ITエンジニアとしての働き方はさまざまで、そのひとつにSES(System Engineering Service)があります。「派遣契約や請負契約などとの違いが今ひとつわからない」、「法的にグレーといわれているが働いても大丈夫か」など、さまざまな不安や悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。そこで、SESの特徴や派遣契約、請負契約との違い、契約内容、働くメリットなどについて詳しく解説します。
SES(System Engineering Service)とは
SES(System Engineering Service:システムエンジニアリングサービス)とは、クライアントにITエンジニアを派遣するサービスです。クライアントが求めるシステム開発やインフラ環境の構築・整備・保守などを提供するために、ITエンジニアを派遣します。その際は、クライアントとベンダーが契約を交わすことになりますが、契約形態はさまざまです。それでは、SESと派遣契約や請負契約などとの違いについて詳しく見ていきましょう。
派遣契約との違い
SES契約と派遣契約の違いは、指揮命令権がどこにあるのかによります。SES契約では指揮命令権がベンダー側にあるのに対し、派遣契約ではクライアント側にあります。また、派遣契約には派遣登録済みの労働者をクライアントに派遣する「一般派遣」と、社員をクライアントに派遣する「特定派遣」がありますが、平成30年10月以降は特定派遣のみの契約形態は禁止されています。そのため、特定派遣を行うには、一般派遣事業許可の保有が必要です。
請負契約との違い
SES契約と請負契約の違いは、業務の目的にあります。SES契約では、契約期間内に業務を行うことを目的とする一方で、請負契約では契約期間内に成果物を納品することを目的とします。つまり、SESは規定の期間に業務を行えば、成果物に責任を持たなくても問題ありません。請負契約は成果物に対して責任を持つ必要があるため、品質が著しく低かったり仕様書の要件を満たしていない場合はやり直しを求められるケースも少なくありません。
委任契約との違い
委任契約はベンダー側が法律行為を行う際に締結しますが、ITエンジニアの業務には法律行為が含まれないため、委任契約が結ばれることはありません。
SESの法的な問題点
SESは法的にグレーと言われることがあるため、働く際に不安を感じる方が少なくありません。納得して契約するためにも、SESが法的にグレーといわれる理由について詳しく見ていきましょう。
指揮命令権の所在証明が難しい
SESは指揮命令権の所在を明確にし、その証拠を残すことが難しいケースがあるため、契約内容によっては契約違反が起こりやすいという問題があります。例えば、SES契約を締結しているにもかかわらず、実態はクライアントの指示に基づいて業務を遂行する場合、契約違反に該当します。このような実態を証明することが困難なため、グレーと言われているのです。
二重派遣になるケースがある
SESは派遣契約とSES契約のいずれの場合も働き方が一見同じなため、違法行為である「二重派遣」になるケースがあります。IT業界では、複数の会社から集まったエンジニアがひとつのプロジェクトを共同で進めます。その際に、ベンダーとクライアントが派遣契約を締結し、ベンダーを介して他企業の従業員をクライアントに派遣すると、二重派遣となります。
ただし、クライアントとベンダーがSES契約を締結している場合は、たとえクライアントから指揮命令を受けていたとしても、書面上では違法となりません。このように、実態と書面上に差異が生じることが多いため、SESはグレーといわれています。
SES契約を使う企業側のメリット
IT業界は急速に成長している一方で、人材不足の企業が少なくありません。ITエンジニアを雇用するにしても常に案件があるわけではない場合は、利益に対する人件費が高くなりすぎます。そこでSES契約によって、必要なときにだけITエンジニアに業務を任せる方法が注目されているのです。
SES契約で働くエンジニア側のメリット
SES契約は、契約上トラブルが起こりやすいイメージがあるかもしれません。しかし働くITエンジニアにもメリットはあります。SES契約で働くITエンジニア側のメリットについて詳しく見ていきましょう。
幅広い経験を積める
SESでは、さまざまなプロジェクトを取り扱うため、幅広い経験ができます。働く環境も多種多様なので、ビジネスパーソンとしてのスキルアップにも繋がるでしょう。
残業時間が少なくなりやすい
SESでは成果物に責任を持つ必要がないため、契約通りに業務を遂行さえすれば問題ありません。成果物を納期に間に合わせるために夜遅くまで残業する必要もないため、残業時間を抑えられる傾向があります。
正社員登用される可能性がある
SESで働くと、業務のクオリティによっては正社員として登用される可能性があります。ベンダー側の出方次第ではクライアントからの引き抜きにも応じられるため、キャリアアップに繋がるチャンスも少なくありません。
人脈作りがしやすい
さまざまなプロジェクトを通じて多くの人と出会うため、人脈作りがしやすい傾向があります。将来的にエンジニア集団を作りたい、経験者の話を聞きたいなど、自身にメリットがある人と出会えるかもしれません。
SES契約で働く際に注意すべきポイント
SES契約は法的にグレーといわれているため、トラブルに巻き込まれないよう注意が必要です。次のポイントを押さえてSES契約を締結しましょう。
どの組織に属しているか認識が薄くなりやすい
クライアント先に常駐するため、帰属意識が薄くなりやすい傾向があります。自分がどの会社の人間なのかわからないことで精神的な充実度が乏しくなり、転職を繰り返すようになる人も少なくありません。
プロジェクトの途中で離脱するケースもある
任された業務が終わると契約が終了する場合は、最後までプロジェクトに関わることができません。やりがいを感じられない、中途半端なことにストレスを感じるという方もいます。
案件によってはスキルアップが難しい
自身のスキルを発揮できれば簡単に完了できるプロジェクトが多い場合、なかなかスキルアップができません。仕事のレベルを上げていきたい人にとっては、やりがいを感じにくいこともあるでしょう。
ホワイトなSESの特徴と探し方
SESは法的にグレーな面があるため、ホワイトなSESを探すことが重要です。ホワイトなSESの特徴や探し方について詳しく見ていきましょう。
福利厚生が充実している
給与や賞与が十分であることに加えて、福利厚生が充実しているかを確認しましょう。福利厚生が充実している会社は、それだけITエンジニアを大切にしていると考えることができます。
経験者が多く在籍している
経験者が多い企業は、それだけITエンジニアから評価されているSESと言えます。働きやすさやスキルアップなどの面で有利な傾向があります。
評価制度が充実している
評価制度が充実していれば、自身が出した結果が待遇に反映されるため、やりがいを持って働くことができるでしょう。
まとめ
SESは、ITエンジニアにとって働きやすい環境かどうか、キャリアアップが見込めるかどうかを踏まえて選ぶことが重要です。また、SESの提供を考える際は、二重契約をはじめとした違法行為をしないように十分な対策を立てておくとよいでしょう。