内定通知をもらったものの、内定を辞退したいと悩む方も少なくありません。内定辞退には法的に問題はないものの、マナーを守らないと企業の心証を害してしまう可能性もあります。また、最悪の場合はトラブルにも発展しかねません。この記事では、内定辞退の概要と辞退する場合の正しいマナー、すぐに使える例文を紹介します。
内定辞退とは
内定辞退とは、内定通知された採用候補者が内定承諾書を持って内定承諾した後、採用候補者の自己都合によって内定を辞退することです。内定承諾時点で労働契約が成立していることから、内定辞退は法律上、労働契約の解約にあたります。
統計から見る内定辞退の現状
21年卒の新卒内定状況調査によると、調査時点で「内定辞退率が2割」の企業が20.1%で前年比3.8ポイント増、次いで「内定辞退率が4割」の企業が17.6%で前年比3.3ポイント減、他方、辞退者なしは20.4%で前年比3.4ポイント減という結果でした。
リクルートキャリアが21年卒を対象に行った就職プロセス調査では、2020年10月時点で内定辞退率は約60%と発表しています。また、同社が実施した2021年卒の新卒内定状況調査は次の通りです。
- 辞退者なし:約20%
- 内定辞退率1割:約16%
- 内定辞退率2割:約20%
- 内定辞退率3割:約11%
- 内定辞退率4割:約18%
相互理解を深めて進路を決めてもらうためには、内定者へのフォローが重要になることがこの数字からも分かります。
内定辞退に強い拘束力はない
内定辞退に強い拘束力はありません。前述の通り、内定承諾は法律上、労働契約の成立です。
民法第627条に該当し、退職の自由によって労働契約の解約申し入れから2週間経過したら雇用終了となります。ただし、内定承諾時点では労務提供前のため、実質的には内定辞退の申し出を持って辞退を受理することが一般的です。
内定辞退と内定取り消しの違い
内定承諾者が自己都合によって内定を辞退する内定辞退とは異なり、「内定取り消し」は採用企業の事情によって内定を取り消すことを意味します。つまり、内定を取りやめる主体が「内定承諾者」か「企業」かに違いがあるのです。
内定辞退の場合、内定承諾者が申し出てから2週間後に労働契約が解約されます。一方、内定取り消しは事実上の解雇扱いです。ただし、客観的に見て認められない場合は解雇権濫用として内定取り消しを無効にできます。
内定辞退をしたい場合の正しいマナー
トラブルなく内定辞退するためには、最低限のマナーが欠かせません。トラブルにならないためにも、ここでは正しいマナーの内容についてみていきましょう。
できるだけ早く連絡する
内定辞退された企業側は、採用活動をやり直して代わりの人材を確保しなければならない可能性もあります。そのため、辞退の連絡が遅くなると、人材を確保する時間が足らずに、大きな迷惑をかけてしまう場合があります。内定辞退の意思が固まったら、できるだけ早く連絡しましょう。内定辞退を連絡する目安は、内定通知を受け取ってから1週間以内が一般的です。
基本的には対面か電話で報告を行う
内定辞退を伝える場合、メールでの報告は失礼と感じる企業や担当者は一定数存在します。また、メールは迷惑メールに振り分けられたり、見逃されたりする可能性があるため、注意が必要です。特別な事情がなければ、基本的には対面か電話で報告するようにしましょう。
営業時間内に連絡する
内定辞退の連絡は営業時間内に行いましょう。ただし、営業時間内であっても担当者が忙しい時間帯に連絡してしまうと電話に出られない可能性があります。次の時間帯はできるかぎり避けた方が無難です。
- 始業直後
- 昼休憩時間
- 終業直前
また、担当者と繋がらず折り返し電話をいただくことになった場合は、自分が連絡をとれる時間帯をきちんと伝えておくとスムーズです。
連絡がつかない場合はメールで報告
内定辞退は必ずしも対面か電話で報告しなければならないというルールはありません。担当者と連絡がつかなかったり、スケジュールが合わなかったりといった場合には、メールでの連絡も検討しましょう。ただし、メールで連絡する場合は「事前に電話したこと」や「担当者が不在であったこと」などを一文添えておくと印象も良くなります。
相手に対して失礼になる理由はNG
内定辞退の具体的理由を無理に自分から伝える必要はありません。しかし、企業側から理由を聞かれる場合もあります。そのため、内定辞退を伝える際は理由を説明できるように事前に準備することをおすすめします。
ただし「もともと第一志望ではなかった」や「福利厚生がしっかりしていない」といった角が立つような理由は失礼にあたります。「希望職種で他社の内定をもらえた」や「自分のキャリアプランにあった環境と出会えた」といった前向きな説明を心掛けましょう。
内定辞退の例文を紹介
内定辞退のマナーを理解しても、実際にどのように伝えればよいのか分からないという方も多いでしょう。これから実際に内定辞退を伝える方向けに、ここではメールと電話に分けて例文を紹介します。
メールで内定辞退を伝える場合の例文
件名:内定辞退のご報告【名前】
株式会社×××
人事部
(担当者名)様
お世話になっております。
先日、内定をいただきました(名前)です。
先程お電話いたしましたが、ご不在でしたのでメールにて失礼いたします。この度は、多くの応募者の中から内定をいただきまして誠にありがとうございます。
大変光栄なことではございますが、今後のキャリアを考えた結果、
今回は内定を辞退させていただきたくご連絡いたしました。ご多忙の中、書類選考や面接などに時間を割いていただいたにもかかわらず、
内定辞退のご連絡となり申し訳ございません。
本来であれば、貴社へお伺いもしくはお電話で直接お詫びするところではございますが、
メールでのご連絡となりましたことをご容赦いただきますようお願い申し上げます。
電話で内定辞退を伝える場合の例文
お世話になっております。御社で新卒採用の選考を受けさせていただいております(名前)と申します。採用担当者の(担当者名)様はいらっしゃいますでしょうか?
(採用担当者につながる)
お世話になっております。先日の内定通知の件でご連絡させていただいたのですが、今お時間よろしいでしょうか?
採用担当者:大丈夫です。
この度は内定をいただきまして誠にありがとうございます。大変光栄なことではありますが、今回は一身上の都合により内定辞退をさせていただきたくご連絡いたしました。
採用担当者:残念ですが、承知しました。辞退の理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?
はい。御社と並行して選考が進んでいた企業からも内定をいただきました。どちらも魅力的で最後まで悩んだのですが、今後のキャリアについて考えた結果、そちらの企業に入る方が良い選択であると考え、決断いたしました。
採用担当者:お答えいただきありがとうございます。残念ですが、承知しました。
電話でのご連絡となり申し訳ありません。
採用担当者:いえいえ、お忙しい中お電話いただきましてありがとうございます。今後のご活躍をお祈りしております。
こちらこそ、お忙しい中ご対応いただきありがとうございました。失礼いたします。
まとめ
内定辞退に強い拘束力はありません。内定承諾時点で労働契約は成立しており、内定辞退は労働契約の解約にあたるため、法律上は辞退の申し出から2週間経過したら契約終了となるためです。ただし、一方的な辞退の申し出は企業に対して心証が悪くなったり、トラブルに発展したりする可能性があります。内定辞退を円満に進めるためにも、採用担当者への感謝の意を伝えながら誠意をもって対応しましょう。