ビジネスにおいて、さまざまな場面で行われるフィードバック。しかし、どのような目的で行われているのか、今一つ理解していない方も多いのではないでしょうか。この記事では、フィードバックの目的や主な手法、実施する際の注意点について解説しています。フィードバックを行う際は、ぜひ参考にしてください。
フィードバックの意味とは
フィードバックとは、「問題解決や成長の促進を目的として、行動やパフォーマンスに対する評価や改善点を伝えること」を指します。もともと「フィードバック」は、ITや工学の分野で使われていた言葉です。本来「システムから出力された情報を入力側に戻し、その後の出力を制御する」という意味が転じて、ほかの分野でも幅広く使われるようになりました。ビジネスの場面においては一般的に、上司から部下へ1対1でフィードバックが行われます。
フィードバックの種類
フィードバックには「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」の2種類があります。目的が異なるので、状況に応じて使い分けましょう。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックとは、相手の行動について「良かった点」に注目して評価を行い、前向きな表現を使用して成長を促す方法です。努力をねぎらいたいときや、自信をつけさせたいときに実施されます。ポジティブフィードバックを受けることで、自己肯定感が上がり、高い意欲を持って次の業務へ臨みやすくなるでしょう。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックとは、相手の行動について「改善すべき点」を指摘して成長を促す方法です。現状維持ではなくさらに高みを目指してほしいときや、自分で課題を分析するスキルを身につけてほしいときに実施されます。ただしネガティブフィードバックは相手に精神的ダメージを与えてしまうことがあるので、語気や言葉遣いには十分注意してください。指摘した点について改善が見られたら、ポジティブフィードバックを用いて褒めることも大切です。
フィードバックの目的
フィードバックを行う際は、目的を持って実施することでより効果が発揮されます。ここでは、フィードバックの主な目的を4つ紹介します。
目標達成
フィードバックの大きな目的として、目標達成が挙げられます。成果につながる行動ができているか、目指す方向が合っているかをチェックし、必要なアドバイスを行う際に効果的です。フィードバックを適宜行うことで、組織や個人で設定したゴールに向かう道筋が明確になり、効率的に業務を行うことができます。
人材育成
フィードバックは、人材育成のためにも活用されます。上司から部下に対してフィードバックを行うことで、部下は自分の強みや課題を把握でき、行動の改善につながります。また、上司が部下のことをよく知る機会にもなり、適切なコミュニケーションやアドバイスを行う際にも役立ちます。
従業員のモチベーションアップ
従業員のモチベーションアップも、フィードバックを行う目的のひとつです。フィードバックでは、相手の課題を指摘するだけでなく、良かった行動や以前より改善された点を直接伝えます。こうすることで、部下は自分の成長を実感でき、仕事に対する自信を持つことができます。また「日頃から自分のことを見てもらえている」と感じることで、上司への信頼が深まる点もポイントです。
生産性の向上
フィードバックは、生産性の向上を目的として行われる場合もあります。フィードバックを重ねることによって、自分の課題を冷静に分析する力が身につき、効率や生産性を考えた行動を自主的に選択できるようになります。ただし、フィードバックによって従業員の生産性を上げるためには、フィードバックを行う側にも技術が必要です。
フィードバックの主な手法
一口にフィードバックといっても、やり方はひとつだけではありません。フィードバックにはさまざまな手法があるため、伝えたい内容や状況に合わせて適切な方法を選ぶとよいでしょう。
SBI型
SBI型とは、どのような状況でどのような行動が行われ、その結果についてどのような感想を持ったのかを伝える手法です。「状況(situation)」、「行動(behavior)」、「結果(impact)」の頭文字を取って名付けられています。評価の対象となる物事を順序立てて説明するため、相手に内容が伝わりやすい点が特徴です。ポジティブフィードバックにもネガティブフィードバックにも活用できます。
サンドイッチ型
サンドイッチ型とは、ポジティブな内容の間にネガティブな内容を挟んでフィードバックを伝える手法です。具体的には、最初に相手の良かった点を褒めた上で改善点や課題を指摘し、最後にもう一度前向きな言葉を伝えます。最初と最後に示されるポジティブな内容によってネガティブな内容の印象が緩和されるため、相手のモチベーションを下げることなくフィードバックできることがポイントです。
ペンドルトンルール
ペンドルトンルールとは、相手の改善点や課題を直接伝えるのではなく、フィードバックを受ける側に考えてもらう手法です。一方通行ではなく、上司と部下の間で対話をすることを目的としています。部下の能動的な行動を引き出しやすいだけでなく、深い信頼関係の構築にもつながります。ポジティブフィードバックにもネガティブフィードバックにも活用できる方法です。
フィードバックを行う際の注意点
フィードバックには多くの効果がありますが、やり方によっては相手のモチベーションや業務効率を低下させてしまうことも少なくありません。ここではフィードバックを行う際の注意点を解説しますので、当てはまるものがないかチェックしてみてください。
具体的な内容を伝える
フィードバックを行う際は、できるだけ具体的な内容を伝えることを心がけましょう。抽象的な言葉を使いすぎると、こちらが伝えたい部分を相手に理解してもらえない恐れがあります。また、具体的なアドバイスをすることによって、相手が改善策をイメージしやすくなり、実際の行動に移しやすくなります。
目標に結びつける
フィードバックは目標と結びつけて行うことで、より効果を得ることができます。反対に、目標が定まっていない状態で課題や改善を伝えても、相手のモチベーションを下げてしまうでしょう。「目標達成につながる行動ができていたか」「方向性は合っているか」といった観点を忘れずにフィードバックを行いましょう。
タイムリーに行う
フィードバックの効果を発揮させるには、タイムリーに行うことも大切です。行動後、できるだけ早い段階で実施するとよいでしょう。時間が経てば経つほどお互いに記憶が曖昧になり、正確なフィードバックができなくなる恐れがあります。もしも時間が空いてしまいそうなときは、メモを取っておくとよいでしょう。
実現可能なアドバイスをする
フィードバックの内容は、最低限「実現できるもの」でなければいけません。実践できないような難しいアドバイスを受けても、相手は改善することができず、モチベーションが低下してしまいます。人によって仕事のスキルのレベルは異なるため、相手の年次や経験に合わせてフィードバックを行うことが大切です。
人格を否定するような発言はしない
フィードバックを行う上で特に注意しなければいけないのは、相手の人格に対する発言を避けることです。例えば、性格やライフスタイルについてダメ出しを受けると、自分自身を否定されているような感覚に陥ってしまいます。あくまでも、「行動」に対してフィードバックを行うことを意識しましょう。
客観的な事実に基づいて伝える
フィードバックを行う際は、できるだけ客観的な事実に基づいて伝えることが大切です。個人的な感情や主観が混ざってしまうと、本来伝えるべき内容から軸がぶれてしまう可能性があります。部下の成長を促すためには、客観的な評価を行い、公平な視点からフィードバックを伝えることが必要です。
日頃から信頼関係を構築する
日頃から上司と部下の間で信頼関係を構築しておくことで、フィードバックの効果を高めることが可能です。例えば、ネガティブな内容を指摘されたとしても、相手が信頼できる上司であれば「自分のために言ってくれているんだ」と前向きに捉えてもらえるでしょう。普段から積極的にコミュニケーションを取り、何でも話し合える関係性を築いておきましょう。
まとめ
この記事では、フィードバックについて解説しました。フィードバックを適切に行うことで、目標達成につながりやすくなるだけでなく、従業員のモチベーションアップや生産性の向上も期待できます。今回紹介した注意点に留意しながら、部下と信頼関係を構築できるようなフィードバックを実施しましょう。