転職を検討するうえで、現在よりも年収が下がることを懸念する方もいるでしょう。年収はこれまで培った経験や知識を基準に決まるほか、転職先の業界や企業によっても変化します。
今回は転職することでなぜ年収が下がるケースがあるのか、具体的なパターンをもとに解説します。年収が下がることによるポジティブな面や、年収を下げてでも転職すべきパターンについても紹介。転職する際の指標として活用してください。
転職がきっかけで年収が下がる5つのパターン
転職で年収が下がる主なパターンは、以下の5通りです。自身が考えている転職のルートが当てはまる場合は、年収が下がる可能性を想定しておいた方がいいでしょう。
異業種への転職
たとえ現職での経験や実績が豊富で、ある程度の年収を得ていても、異業種へ転職すると年収が下がる傾向にあります。現職で経験や確かな実力があるとしても、異業種の転職先では「未経験者」となるためです。未経験者として就業することになれば、当然イチから実績とキャリアを形成していく必要があります。異業種に転職することは、年収も含めて新たなスタートであると認識しておきましょう。
大手から中小への転職
同業種への転職でも、大手企業から中小企業へ転職すると年収は下がる傾向があります。仕事内容が同じでも企業規模が変われば、資本・報酬形態も変化するためです。大手であることで高水準の年収が保証されている側面もある、と改めて認識しておく必要があります。中小企業で年収を上げることは、大手よりも厳しい基準が設けられている可能性もあります。従業員数や現在の業績なども踏まえ、自身が「貢献」することで年収に反映されることも多いと認識しておきましょう。
都心部から地方への転職
都心部から地方への転職も、年収が下がりやすいケースです。地方は都心部と比べて物価が安く、収入面も低く設定されていることが多いためです。地方企業かつ異業種への転職や、大手から中小企業への転職の場合は、より年収が下がることも想定しておきましょう。地方への転職で年収を下げたくない場合は、その地域での「大手」や成長している企業を調査したうえでアプローチするのがおすすめです。
ベンチャー企業への転職
ベンチャー企業も転職時期によりますが、年収の下がる可能性があります。起業したばかりのベンチャー企業は収益がゼロに近い場合もあり、事業を拡大する段階までの年収ダウンはやむを得ないでしょう。ベンチャー企業への転職は、経営者に賛同する人や間近で経営をみたい人に向いています。急成長して大企業になる「メガベンチャー」は一部であり、多くのベンチャー企業で高収入を期待するのは難しいでしょう。ただし、IT関連やインターネット業界のベンチャー企業は利益率が高いため、優秀な人材には人件費を使う傾向があります。そのため、極端に年収が低いということはないでしょう。
労働時間(残業)が短い企業への転職
残業手当によって低い基本給を補う働き方をしていた場合、残業時間が短い企業へ転職することで、年収が下がるケースもあります。働き方改革によって残業時間は減少傾向にあるため、転職先で現職よりも残業が少なくなることも予想されます。転職によって年収を大幅に下げたくない場合は、応募する企業の残業時間を調べておきましょう。
転職するか迷ったら?年収が下がる許容範囲と判断軸を見極めよう
やりたい仕事や魅力ある企業に転職を検討する際に、年収が下がってしまうことで悩む場合もあるでしょう。「年収とやりたい仕事のどちらを優先したらいいか」という問いで立ち止まってしまうことも考えられます。ここでは年収が下がっても転職すべきか迷う際の許容範囲や判断軸を解説します。
生活できる年収か
転職後の年収が、家族の生活を維持できる水準であるかを計算しましょう。パートナーや子供がいる場合は、ライフステージごとに発生するコストも含めて考える必要があります。無理に転職すると数年後に金銭的な問題で、再び転職しなければならなくなるため、生活費は細かく計算しておきましょう。年収が下がっても転職したい場合は、家族とよく話し合い、対策や選択肢を検討しておきましょう。
住宅ローンや学費など、長期間の出費に注意して計算しましょう。
年収減よりも魅力のある仕事か
年収が下がっても将来につなげられるスキルが習得できるなど、魅力ある仕事かを見極めましょう。他にもワークライフバランスが取りやすい、キャリアアップのチャンスなど、転職することでしか得られない魅力がある場合は、転職する価値があります。長期的なキャリアプランを描きつつ、将来の目標や自身の成長を総合的に判断して、転職すべきかを判断しましょう。
入社後に年収が上がる余地はあるか
転職することで一時的に年収が下がっても「目標達成でインセンティブが付与される」「ストックオプションが期待できる」など、年収の上がる余地があるなら検討材料になるでしょう。その際、希望的観測ではなく現実的な範囲で検討することで、入社後に金銭的な不安に陥ることは少なくなります。特にベンチャー企業やスタートアップ企業は、成長と共に年収が上がる可能性もあります。
5年後に昇進できるなど、具体的な目標を立てられるかを調べましょう。
年収の1割減に収まるか
生活水準や現在の年収によりますが、一般的に「1割減」程度が年収減の目安です。例えば現職の年収500万円であれば、1割減の年収は450万円です。月収にすると4万円程度の減少となるため、これ以上年収が下がると私生活の乱れや、仕事へのモチベーション維持が難しくなることも考えられます。ただし、貯蓄が多く、固定費がかからない場合などは2〜3割減でも生活できる場合もあります。
転職で年収が下がることはデメリットばかりではない
転職で年収が下がることを、デメリットと考えている人もいるでしょう。しかし実際には、以下のメリットがあります。ここで挙げるメリットを転職で年収が下がることと比較して、今後のキャリアや動きを再検討しましょう。
希望通りの職種に就きやすくなる
社会人として経験を積む中で、現職では実現できない新たな理想が生まれることもあります。異業種や別の土地でなければ実現できない理想だった場合、年収を度外視してでも叶える価値があると考えられるケースもあるでしょう。実際、自身が希望する職種へのキャリアチェンジは、年収面など一部を「妥協」することで実現しやすくなります。転職後に年収を上げると切り替えて自身の希望を叶えられるのであれば、年収が下がることはそこまで大きなデメリットではないでしょう。
働きやすい環境を実現できる
現職の年収に満足していても、そのほかの待遇面で不満を感じる場合もあります。就業時間や休暇、人間関係や昇格のしやすさなど、理想とは異なる待遇にジレンマがある人もいるでしょう。希望通りの職種に就くことと同様、こちらも年収面を度外視し、環境面に特化した転職活動を進めることで理想を実現しやすくなります。働きにくいと感じる環境では、年収が高くても満足いく仕事はできず、肉体や精神を追い込むことになります。そのため、まずは年収を後回しにし、環境面から整えていくのもおすすめです。
将来的に年収が上がる
現在の年収を一度リセットすることにはなるものの、転職後のキャリアが明確になっているのであれば将来的に年収をあげることは可能です。より現実的かつ確実なキャリアプランを描いたうえで転職することで、評価につながる成果を上げやすいためです。中長期的な目線にはなるものの明確なキャリアプランがあれば、理想の転職を実現したうえで年収を上げることもできるでしょう。
年収を下げてでも転職すべきケースとは?
年収を下げてでも転職すべきケースもあります。それは以下の4つのケースに該当する場合です。
- 希望通りの職種に就ける
- 働きやすい環境を実現
- 将来的な年収アップが期待できる
- 現職でのキャリアアップが見込めない
すべてに共通しているのは「年収よりも優先すべきものがある」ことです。収入面を一度リセットしてでも叶えたい理想がある場合は、年収が下がったとしても転職することを前向きに検証してみましょう。
年収を下げずに転職する方法
どうしても年収を下げずに転職したい場合は、以下の3つの方法を実践してください。
念入りに企業研究する
転職前にしっかりと企業研究を行うことで、年収を下げずに転職できる可能性があります。例えば給与水準が高い企業や、自身のこれまでの経験が給与に反映されやすい企業を選ぶことです。年収を下げないよう、自身のスキルや経験を評価してくれる企業を探しましょう。
キャリアビジョンをはっきりさせる
自身の理想とするキャリアを明確に伝えることで、収入面を優遇してくれる場合があります。入社意欲の高さやプレゼンテーション能力、計画的な行動力を示すことで、転職後まもなく収入を上げることも可能です。キャリアビジョンが明確になっていない人は成果や評価に結びつきにくいため、転職後に年収を維持もしくは上げることは難しいといえます。
転職に活かせる経験・スキルを備えておく
異業種や他社でも優遇される経験やスキル、資格などを事前に取得することが推奨されます。たとえ別会社でも共通して活用できる能力があると判断されれば「即戦力」として採用されます。最初から責任のあるポジションを任せられるため、年収が下がることも少ないでしょう。
転職エージェントに相談する
転職で年収を下げたくないと考えているなら、転職エージェントに相談しましょう。企業研究・キャリアビジョンへのアドバイスや、これまで培ってきたスキル・経験を活かせる求人を提案してくれます。他にも非公開求人の紹介、書類作成や面接対策への客観的アドバイスなど、転職活動全般をバックアップしてくれます。さらに企業に対し、年収を下げないための交渉もしてくれるため、転職活動を進める際に賢く活用しましょう。
現役の転職エージェントが答える転職Q&A
ここでは、転職エージェントで相談の多い年収に関する質問について、現役の転職コンサルタントが解説します。
20代で年収が下がる企業へ転職するのはありですか?
20代で年収の下がる企業への転職はありです。なぜなら、20代は自身のスキル次第で年収を上げられるチャンスが多いからです。20代の転職は将来どんな分野で活躍したいかを念頭におき、キャリアビジョンを明確にして転職活動をしましょう。
30代で年収が下がる場合、転職は厳しいですか?
経験を活かしたキャリアアップのための転職であれば、30代で年収が下がる選択も検討する価値はあります。30代はライフスタイルが変化する時期のため、20代よりも未経験への転職や軸のない転職はリスクが高くなるでしょう。将来のために必要な転職ならば、年収減が一時的になるよう計画的な行動を取りましょう。
年収が下がってもやりがい重視で転職するのはあり?
やりたい職種ややりがいのある仕事が明確な場合は、年収が下がっても転職するのはありです。たとえ給料が高くても手応えのないことや興味のないこと、苦手なことを続けるのは、将来的に大きなストレスになる可能性があります。ただし、家族がいる場合は生活水準を維持できるかを計算し、家族とじっくり話し合って同意を得ることも大切です。
年収が100万円下がる場合、転職するのは危険ですか?
現職の年収の金額によりますが、一般的に年収が100万円以上下がる転職の場合は、生活に与える影響が大きくなることに注意しましょう。例えば現職の年収が400万円ならば転職後は300万円となるため、生活の見通しが立たなくなる可能性もあります。このような場合は現職にとどまるか、他の転職先を探すことをおすすめします。
転職して年収が上がる場合もある?
現職よりも業績が好調の企業に転職した場合は、年収が上がる可能性があります。同業種への転職や地方から都心部への転職、中小から大手の転職も、年収が上がるパターンです。他にも評価制度やインセンティブのある企業や、諸手当が充実している企業への転職で事実上年収アップすることもあります。念入りな企業研究や明確なキャリアビジョンが評価されれば、最初から年収を高く設定してもらえるでしょう。
まとめ
今回は転職で年収が下がるケースや、年収が下がることによる利点、年収を下げてでも転職すべきパターンについて紹介しました。年収を下げずに転職する方法や、反対に年収が上がるパターンも紹介しています。収入面は働くうえで非常に重要なものです。しかし収入だけに固執し、自分らしく働けない環境に身を置き続けることは、今後の人生に悪影響を与えてしまいます。本記事を参考にしつつ、転職で年収が下がることをネガティブなものと捉えず、積極的にキャリアチェンジを検討してみてはいかがでしょうか。