとの違い
キャリアパスとは、将来目標とするポジションに到達するための道筋のことです。キャリアパスを描くことで、今後企業内においてどのような経験や能力を獲得すれば目標に到達できるのかが明らかになり、効率よくキャリアアップを目指せるようになります。キャリアチェンジと違い、現在勤務している企業内でキャリアアップを目指していく点が特徴です。
パラレルキャリアとの違い
パラレルキャリアとは、本業を持ちながら第二の活動をすることです。第二の活動には別企業での仕事、自営業、ボランティアなどが含まれ、明確な定義はありません。本業と第二の活動に優劣をつけず同じように取り組むことを指し「複業」ともいわれます。パラレルキャリアはキャリアチェンジと違い、本業を続けながら自分のやりたいことを見つけて両立する活動を指します。
2024年以降もキャリアチェンジを実現する人は増加傾向に
キャリアチェンジは年々増加傾向にあり、20〜30代の半数以上が希望しているというデータもあります。これは働く人の意識変化によって、終身雇用ではなく終身成長を目指したい人が増えているためです。また、中途採用市場もビジネスの在り方や働き方の変革にともない、業界にとらわれずさまざまな業界の経験者を積極的に採用する傾向にあります。これは異業種からキャリアチェンジしてくる人材に対し、採用する企業側の期待値が高まっている結果といえます。さらにヤングキャリアと呼ばれる社会人3年未満のキャリアチェンジ希望者も増加しており、2024年以降ますます増えてくる可能性が高いでしょう。
キャリアチェンジに適したタイミングは?
キャリアチェンジの一般的なタイミングは、20代後半です。20代であれば求人も幅広く、未経験可としている求人も一定数存在します。また、企業側から新しい知識や技術を吸収するのに適していると判断され、積極的に採用される傾向があります。しかし場合によっては、20代は経験・スキルが乏しく、知識不足も否めないと低く評価される場合もあります。
30代・40代でのキャリアチェンジは難しい?
20代に比べると30代・40代の求人数は減るため、難しく感じる方もいるでしょう。しかし、これまでの経験をうまく活かせば、キャリアチェンジを有利にする可能性もあります。30代・40代のキャリアチェンジで求められるのは、これまでの実績や専門性の高いスキルです。そのためキャリアチェンジを成功させるには、これまで積んできたキャリアをしっかりアピールできるかが重要なカギとなるでしょう。ただし、キャリアチェンジであるが故にこれまでのキャリアが直接的に活かすことが難しいこともあり、そういった場合には前職よりも収入が低くなる可能性もあります。また、これまでの経験によって柔軟な対応ができないと判断されることもあります。
キャリアチェンジするメリット
経験のある業界・業種から、未経験の業界・業種へ転職するのは大変なことです。しかし、キャリアチェンジには大きなメリットが存在しています。ここでは、キャリアチェンジのメリットについて詳しく解説します。
興味がある業界の仕事に就ける
興味がある業界の仕事に就ける点がキャリアチェンジの大きなメリットです。人によっては、新卒時に希望する業種や業界で働けなかったり、社会に出てから進みたい業界が見つかったりすることがあります。このような場合にキャリアチェンジすることで、興味のある業界や業種に携われるようになり、その結果として今以上にやりがいや充実感を持って働ける可能性が高まります。
新しいスキルが身に付く
今まで経験のない業界や業種へキャリアチェンジして経験を積むことで、新しいスキルを習得できるのもメリットのひとつです。幅広いスキルを身に付ければ、フリーランスとして独立したり、新たなプロジェクトのリーダーに抜擢されたりと、キャリアの幅も広げられるでしょう。
仕事のやりがいが得られる
キャリアチェンジによって興味のある仕事に就くことで、仕事のやりがいを得られやすくなります。例えば、新卒時に自分のやりたい業界へ就職できなかった場合、モチベーションを維持して働くことは難しいでしょう。しかし、キャリアチェンジによって自分がやりたいと思う業界へ転職できれば、新たな可能性を広げながらもやりがいを持って仕事に取り組めます。
キャリアチェンジを行う際の注意点
キャリアチェンジは、必ずしもメリットばかりではありません。キャリアチェンジのデメリットとして考えられるのは以下の3点です。
給与 | これまでの経験やスキルが評価されても、未経験であるために年収が下がる場合もある |
経験 | 前職の経験によって新しい環境に慣れない、馴染めない、活躍できない等の可能性がある |
スキルアップ | 新人としてゼロスタートになるため、新しい環境で経験値や評価を上げていくのに相応の努力が求められる |
ポジション | 役職のポジションが下がる、年下の上司がいる等の場合もある |
これらのことを納得していないと、入社後のギャップに苦しんだり、ストレスを抱えたりする可能性があります。そうならないためにも、以下で解説するキャリアチェンジを成功に導くポイントを理解し、日ごろから準備しておきましょう。
キャリアチェンジを成功に導く4つのポイント
キャリアチェンジを成功に導くためには、転職における重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、キャリアチェンジの4つのポイントについて解説します。
キャリアチェンジの目的を明らかにする
キャリアチェンジを検討する前に、「業務内容を変更したい」「憧れていた業界に挑戦したい」「キャリアパスで設定した目標を達成したい」といったように目的を明確にすることが大切です。それによって強い意思を持って転職活動を行えるようになり、キャリアチェンジを成功させやすくなります。一方で、「現職が嫌だから」「上司とのそりが合わない」といったネガティブな理由でキャリアチェンジを行っても、同じような理由によって転職を繰り返すケースもあるため注意が必要です。
自身の経験やスキルを整理する
今までの経験と新しい職場での業務内容がミスマッチしていると、予想よりも活躍できないという事態になりかねません。そのため、キャリアチェンジを成功させるためには自身の経験やスキルを整理しておく必要があります。自身の経験やスキルを整理しておけば強みと弱みが明確になるため、未経験でも自分のスキルを生かせる職場に転職できる可能性が高くなります。
入社したい企業を事前にリサーチする
自分と相性の良い企業へ入社するには、事前のリサーチが重要です。特に、未経験の業界へ転職する場合はリサーチが足りていないと面接の返答が曖昧になりやすく、熱意が足りないと判断される可能性があります。リサーチしておくべきポイントとしては企業理念や企業規模・社風・給与・福利厚生などが挙げられます。また、転職口コミサイトなどを活用すれば、実際に企業で働いた経験のある方の声も確認でき、ミスマッチの回避につながるでしょう。
転職エージェントを活用する
キャリアチェンジを一人で進めるのではなく、転職エージェントを活用してサポートを受けるのも一つの手段です。転職エージェントには企業の内部情報に詳しいキャリアアドバイザーがいるため、キャリアチェンジをする際に求められる経験やスキルについてアドバイスしてもらえます。また、自分のキャリアにマッチする業界や職種を提案してくれるメリットもあります。
さらに、応募書類の作成や面接対策などもサポートしてくれるため、自分の強みや必要なスキルについて悩んだときにすぐ相談できるのが心強いです。転職エージェントからプロ目線のアドバイスをもらえば、キャリアチェンジを成功に導きやすくなります。
キャリアチェンジにおける転職理由の伝え方
キャリアチェンジは未経験の業界や職種に応募しているため、企業側は同業界・同職種での転職よりも厳しい目でマッチする人材を見極めようとしています。そのため企業業界を理解し、入社後に長く働ける有益な人材であることをアピールすることが大切です。ここでは、転職理由の伝え方について紹介します。
志望動機に盛り込む場合の例文
キャリアチェンジの転職理由のポイントは「応募する業界や職種を理解していること」と「これまでの仕事を続けない理由」が明確であることです。
私は学生時代からスマートフォンやPCなどの機器に興味を持っていたため、携帯電話の内勤営業に就職しました。携帯電話の販売や操作方法の説明、故障への対応などの業務を通して、顧客と直接関わりながら機器に関する知識を深めていく中で、特に技術的なトラブルに対処する際には最も充実感を感じることに気づきました。その経験から、セールスよりもより技術的な側面に関わりたいという強い思いが芽生え、テクニカルサポートへの転職を決意しました。入社後は、御社のPC製品に関する専門知識や技術を積極的に学び習得していくことで、顧客に対する的確なサポートを提供できるよう努めたいと考えています。また、携帯電話業界で培った顧客対応の経験や通信機器に関する知識を活かし、御社の成長や顧客満足度の向上に貢献したいと強く願っています。
面接で質問された場合の回答例
面接では、質問に対して時間を置かずに回答する必要があるため、事前準備が必須です。文面で伝えるのに比べて、具体的なエピソードを伝えられるようにすると良いでしょう。
Q.なぜ経験のある現職を続けようと思わなかったのか?
A.現職では銀行業務の監査に携わっていますが、仕事の焦点が金融庁の視点に偏っており、顧客の視点が欠けているように感じています。より顧客志向の仕事に関わりたいという思いから転職を決意しました。御社が顧客目線での革新的なサービスを提供している点に魅力を感じています。
Q.この業界(職種)で将来どうなりたいか?
A.私は将来、日本を代表するプログラマーになりたいと考えています。御社では3カ月に1本というペースでアプリがリリースされています。このようなスピードについていくためには、相当な勉強と実践が必要だと認識しています。早く実力をつけて、会社に貢献したいと思っています。Q.希望していない部署への配属が決まったらどうしますか?
A.貴社に入社し技術職で働く中で、貴社の商品や業界についての知識をより深めていきたいと考えています。そのため、できるだけ技術職を希望していますが、貴社の商品や業界に関する理解を深められる仕事であれば、どの部署でも構いません。
まとめ
キャリアチェンジはさまざまなパターンがあるものの、一般的には現在携わる業界から未経験の業界へ転職することを指します。今後をしっかりと見据えた上でキャリアチェンジすれば、新しいスキルを身に付けられるだけでなく、やりがいを持って仕事に取り組めるようになるでしょう。
ただし、現職よりも給与が下がったり、職場に慣れるまでは相応の努力が求められたりなど、いくつかのデメリットがあることも事実です。そのため「なぜ転職するのか」や「どうやったら新しい職場で活躍できるのか」といった点をまずは明らかにし、キャリアチェンジを成功へと導きましょう。