本記事では日給・月給・時給などさまざまな給与形態のなかから、日本の企業で多く取り入れられている「日給月給制」について解説します。日給月給制の計算方法やメリット・デメリット、その他の給与形態に関する違いを、よくある質問の回答を交えて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
日給月給制とは
日給月給制とは、給与の計算単位を「1日」とし、毎月1回まとめて支給する制度のことです。1日単位で給与が計算されるため、勤務日数の多い月は給与が多くなり、少ない月は給与が少なくなります。働くほどに給与がアップする点は「時給制」に類似していますが、あくまで「1日単位」であるため、働く時間の長短は1日の給与額を左右しません。
日給月給制における給与には固定給のほかに、以下の3つも含まれます。
- 職務手当
- 資格手当
- 役職手当
【パターン別】日給月給制の計算方法
日給月給制の基本的な計算方法は、以下の通りです。
日給 × 労働日数 = 月額の給与 |
上記の基本計算式をベースに、遅刻・早退・欠勤があった場合は、それぞれ異なる形で給与に変動が起こります。ここでは、日給月給の計算方法をパターン別に紹介します。
参考:クラウド給与
遅刻
日給月給制で遅刻した場合は、以下の計算式で控除額が決まります。
月給額÷月の所定労働時間 × 遅刻した時間数 = 控除額 |
早退
日給月給制で早退した場合は、以下の計算式で控除額が決定します。
月給額÷月の所定労働時間 × 早退した時間数 = 控除額 |
欠勤
欠勤の計算方法については、日給・月給それぞれで計算方法が異なります。
<日給の場合>日給額÷1日の所定労働時間数 × 欠勤した時間数 = 欠勤控除額 |
<月給の場合>月給額÷1か月平均所定労働時間数 × 欠勤した時間数 = 欠勤控除額 |
日給月給制のメリット・デメリット
日給月給制をとっている企業に転職することで、自身にどのような利点と難点があるのか、把握しておきたい方もいるでしょう。ここでは、日給月給制の主なメリット・デメリットを紹介します。
メリット
日給月給制は、毎月の給与を把握しやすい点がメリットです。欠勤や遅刻などのイレギュラーな事態が発生した場合も、計算式を用いて控除額を算出できるため、毎月の給与額が把握しやすくなります。
残業や休日出勤をした場合は日数に比例して給与も増えるため、働き方や努力が給与に反映されやすい点もメリットです。もちろん日給月給制の場合も所定の有給休暇が付与されるため、休暇をとりやすい点も特長です。
デメリット
日給月給制は働いた日数によって給与が定まるため、遅刻や欠勤が多いとその分、給与は下がります。有給休暇を取得すれば問題ないものの、限りある有給休暇を消費し切ってしまうと、それ以降は遅刻・欠勤・早退の回数や時間に応じて給与が少なくなります。
突発的な欠勤・遅刻・早退に有給休暇が使えない企業があるのも、デメリットです。事前に申請すれば問題ないものの、イレギュラーな対応の場合は有給休暇の対象にならず、給与が減ってしまう場合があります。
また、日給月給制を採用している企業の中には、ボーナス制度を導入していないところもあります。日給月給制を採用する企業は「非正規雇用」の従業員を多く抱えていることもあるため、ボーナスが支給されない可能性も考慮に入れておかなければなりません。残業代を支払わずに済むよう、企業側に労働時間を調整されてしまうことがあるのも、日給月給制のデメリットです。
日給月給制とその他の給与形態との違い
ここでは日給月給制と混在しやすい、その他の給与形態の概要と相違点について解説します。日給月給制との違いを把握したうえで、自身の働き方や理想にマッチする給与形態をとっている企業を転職先の候補にしてください。
日給制
働いた日数と所定の日給を掛け合わせ、給与額を算出するのが日給制の特徴です。日給月給制と異なり、基本的な月額給与が設定されていません。欠勤日数などに応じて「差し引かれる」形の日給月給制に対し、日給制は働いた日数がそのままその月の給与額に直結します。
月給制
1ヵ月の給与を完全に「固定」する給与形態を月給制といいます。欠勤・遅刻・早退分の給与が差し引かれる日給月給制に対し、月給制はイレギュラーが発生した場合も月額の給与に変動はありません。とはいえ、実績の少ない従業員に月給制が取られることは少なく、管理職などに採用されるケースであることを覚えておきましょう。
時給制
時給制とは、あらかじめ設定された1時間あたりの給与額と、働いた「時間数」を掛け合わせて毎月の給与を算出する給与形態のことです。日給月給制は欠勤や遅刻の「日数」で給与が変動するのに対し、時給制は働いた時間のみが給与に反映されます。働いた分だけ給与に反映されるため、繁忙期には給与が上がりやすく、閑散期は給与が下がる傾向にあります。
年俸制
企業・従業員双方の協議のもと、1年単位の給与額を設定するのが年俸制です。欠勤・遅刻・早退が発生した際は「1日分」の給与を計算し、差し引かれます。日給月給制と「減額」の仕組みは似ています。
月給日給制
あらかじめ定められた月額の給与に対し、欠勤・遅刻・早退分の給与を差し引いて毎月の支給額を算出するのが月給日給制です。日給月給制と基本的なシステムに違いはありませんが、月給日給制の場合は「固定給」のみが減額されます。職務手当や役職手当など、各種手当に関しては減額されず、そのまま支給されるのが月給日給制の特徴です。
日給月給制に関するよくある疑問
ここでは、日給月給制に関する疑問について回答しています。本記事で解説した日給月給制の情報をおさらいできる内容にもなっているので、ぜひ参考にしてください。
Q.有休制度はあるのか
日給月給制の場合も、有給休暇は与えられます。有給休暇制度は「労働基準法」によって定められている権利であり、労働日数に応じて付与されるものです。そのため、所定の日数・期間の条件を満たしていれば、どのような雇用形態でも有給休暇を使用できます。有給休暇を取得できる条件の例は、以下の通りです。
- 雇用から6ヵ月以上継続して勤務している
- 全労働日の8割以上勤務している
Q.残業代は出るのか
日給月給制であっても、所定の労働時間を超える時間勤務した場合は、残業代が支給されます。法定労働時間の8時間を超える場合は、例外なく残業代支給の対象です。仮に残業代が支払われていなければ、労働基準法に違反していることになります。企業には、所定労働時間を超えた分の時間は25%割増、深夜労働に及ぶ場合は50%割増で残業代を支給する義務が生じます。
Q.長期休暇の扱いはどうなるのか
お盆・年末年始などの長期休暇は、企業が公休にしているか否かで扱いが異なります。公休になっている場合は、欠勤扱いにならず給与も減額されません。しかし公休扱いにならない場合は、休んだ分の給与が毎月の給与額から差し引かれます。
まとめ
本記事では日給月給制にスポットを当て、給与形態としての特徴や給与額の計算方法、主なメリット・デメリットを紹介しました。転職における条件面のひとつとして重視したい給与形態。日本の企業には、日給月給制をはじめとしたさまざまな給与形態があります。日給月給制との違いを把握したうえで、自身の働き方にマッチした給与形態を選びましょう。自身が望む給与形態を明確にしたうえで転職活動を進めてください。