多くの日本企業において、人員不足などによる品質低下が懸念されています。品質低下を防止するための施策として「品質管理」を実施・検討する企業がほとんどです。品質管理を担当する人材の需要も高まっており、転職先の選択肢にも挙がります。しかし、品質管理の概要や実際の手法まで理解しきれていない方が多いでしょう。
今回は、品質管理の仕事内容や必要となるスキルについて紹介します。顧客が抱く品質管理に関する要求にも触れているので、品質管理担当者のキャリア形成を検討している方はぜひ参考にしてください。
品質管理とは
品質管理とは、商材やサービスにおける一定の品質を、各種検査・検証により保証することです。また、より品質の高い商材・サービスを、効率よく製造・構築することも求められます。従来の品質管理は、目視での検査が一般的でした。しかし昨今では、デジタル化の推進で、より確実かつ高性能の検査を導入・実現する企業も増加傾向にあります。
品質保証との相違点
品質管理が生産から販売までを一貫して管理するのに対し、品質保証は製品の品質を保証するのに特化した業務です。正確には品質管理と品質保証に違いがあるというより「品質管理の中に品質保証の業務がある」ことになります。品質管理という枠組みの中で、品質を保証するためのチェック・サポート業務などを行うのが品質保証です。
品質管理の必要性
企業において、商材やサービスの品質に関する欠陥は、顧客からの信用を失う重大な過失です。品質に問題のあるサービスを市場に流通させてしまうと、企業そのものの存続が危ぶまれる可能性もあります。サービスを届ける顧客にもデメリットが発生するため、企業活動におけるあらゆる視点から、品質管理が非常に重要であることがわかります。
品質管理の仕事内容
品質管理担当者の仕事内容は、以下の通りです。今後、品質管理をキャリア候補として検討している方はぜひ参考にしてください。
仕事内容 | 概要 |
---|---|
工程管理 | ・商品やサービスを製造する工程そのものを管理する ・労働力・原料・設備などが対象 ・作業手順の標準化を担う |
品質検証 | ・原材料・部品などの検査、管理を担当する ・外観検査システムの活用による検証 |
品質改善 | ・製造工程における問題点の洗い出しを行う ・問題点を事前に抽出して納品トラブルなどを未然に防ぐ ・基準に満たない不適合製品の原因追及・再発防止 |
品質管理の手法
品質管理の手法には、主に以下の8種類が挙げられます。ここでは、品質管理の手法それぞれについて詳しく解説します。
- QC7つ道具
- PDCAサイクル
- IE
- 5S
- 4M
- TQC
- TQM
- SQC
QC7つ道具
品質管理における、データの集計・分析・改善に活用できるツールを指す総称です。QC7つ道具に該当するツールは、以下の通りです。
- チェックシート
- グラフ
- ヒストグラム
- パレート図
- 管理図
- 散布図
- 特性要因図
PDCAサイクル
PDCAサイクルとは、以下4つの手順で構成される手法です。品質管理は、一度改善しただけで終わりではありません。PDCAサイクルを実施し、品質を維持・向上し続けることが大切です。
- Plan(計画)
- Do(実行)
- Check(確認)
- Action(処理)
IE
IEとは、生産工学や産業工学を意味する「Industrial Engineering」の略称です。適切な品質や価格で製品を製造・販売するため、予算や原価の管理、資源開発などの工程を工学的手法に基づいて推進していきます。品質管理におけるIEは、質と量の両面を向上させるために重要視されます。
5S
現場の環境を、適切に管理・維持するための考え方です。以下5つの要素の、頭文字「S」で構成されています。5Sの徹底により、ミスの軽減や業務効率化を実現できます。
- 整理
- 整頓
- 清掃
- 清潔
- 躾
4M
以下4つの要素で構成されているのが、4Mです。各要素に対し、適切な教育や整備、マニュアル化などを行うのが4Mのポイントです。
- Man(人)
- Machine(機械)
- Material(材料)
- Method(方法)
TQC
「Total Quality Control」の略語であるTQCとは、全社的な品質管理を指す言葉です。品質管理に対し、企業の一部が取り組むのではなく、企業全体で取り組むことの重要性を再認識するための概念でもあります。
TQM
TQMとは「Total Quality Management」の略です。日本品質管理学会(JSQC)により定義されており、経営層まで巻き込んだ品質管理を指します。経営から現場へトップダウンで品質管理を行うため、現場主体のTQCとは異なる概念です。
SQC
「Statistical Quality Control」の略称であるSQCは、統計的品質管理を意味します。品質管理に用いられるデータを、統計的に収集・解析したうえで品質基準の策定・管理する手法です。
品質管理において顧客が抱く3つの要求
品質管理を行ううえでは、顧客が品質・価格・納期を要求していると認識することが大切です。
品質
顧客は特定の品質に対し、使用目的などを示す特徴を要求として抱いています。品質に関する要求に応えられない製品は、市場への認知・拡大がされにくく、顧客から継続利用されにくくなります。
「肌着」を例にすると、以下が顧客の抱く要求です。
- 着心地の良さ
- 暖かさ(涼しさ)
- 生地の耐久度
- カラーバリエーション
- サイズ展開
- デザイン
価格
顧客は品質だけでなく、購入しやすい価格面も重視しています。価格に対する要求を実現するためには、顧客の要望を叶えつつ、コスト削減・利益獲得を意識することが大切です。
納期
品質管理における納期は、顧客が製品を手に入れたい時期を指します。ただ指定された日に納品するだけでなく、以下の基準をもとに正確かつスムーズに納品することが大切です。
- 何日の何時まで
- 何日の何時に
「何日の何時まで」であれば、納品日さえずれなければ比較的自由に時間を設定できます。しかし「何日の何時に」と要求がある場合は、指定された時間に確実に納品できるようにする必要があります。
品質管理の担当者に求められるスキル・資格
品質管理担当者として勤務するためには、ここまで紹介した品質管理の重要性や手法、顧客の要求について把握しておくことが大切です。加えて、現状把握や原因分析、対策の実施における経験値や知識が重要であることも理解しておきましょう。また、製品製造に携わる人材と、円滑にコミュニケーションを取れる能力も、品質管理担当者には必要です。
品質管理担当者になるためには、必ず取得すべき資格はありません。しかし、関連資格として日本規格協会グループが主催する「品質管理検定(QC検定)」があります。転職活動・転職後を有利にするため、取得をおすすめします。
まとめ
今回は、製品の品質低下を防止するために活躍する、品質管理担当者になるための情報を紹介しました。品質管理担当者として勤務するには、品質管理の概要や重要性、主な手法を理解しておくことが大切です。顧客の要求も押さえつつ、必要な能力や資格取得も視野に入れることで品質管理担当者への道が見えてくるでしょう。