現代のビジネス市場は変化が早く、社内のリソースだけでは柔軟な対応が難しいと感じる経営者や企業担当者が多くなっています。これらの課題を解決する方法として需要が高まっているのが「アウトソーシング(外注化)」です。アウトソーシングを活用することで時代の変化に柔軟な対応ができ、人手不足の解消や業務効率化、コスト削減といった課題解決にもつながります。この記事では、アウトソーシングの概要や効果、導入するメリット・デメリットを解説します。
アウトソーシングとは
アウトソーシング(Outsourcing)とは、社内業務の一部分を外部委託することです。自社に不足しているノウハウや人材を外部から調達できるため、業務効率化や生産性向上、競争力強化につなげることができます。
アウトソーシングの需要が高まる背景
技術の進歩と市場のグローバル化によって、市場のトレンドが変化するスピードは早まっています。そのため、自社内のリソースだけでは柔軟かつスピーディに対応できない企業が増えているのです。
このような背景から、必要なリソースをすぐに確保して動かせるアウトソーシングの需要が高まっています。また、人手不足の深刻化も背景のひとつで、アウトソーシングを活用することで外部リソースによって容易に人員を補填できます。
人材派遣との違い
アウトソーシングと人材派遣の違いは「仕組み」です。
契約の形態に関して、アウトソーシングでは、業務を丸ごと委託することになり、アウトソーシングを活用する企業と、提供する企業との契約になります。具体的な業務指示は委託先の責任者が出します。
派遣の場合、派遣業者と派遣を受け入れる企業が労働派遣契約を結びます。派遣先の社員が派遣スタッフに業務指示を出す仕組みになっています。
また、業務を行う場所にも違いがあります。アウトソーシングはあくまでも委託先で業務を行いますが、人材派遣は派遣スタッフが派遣先の企業内で業務を行うのが一般的です。
アウトソーシングが効果的な業務
アウトソーシングが効果的な業務は、「時期によって仕事量が増える業務」です。繁忙期・成長期などのタイミングに業務委託を行えば、一時的にリソースを最大化できます。また、ルーティン化しやすい業務もアウトソーシングに適しています。業務マニュアルをしっかりと作り込むことで無駄がなくなり、一定の品質を維持できる点も特徴です。
アウトソーシングの種類
アウトソーシングの種類は、次の3つが挙げられます。
- KPO
- ITO
- BPO
「KPO(Knowledge Process Outsourcing)」とは、情報分析や医療開発など、専門性の高い業務を委託することです。KPOはデータ収集や分析といったマニュアル化されていない業務を、低賃金ながら優秀な人材が多くいる中国やインドの企業に委託することが一般的です。
「ITO(Information Technology Outsourcing)」とは、情報技術・システムに関する業務を委託することです。システム運用・管理の中でも、個別性が高くない定型業務の委託が適しています。ITリテラシーの低い企業が、高いセキュリティを取り入れることを目的に専門業者にすべて委託する場合も多いようです。
「BPO(Business Process Outsourcing)」とは、人事・総務・経理・企画・設計など、経営に関わる業務プロセスを委託することです。これらの業務を専門企業に委託することで、コストやリソースを削減でき、業務全体の品質を向上させることができます。
アウトソーシングを行うメリット
アウトソーシングの活用は、ビジネスにとってどのような効果が期待できるのでしょうか。ここからは、アウトソーシングによって得られるメリットを4つのポイントで解説します。
時代の変化に対して柔軟に対応できる
時代の変化に対応するためには、新しい分野の業務を取り入れなければならないケースもあります。しかし、新しい分野の業務に対応できる社員を採用して育成するまでには、多くの時間とコストがかかります。アウトソーシングを活用することで、目先の変化に応急的に対応し、空いたリソースを使って人材の育成が可能になります。
品質と効率を同時に高められる
自社の社員のみで業務を行っている場合、人員不足が原因で時代の変化に対応できない可能性があります。アウトソーシングを行えば、委託先の知識・スキル・ノウハウを活用できるため、業務の品質や効率性を同時に高めることができます。
人件費・固定費を削減できる
アウトソーシングを活用することで、新しい業務に対応する人材の採用コストや給与、設備費用といった人件費・固定費を抑えることができます。また、社内の人材リソースを割く必要がないため、人材配置を柔軟に行えるといったメリットも得られます。
組織の肥大化を防げる
アウトソーシングの仕組みを活用した経営手法として、アウトソーサーと呼ばれるものがあります。アウトソーサーとは、自社に存在している間接部門を分社して独立させる経営手法です。
間接部門に携わっている自社の人材も新設したアウトソーシング会社に移すことになるため、組織の肥大化によるリスクを回避できます。企業を再構築する手段としても、アウトソーシングは有効的に活用できます。
アウトソーシングを行う際の注意点
便利に活用できるアウトソーシングですが、取り組み方によってはマイナスに働く可能性があります。確実にメリットを得るためには、いくつかのポイントを押さえて取り組まなければなりません。ここでは、アウトソーシングを行う上で注意すべき点を紹介します。
社内にノウハウが蓄積しない
アウトソーシングを行うと、社内にノウハウが蓄積しにくくなります。そのため、依頼したい業務を洗い出し、ノウハウを蓄積すべき「コア業務」とアウトソーシングしても問題ない「ノンコア業務」に分類することが大切です。
利益に直結するような業務はノウハウの蓄積が欠かせないため、アウトソーシングはできるかぎり避けて自社で行うようにしましょう。
適正コストを判断しにくい
アウトソーシングを依頼する業務は、これまで社内で当たり前のように対応していた内容であることも多いでしょう。そのため、社内で適正コストを算出しにくく、判断に迷うケースが少なくありません。アウトソーシングをした結果、利益を圧迫してしまう事態にもなりかねないため、適正コストの設定には特に注意する必要があります。
情報漏洩の可能性がある
アウトソーシングを依頼する業務によっては、顧客情報の共有が必要となる場合もあります。しかし、依頼先によっては適切なセキュリティ対策が施されていないケースがあり、場合によっては情報漏洩が発生する恐れもあります。
顧客情報などの機密性が高い情報を共有する際は、その必要性を熟慮するのはもちろんのこと、依頼先のセキュリティレベルも必ず確認しておきましょう。
ガバナンスが弱体化するリスクがある
アウトソーシングはガバナンスの弱体化リスクも抱えています。ガバナンスとは、企業経営において各業務がどのように進められているのかを管理することです。
アウトソーシングによって業務プロセスが曖昧になると管理が行き届かなくなり、結果としてコントロール不能になる可能性があります。ガバナンスの弱体化を防ぐためにも、業務内容の可視化やコミュニケーションの充実を図り、常に状況を把握する必要があります。
まとめ
今回はアウトソーシングの概要について重要なポイントを解説しました。正しく活用することで企業の成長性を大きく高められることがメリットですが、どの業務をアウトソーシングに割り当てるのかには注意が必要です。自社の現状を分析し、アウトソーシングが本当に必要かどうかを見極めたうえで、信頼できる企業に依頼しましょう。