その場限りの利益を追い求める営業手法では、企業はいつまでも経営が安定しません。そこで登場したカスタマーサクセスという考え方は、現在ではスタンダードな手法として多くの企業に浸透しています。ここでは、カスタマーサクセスの内容から推進するメリット、実現するポイントなどについて詳しく解説します。
カスタマーサクセスとは
カスタマーサクセスとは、顧客を成功に導くことで結果的に自社の利益に繋げる考え方です。競合他社との競争に勝つという考え方では、その場限りの利益を追い求めてしまいがちです。たとえ一時的に多額の利益を得たとしても、継続的な収益には繋がらないでしょう。カスタマーサクセスは、顧客が成功を収めて発展することで、自社の利益も拡大していきます。
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスと似た言葉に「カスタマーサポート」があります。カスタマーサポートは、顧客が抱える問題やトラブルを解決することが目的です。一方、カスタマーサクセスは顧客を成功へと導くことが目的です。カスタマーサポートで顧客が抱える問題やトラブルを解決しても、それが成功に直結するとは限りません。ただし、企業に対する信頼性は高まるため、商品やサービスの購入に繋がる可能性はあります。
カスタマーサクセスが注目される理由
カスタマーサクセスが注目されている背景には、クラウドサービスの台頭があります。スマートフォンやタブレットなどが普及し、インターネットを通じて場所を問わずにサービスを利用できる「SaaS」が登場しました。また、利用した期間だけ利用料を支払う「サブスクリプション」も同時期に普及し始めています。
サブスクリプションが広まったことでさまざまなサービスに触れるきっかけが生まれ、多くの企業にチャンスが訪れるようになりました。そこでさらに自社サービスを長く使ってもらうためには、顧客を成功に導かなければなりません。そこで、カスタマーサクセスという考え方が生まれたのです。
カスタマーサクセスを推進するメリット
カスタマーサクセスを推進すると、結果的に自社の利益に繋がります。また、ほかの見込み客からの信頼性も高まります。カスタマーサクセスがどのような形で利益へと繋がるのか詳しく見ていきましょう。
サービスの継続契約に繋がる
カスタマーサクセスの考え方で顧客を成功に導くと、企業の信頼性が高まります。そのため、サブスクリプション型サービスの継続契約に繋がるでしょう。これを実現するためには、サービスの基本的な使い方をレクチャーするだけではなく、顧客にとってベストな利用方法をアドバイスするなど、一歩踏み込んだサポートが必要です。
当然ながら時間と労力がかかりますが、サービスの継続契約に繋がれば利益を得られるため、先行投資と考えるとよいでしょう。
アピールできる実績が増える
カスタマーサクセスの考え方を継続し、顧客を次々と成功に導くことで、見込み客へアピールできる実績が増えます。実績は、Webサイトに掲載しましょう。社名の掲載を顧客から許可されなかったため、社名を伏せて実績や成功例を記載している企業もあります。しかし、社名や担当者名、業種などの情報を明記した方が見込み客の興味を確実に引けるでしょう。カスタマーサクセスの考え方でサポートした企業は、顧客との信頼関係を高いレベルで築けるため、Webサイトへの情報掲載を許可してもらいやすいといえます。
より良い製品・サービスの提供に繋がる
カスタマーサクセスを通じて顧客との信頼関係を高いレベルで構築すると、別の製品やサービスの購入に繋がります。すでに提供している製品やサービスのアップグレード版も推奨しやすくなるでしょう。そして、より大きな成功をおさめることで、また別の製品やサービスの購入に繋がります。
カスタマーサクセスを推進するときに見るべき指標
カスタマーサクセスを推進しているものの、効果が出ているかどうかわからない場合があります。これは、カスタマーサクセスの成果指標を設定していないためです。カスタマーサクセスを推進する際は、次の指標に注目しましょう。
LTV(顧客生涯価値)
LTV(顧客生涯価値)は、取引開始から終了までに顧客から得た利益を示す指標です。全ての顧客の平均値から算出する際は、次のように計算します。
平均購買単価×収益率×購買頻度×継続購買期間
購買単価や購買頻度が高いと、LTVも高くなります。購買単価や購買頻度が高いことは、自社製品やサービスの継続利用や上位モデルの購入に繋がっていることを示します。
チャーンレート
チャーンレートは解約率や退会率などのことで、サブスクリプション型サービスを提供している場合は必ず追うべき指標です。顧客数から算出する「カスタマーチャーンレート」、収益から算出する「レベニューチャーンレート」があります。
1ヵ月あたりのチャーンレートを算出する計算式は次のとおりです。
カスタマーチャーンレート=当月の解約顧客の数÷前月末時点での契約顧客の数×100
レベニューチャーンレート=当月中の解約・プラン変更によって失われた収益÷前月の月次収益×100
NPS
NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、製品やサービスを使用した顧客が別の人にすすめたくなる気持ちを数値化した指標です。顧客に対して、「友人や同僚にすすめられるかどうか」を質問し、0~10の値で回答してもらいます。そして、数字に応じて以下のように分類します。
- 0~6:批判者
- 7~8:中立者
- 9~10:推奨者
それぞれのグループの割合をパーセンテージ(%)で表し、推奨者から批判者の割合を差し引いてNPSを算出します。
推奨者の割合(%)-批判者の割合(%)=NPS
カスタマーサクセスを実現するためのポイント
カスタマーサクセスを実現するには、顧客の立場に立った対応が必要です。顧客の課題を見極めつつ適切なサポートを行いましょう。カスタマーサクセスを実現するためのポイントについて詳しく解説します。
顧客の課題を見極める
製品やサービスの目的は、顧客の課題を解決して成功へ導くことです。顧客の課題を解決するには、課題を見極めなければなりません。課題は顧客自身も理解していないケースが少なくないため、カスタマーサクセスは顧客の課題を見つけるスキルが必要です。
担当者によりサービスの質の差をなくす
担当者によってサービスの質が異なる場合、顧客との信頼性に悪影響が及びます。現在、使用している製品が優れていても、別の製品には問題があるかもしれないという疑念が生じ、LTV(顧客生涯価値)が下がることが予想されます。そのため、担当者によるサービスの質の差をなくすことは必須です。
サービスの質の差をなくす方法には、社内マニュアルの制定、社内教育のプロセスの策定などがあります。
契約継続にこだわりすぎない
契約継続にこだわりすぎると、顧客の成功ではなく自社の利益を追い求めるスタイルに変わってしまいます。顧客の成功に繋がらない製品やサービスなのであれば、別の製品・サービスを提案しましょう。
まとめ
カスタマーサクセスは、顧客を成功に導くことで結果的に自社が利益を得る考え方です。顧客の成功が自社の成功に直結するため、目先の利益を追い求めるのではなく、顧客の課題を解決することに意識を向けましょう。また、LTV(顧客生涯価値)やチャーンレートなどを定期的に追って、カスタマーサクセスの効果が出ているかどうか検証してください。