求人情報を確認するときは、仕事内容や給与、福利厚生などの項目を細かくチェックする方が多いと思います。しかし、年間休日数については詳しく見ていない方がほとんどでしょう。年間休日の基準や平均値がわからなければ、どう判断すればよいか悩んでしまいますよね。この記事では、年間休日の概要や重要性、平均休日数についてわかりやすく解説します。
年間休日とは
年間休日とは、土日祝日・年末年始休暇・夏季休暇など、会社が就業規則で定める1年間の休日日数を合計したものです。労働者全員が同じタイミングで取得する休日の合計と考えればわかりやすいでしょう。年間休日は会社が独自に定めるものであり、日数は会社によって異なります。そのため、年間休日がどれくらいあるかは入社前にしっかりと確認しておかなければなりません。
年間休日の最低ラインは「105日」
労働基準法で定められている「法定休日」が年間休日に該当し、1日の勤務時間を8時間とする場合の年間休日の最低ラインは「105日」となっています。ただし、多くの企業は週休2日制もしくは完全週休2日制を採用しており、実質的な平均年間休日は「120日前後」となるでしょう。
年間休日の最低ラインと実質的な平均年間休日が異なる理由は、労働基準法第36条によって労働時間を「1日8時間・週40時間まで」と定めているためです。1日の労働時間を8時間で考えると、週5日勤務で40時間に達します。そのため、労働時間を確保するには休日数を増やさなければならず、結果として実質的な平均年間休日が増えるというわけです。
転職において年間休日が重要とされる理由
転職において年間休日が重要視される理由は、会社の労働環境や福利厚生を知るための指標になるからです。年間休日が極端に少ない企業は、人手不足で社員を休ませる余裕がない状態である可能性があります。そのため、「休日取得の申請がしづらい」「慢性的な残業や休日出勤が横行している」など、ネガティブな要素が潜んでいるケースも少なくありません。年間休日数は、転職先を比較・検討するときに有効に使えるデータのひとつなのです。
休日と休暇の違い
休日とは「仕事を休める日」であり、労働者全員が同じタイミングで休める日のことです。労働基準法における法定休日は、原則「毎週1日」もしくは「4週間を通じて4日間以上」の休日を設けるように定められています。ただし、労働時間との兼ね合いもあり、多くの企業では法定休日とは別に独自の「法定外休日」を設けています。
一方で休暇とは、「本来働く必要がある日の中で労働を免除される日」のことです。有給休暇や生理休暇、誕生日休暇などが該当し、一般的には労働者の申請によって仕事を休む権利を得られます。このように、いずれも仕事を休める日でありながら、休日と休暇では意味が大きく異なる点に注意が必要です。
完全週休2日制の場合の年間休日はどれくらい?
完全週休2日制とは、週の中で必ず休日が2日ある制度のことです。完全週休2日制の場合、年間休日数がどのくらいになるのかを確認してみましょう。
1年間を週換算すると「365日(年間)÷7日(1週間)」となり、「約52週」となります。完全週休2日制の場合、「52週間×2日(週の休日数)」となり、1年間あたりの休日は「104日」です。さらに、国民の祝日は16日(※2022年の祝日数)となるため、合計すると完全週休2日制の年間休日数は「120日」程度となります。
週休2日制とは異なり、完全週休2日制は週に2日必ず休日があります。そのため仮に他の休日がなかったとしても年間休日数が確保されやすく、就職・転職時に人気の条件となっています。
年間休日としてカウントされる休日の種類
「法定休日」と「法定外休日」以外にも、年間休日としてカウントされる休日があります。改めて各休日の概要を詳しく確認しておきましょう。
1.法定休日
法定休日とは、労働基準法によって定められた休日のことです。労働基準法には、「週1日以上の休日」と記載されています。1年は約52週あるので、年間の最低法定休日数は52日となります。ただし、これだけでは年間休日の最低ラインである105日に届かない点には注意が必要です。
2.法定外休日
法定休日だけでは年間休日の最低ラインを満たせないため、不足する日数を補うために会社が独自に設けるのが法定外休日です。完全週休2日制の場合、片方は法定休日となり、もう片方が法定外休日となります。年間休日数が多ければ、比例して法定外休日数も多くなります。
3.振替休日(振休)
休日出勤のために休日と労働日を入れ替えるのが振替休日です。同じ週の労働日に振替休日を設定した場合、法定休日出勤の割増賃金は通常発生しません。
4.代休
休日出勤した後に労働日を休日として設定するのが代休です。法定休日に出勤した場合は、1.35倍の割増賃金が発生します。割増賃金の発生有無が振替休日との違いです。
企業における年間休日の平均値
前述の通り、年間休日数は企業によって異なります。ここからは、業種別・規模別に分けて企業の年間休日の平均値を見てみましょう。
業種別の平均値
厚生労働省が公開した「平成30年就労条件総合調査」によると、最も年間休日が多いのは、情報通信業と学術研究・技術サービス業で、年間休日の平均は「118.8日」でした。次いで金融業・保険業が「118.4日」、電気・ガス・熱供給・水道業が「116.8日」となっています。一方で年間休日が最も少ないのは宿泊業・飲食サービス業で、平均は「97.1日」という結果でした。連休や祝日が繁忙期になりやすいサービス業は不定休が多く、年間休日数が少なくなりやすい側面があります。
規模別の平均値
次は会社の規模別に年間休日の平均値を見てみましょう。「平成30年就労条件総合調査」による規模ごとの年間休日数は以下の通りです。
- 労働者数が1,000人以上規模:118日
- 労働者数が300~999人規模:114.4日
- 労働者数が100~299人規模:111.9日
- 労働者数が30~99人規模:107.9日
この結果を見ると、年間休日数は会社の規模に比例して多くなっていることがわかります。雇用者数の多い大企業は、休日日数や福利厚生が充実していることが要因として考えられます。
年間休日が105日以下でも違法にならない4つのケース
実は年間休日の最低ラインである105日を下回っても違法にならない特殊なケースが存在します。それぞれの条件や内容について詳しく見ていきましょう。
1.労働時間を短く設定している
労働基準法における年間休日の最低ラインは105日であるものの、下回るからといって違反にはなりません。労働基準法第35条では、労働者に週1回もしくは4週間に4回以上の休日を与えること、同法第36条には、「1日8時間・週40時間」という定めがあります。
そのため、例えば労働時間を1日5時間と短く設定した場合は、週6日勤務しても週の労働時間が30時間に収まるため、第36条の範囲内となります。つまりこの勤務時間であれば、週1日休日を設けるだけで第35条も満たした状態となるのです。
2.36協定を締結している
36協定とは、時間外労働・休日労働に関する協定届のことです。労働基準法第36条に基づいて、法廷労働時間を超えて時間外労働をさせる際の取り決めを記載します。36協定では、時間外労働の上限を「月45時間・年360時間」と定めており、この範囲内であれば年間休日が105日以下でも違法にはなりません。ただし、この協定には過半数の労働者が組織する労働組合との協定か、労働者の過半数を代表する方と協定を結び、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
協定を締結していない場合や、協定届を出していない場合は違反となるので注意が必要です。また、36協定に基づいて時間外労働や休日労働をさせるときは、所定の割増賃金を支給しなければなりません。
3.有給休暇を含めている
通常であれば、有給休暇は年間休日には含まれません。しかし、2019年から始まった有給取得義務化によって、年に5日は必ず有給を取得することが義務付けられました。そこで、年間休日を100日に設定し、年次有給休暇5日をプラスすることで、トータルの年間休日を105日にしている企業も多くあります。このように、確実に取得させることが前提の有給休暇を含めていれば、年間休日が少なくても違法にはなりません。ただし、この方法は労働基準法第36条をクリアしていることが前提となります。
4.変形労働時間制を採用している
変形労働時間制とは、労働時間を1日単位ではなく、月や年といった単位で換算できる制度です。変形労働時間制を採用すれば、繁忙期には集中して勤務してもらい、閑散期に別途休日を設けることができます。そのため、変形労働時間制を採用している企業では、年間休日が105日以下になっても違法にはなりません。宿泊業をはじめ、繁忙期と閑散期が明確に分かれている業種で多く取り入れられている制度のひとつです。
まとめ
この記事では、転職するときに押さえておくべきポイントとして年間休日の重要性を解説しました。年間休日が極端に少ない企業の場合は、人手不足による長時間残業や休日出勤などのリスクがあります。ワークライフバランスを保つためにも、転職時には年間休日数についてしっかりと確認しておきましょう。