「商品やサービスなどに付加価値をつける」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。付加価値をいかにつけるかにより、商品やサービスの売上をアップすることができます。ここでは、付加価値とは何か、ビジネスにおける付加価値に期待できる効果や付与する手順、方法などについて解説します。
付加価値とは
付加価値とは、商品やサービスに付与する価値のことです。商品やサービスの機能、役割などに注目すると、どのような付加価値があるのかが見えてきます。例えば、デザインで高い評価を得ている場合、「競合の商品と比較してインテリアに馴染みやすく、デザインを強く意識する層に大きな支持を得られること」が付加価値となります。
消費者は、付加価値を見て購入するかどうかを決めるため、付加価値が少ない商品やサービスは競合に負けてしまうでしょう。また、原材料費と売値の差額を付加価値とする考え方もあります。例えば、製造に10万円がかかる商品を15万円で販売すれば、付加価値は5万円となります。
付加価値生産性との違い
付加価値生産性とは、従業員1人あたりの付加価値のことです。計算式は、「付加価値額÷従業員数」となります。一般的に「生産性が高い・低い」という言葉は、この付加価値生産性を指します。つまり、従業員に支払った給与をはじめとした経費に対して、どれだけ多くの価値を生み出しているかを示します。
付加価値をつけるメリット
付加価値が不十分でも、商品やサービスが売れることもあります。これは、人の目に触れる商品・サービスが異なるためです。例えば、10個の商品のうち3つの商品しか目に触れなかった場合、競合は2社のみです。その中で、付加価値が高いのであれば、購入に繋がるでしょう。
マーケティングに力を入れることで、付加価値が少なくても販売数を伸ばすことは可能です。しかし、付加価値をなるべく多く付与しなければ、価格競争に巻き込まれやすかったり営業が難航したりする恐れがあります。それでは、付加価値を付与するメリットについて詳しく見ていきましょう。
価格競争に巻き込まれにくい
付加価値が高いと、価格競争に巻き込まれにくくなります。業界全体が値下げの方向へ進むと、自社の商品やサービスも値下げせざるを得ません。しかし、付加価値が高ければ値下げしなくても商品の販売数に影響が起こりにくくなります。その結果、値下げによってブランドの価値を損ねることなく、売上を維持できるのです。
営業がスムーズに進みやすい
付加価値が高ければ高いほど、営業はスムーズに進みやすくなります。営業の際は、他社製品との違いを示す必要があります。説得力があり、見込み顧客のニーズを満たしているのであれば、購入に繋がるでしょう。付加価値が高い商品やサービスは、それを購入するメリットを提示しやすいため、営業がスムーズに進められます。例えば、他社製品よりもデザインに優れている場合、「ほかにない優れたデザインだから、貴社のニーズを満たしている」と自信を持って伝えられることでしょう。
売上が安定しやすい
付加価値が高い商品やサービスは、売上が安定しやすい傾向にあります。同ジャンルの商品やサービスが次々と登場する中で、売上を安定させることは至難の業です。アップデートを繰り返したり広告配信を継続したりすると、経費も大きくなります。付加価値が高い商品やサービスは、業界内でも知名度が高まるため、知名度や機能性の向上などに多額のコストをかけなくても売上が安定するでしょう。
付加価値の計算式
付加価値の計算方法には、控除法と加算法があります。付加価値を計算する対象に応じて使い分けることがポイントです。それぞれの計算式について詳しく見ていきましょう。
控除法
控除法は中小企業方式とも呼ばれ、次の計算式で算出します。
付加価値=売上高-外部購入価値
外部購入価値には、材料費や部品費、商品の購入費、運送費、外注加工費などが含まれます。つまり、売上高から商品の製造にかかった経費を差し引くことで付加価値を算出する方法です。製造業をはじめとしたものづくり企業に適用できる計算式です。
加算法
加算式は日本銀行方式とも呼ばれ、下記のように算出します。
付加価値=経常利益+人件費+賃借料+金融費用+租税公課+減価償却費
この計算式は、付加価値を作るためにどのような費用が必要なのかを示します。加算式で算出する付加価値は控除法で算出する付加価値と同じであり、足すか引くかの違いのみです。
付加価値をつける際の注意点
競合製品を考慮せずに機能やデザインを工夫したり、わかりにくい付加価値をつけてしまったりすれば、付加価値を付与するメリットを得られません。コストが高くなることで利益が減少する可能性もあります。それでは、付加価値を付与する際の注意点について詳しく見ていきましょう。
時と場合によって付加価値の基準が異なる
商品やサービスの付加価値の基準は、時と場合で異なります。例えば、デザインが追求されている時代では、デザインが優れた商品の付加価値が高まります。また、購入者の価値観にも付加価値の基準が左右されるでしょう。Aにとっては付加価値が高くても、Bにとっては付加価値と見なせない場合があります。すべてのターゲットに対して、付加価値が売上に直結するとは限りません。付加価値の基準が変化することについて理解したうえで、商品やサービスを作りましょう。
わかりにくい付加価値ではメリットを得られない
わかりにくい付加価値は、ターゲットに気づいてもらえません。見た目ですぐにわかる、使えばすぐにわかるような付加価値を付与しましょう。
基本的な性能を高めることも重要
付加価値を付与することばかり意識して、重要な基本的な性能が低ければ競合の製品に勝つことはできません。基本的な性能を高めて売れる基盤を整えてから、付加価値を付けましょう。例えば、どれだけデザインが優れていても、性能が低くて本来の目的を達成できない場合は、なかなか購入されないと考えられます。
まとめ
付加価値を付与することで、商品やサービスは購入されやすくなります。また、価格競争に巻き込まれにくくなり、ブランドの価値を損ねにくくもなるでしょう。このように、付加価値を付与するメリットは大きい一方で、時と場合によって付加価値の基準が異なることや、わかりやすい付加価値をつけるべきであることなど、いくつかの注意点もあります。メリットを十分に得るためにも、今回解説した注意点を踏まえて付加価値を付与しましょう。